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厨房談義[第5回] これからの栄養士会と栄養士の役割 「栄養士会の風土整備でスキルアップ。食育推進に貢献したい」

(社)東京都栄養士会 会長
池本真二

PROFILE
1900年 国立健康・栄養研究所 室長
2000年〜2004年 (社)日本栄養士会理事
2001年 城西大学薬学部医療栄養学科教授
2004年1月よりお茶の水女子大学生活科学部 助教授
2005年5月より(社)東京都栄養士会会長
栄養学研究の第一人者として、日本人の栄養必要量の策定や生活習慣病の予防の観点から、高脂肪食摂取によって惹起される肥満、糖尿病、高脂血症などの栄養性慢性代謝性疾患発症予防に関する研究を行っている。

今年5月、新しく東京都栄養士会会長に就任なさった池本真二氏。お茶の水女子大学生活科学部の助教授としてもご活躍です。
秋も深まったある日、文京区にある銀杏並木の色づくお茶の水女子大学を訪問し、さまざまな法改正の中で栄養事業推進を図る東京都栄養士会の取り組みや、栄養士の養成について、池本氏にお話を伺いました。

Subject1 法改正に伴う栄養士の役割

──食育基本法制定や学校教育法改正によって栄養教諭制度が始まり、また人材派遣法改正により医療関係業務の雇用環境が変化している中で、栄養士の立場は今後どう変わっていくのでしょうか。

池本 東京都栄養士会の中には、教育、学校、産業、地域活動、行政、医療、福祉の7つの部会がありますが、その中でも一番大きい現場が病院です。
例えば、その病院についてお話ししますと、その規模と経営母体によって直営、派遣、委託などさまざまな運営方法が取られています。ただ、これからは医療関連業務の人材派遣が認められたことで、医師、看護婦、薬剤師も全て派遣されていくだろうという状況になってきました。当然、栄養士もそうした流れの中に置かれるわけです。
しかしどう環境が変わろうと、栄養士にとってベースにあるのは患者さんの食管理・栄養ケア。この基本は同じです。患者さんの栄養ケアがどこまでできるか、その体制が保たれるなら直営だろうが派遣だろうが委託だろうが、あまりスタイルにはこだわる必要はないと考えます。

池本

──東京都栄養士会では、そうした潮流の中で、栄養士の方達が職能を活かし得るための情報や学びの場をどのように提供していらっしゃいますか?

池本 情報提供や、学びの場としては研修会や講演会があります。様々な研修・講演会がありますので、その中で学びうる機会は十分提供されていると思います。ただ研修・講演会にもいろいろあって、東京都栄養士会主催、東京都栄養士会の各部会主催であったり、また日本栄養士会、あるいは都の研修センターや民間企業が実施しているものもあります。さらには、日本栄養改善学会などの栄養士の関連学会が独自に開催しているものもあります。現状ではそれぞれが有機的に連動していないので、どれを受ければいいのか会員さん達は迷っているのではないでしょうか。

Subject2 縦横の有機的連係で基盤づくり

──情報発信源が多すぎて、栄養士さんの選択に迷いが生じているということですね。

池本 そうです。栄養士会としては、日本栄養士会の中に研修センターがあればいいと思うのですが、現在のところありません。看護協会、医師会、薬剤師会ではそれぞれ研修センターを持っています。それが栄養士会にないというところが一番大きな問題だと思います。ただ、日本栄養士会でも、これから作ろうという動きがありますので、2年位すれば栄養士会の中でも研修センターという言葉が使われるだろうと思います。
また学会の中でも日本臨床栄養学会と日本臨床栄養協会が連合して連合大会を開くようになって3年目を迎えています。こうした動きが広がって少しずつ整理されていい形になっていくのではないかと思います。

──東京都栄養士会は京浜ブロックに所属していますが、京浜ブロックの中での連係はいかがでしょうか。

池本

池本 当然、京浜ブロックやその他の道府県栄養士会との連係も必要です。今回の介護保険法の改正に伴う技術講習会は、日本栄養士会が全国展開していますが、東京は応募が多く、100名以上お断りしてしまったようです。そこで厚生労働省から講師をお招きして質的に同等以上の研修会を開催するために、1都3県の栄養士会主催、すなわち京浜ブロックの研修会という形で、10月1、2日に開催できました。このように連係や補完しあうことで、今までなしえなかったことを徐々に実現させる、という流れにしていきたいと考えています。

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