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オーナーシェフに聞く「独立開業への道」

ドキュメント/最適厨房が出来上がるまで

独立開業への道を切り拓いた、料理への熱い「想い」、そこから生まれた下村シェフ「こだわりの厨房」とは?

「エディション・コウジ・シモムラ」ロゴÉdition Koji Shimomura
オーナーシェフ 下村浩司氏
1967年、茨城県生まれ。大阪辻調理師専門学校卒業後、都内フランス料理店勤務を経て22歳で渡仏。多くの2つ星・3つ星レストランで8年間修業後、2001年より「レストランFEU」料理長に就任。2002年に世界的権威のある料理大会「ウェッジウッド・アワード」の日本代表にノミネートされ、2004年にはアラン・デュカス氏主催のフランス大使館パーティの料理を任されて絶賛される。2007年7月30日、「エディション・コウジ・シモムラ」をグランドオープン。「料理で感動を与えるシェフ」、「フランス大使館が惚れ込んだシェフ」と高く評価されている。

Part1. 知識と経験を総動員してのぞんだ初めての厨房づくり

●「オーナーシェフになる」という決意と気概が出発点

下村シェフは若い時から、いずれ自分は必ずオーナーシェフになる、と決意していたと言います。「フランスのお店で働いていた時も、料理の技術はもちろん、厨房内のチームワークのあり方、そして店舗の設計やインテリアまで、すべて自分がオーナーだったらどうするか、という視点で考えていました。その思いがあったからこそ、いろんなものを吸収できたのだと思います」と下村シェフ。
今回「エディション・コウジ・シモムラ」の厨房を設計するにあたっても、その思いがいたるところに活かされています。「厨房を初めてゼロから設計する時、多くの人はプロの設計者にお任せしてしまうことが多い。でもそれでは、自分やスタッフの想いが反映された理想の厨房になるとは限りません。あくまで自分の経験やノウハウの蓄積に基づいて設計することが大切です。もちろん、専門家の助言は貴重です。今回も最新の厨房設備に関して、厨房コンサルタントや厨房設備業者、そして東京ガスさんから、貴重なアドバイスをたくさんいただきました。しかし重要なのは、それを自分の目と想いで取捨選択することです。その結果、使いやすく美しく、さまざまな状況に対応できる厨房が実現するのです。」(下村氏)

厨房

●下村流コンセプトは「スタッフにとっても快適な厨房」

では下村シェフは、今回どのような考え方で厨房を設計したのでしょう。「自然の風が入口から入り、窓からすうっと抜けていく、それが私が理想とした厨房でした」と下村氏。その言葉には、多くのフランス料理店で腕を振るった経験とノウハウに基づく、下村氏の厨房に対する熱い想いが込められています。
「具体的にいうと、お店はお客様だけではなく、スタッフにとっても快適でなくてはならない、ということです。スタッフが働きやすい厨房環境になっているか。プロの料理人にとって真に使いやすい厨房機器が設置されているか。そして最適な作業動線やコミュニケーションが確保される厨房レイアウトになっているか。こうしたさまざまな要素が組み合わさってこそ、理想の厨房が実現するのだと思います。」(下村氏)

Part2. Photoドキュメント/最適厨房の施工は、こうして行われた

下村流「最適厨房」、ではその実際の施工はどのように行われたのでしょうか。6月初めからオープンまでを密着取材しました。短い工期にも関わらず、厨房設計コンサルタントや施工会社スタッフが下村シェフの思いを受け止め、工事は順調に進展。客室(個室)への音漏れや、排水口の傾斜の施工ミスなど、予期せぬトラブルも乗り越え、無事開店にまでいたりました。

6月1日
以前は別の飲食店が入っていた「六本木ティーキューブ」1階の店舗スペース。その床・壁・天井をすべて撤去したスケルトンの状態からスタートしました。床には壁や配管などの墨出し(位置決めの線)が引かれています。
6月18日
厨房スペースには防水加工が施されました。写真右上には六本木通りに面した搬入口が見えます。以前入っていた飲食店では客席が表通りに面していたものを、スタッフがその日の天候を感じ取れるようにとの考えで、厨房と客席の配置を逆にしました。
6月27日
排気・空調のダクトが施工されました。太いダクトの横には、換気天井システム(※)をつり下げて設置するためのコードも見えます。雑然としており、フランス料理の店舗・厨房の雰囲気は、まだ感じられません。
7月5日
厨房の床に、コンクリートで排水溝やグリストラップが成形されました。同時に、下村シェフが「快適な厨房環境のためにどうしても入れたかった」とこだわった換気天井システムも、床で組み立てた後に吊り上げられ、ダクトと結合されました。
7月12日
厨房機器を載せるコンクリートベースの土台づくりが進みます。コンクリートベース工法のメリットは、機器の下にすき間がない設置方法のため、ゴミ・水・虫などの侵入を防ぎ、衛生的であることです。また、コンクリート床の上には、長尺シート(※)を貼り付けます。壁や天井などの内装も同時並行で進められています。
7月14日
ガスレンジや冷蔵庫、オーブンなど、厨房機器が搬入され、一気に厨房らしい姿に変身しました。コンクリートベースの上にコールドテーブルが設置されているのがわかります。換気天井システムもすっかり完成しました。壁や床の細かな仕上げに対しても、下村シェフの厳しい目が光ります。
7月17日
コーヒーメーカーなど、細かな調理機器の搬入が始まり、開店にむけた仕込み作業も開始されました。
7月20日
客席の内装や、テーブルや椅子などの搬入も始まり、開店にむけた緊張は一気に高まります。スタッフのトレーニングも大詰めを迎えています。

(写真上)排水溝。デッキブラシの幅に合わせ、開口部を最小限に。排水溝蓋のガタツキを防ぐ為、蓋の下部にゴムパッキンを貼り付けてある。

(写真下)コンクリートベース仕様。コンクリートの台の上に機器を設置。ゴミをシャットアウトし、清掃性を向上。

7月27日
いよいよ、プレオープン! 下村シェフの20年来の経験とノウハウが凝縮した、こだわりの厨房のデビューです。オープニングパーティには、この日を待ちわびた200人以上の関係者・ファンがつめかけ、開店を祝いました。

※換気天井システム:天井全体がフードの役割を果たし、排気を補集する換気システム。効率的な換気で快適な厨房環境を実現します。
※長尺シート:乾きやすく、滑りにくく、汚れに強く、部分補修もしやすい床材。

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