TOKYO GAS エネルギー・フロンティア
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Bo! [ボッ]
この素材、オレならこう料理する 今月号の「オレ」 田中健一郎 帝国ホテル総料理長
今、この時期に使いたい食材の代表が牡蠣ですね。本当においしいですし、フランス人は生の牡蠣も大好きです。栄養があるのはもちろん、牡蠣の持っている独特の味わいがいいんですね。日本の牡蠣は、一口で言うと風味。フランスの牡蠣は味。向こうにもいろいろありますが、日本の牡蠣は世界に負けないくらいおいしいですね。「マトヤ」はそのままの名前で売っているくらいですから。
今日はビスクという、濃い牡蠣のスープ仕立てをつくります。フランス料理の料理人なら良く知っていると思いますが、代表的な料理として牡蠣のグラタンフローレタンがあるように、牡蠣とホウレン草は相性がいいんです。
田中さんの写真
その牡蠣の濃厚なうま味とホウレン草、つまり季節で一番おいしいものをスープに合わせ、その二つ以外には少々のクリームと彩りの野菜を添えるくらいで、余分なものはほとんど使いません。
この料理は火が大切なんです。フランス料理にあるポトフのポ(pot)は鍋で、フ(feu)は火という意味。フランス料理は強火で一気に煮たり、弱火でとろとろと煮込んだり、火を使う過程を大事にしているんですよ。その昔、農家の人が、暖炉の残り火で前の日の食べ残しを飲み残しのワインで煮込み、農作業から夕方戻った頃にできあがっているという料理が、ポトフや、ナヴァラン・ダニョー(子羊のナヴァラン)、ブッフ・ブルギニヨン(牛肉のブルゴーニュ風煮込み)の原点かもしれないんです。しっかり火を通すというのは、フランス料理の大きな要素かもしれません。
 
 
調理中の写真
 
料理のポイントは、スープの中に牡蠣のうま味と香りを閉じこめること。だから煮汁も捨てず、牡蠣をピュレにして、そこにホウレン草を合わせていくと100%牡蠣の味を活かすことができるんです。ですから、クリームを入れすぎると牡蠣のうま味がなくなるし、少ないと牡蠣が勝ってしまう。牡蠣はおとなしい食材ではないですから、牡蠣のわがままが出てしまい、バランスが崩れてしまうんですね。注意するところは牡蠣のいいところを十分に出し切りながら、自己主張をさせないこと。相反することをベストなレベルで両立させることなんです。ここが難しいところではないでしょうか。
料理というのは、手の込んだものもあれば簡単なものもあります。ですが、どれも誰かを想って心を込めてつくる。そのハートが込められている料理が一番おいしいと思います。どんな素材もそんな気持ちで料理することで、多くの方に伝わるものがあると思っています。
 
 
牡蠣のビスク フローレンス風
材料(5人前)
牡蠣(おとし牡蠣)
人参(薄切り)
玉葱(千切り)
セロリ(千切り)
ホウレン草
(茹で上がり)
500g
50g
50g
50g
120g
白ワイン

鶏のブイヨン
(固形スープでも可)
生クリーム 35%
シェリー酒
バター
小麦粉
塩・胡椒
100cc
200cc
600cc

180cc
36cc
60g
15g
少々
 

牡蠣はボールに入れた薄い塩水で軽く洗い、表面のぬめりや汚れを除き、軽く水洗いしてザルにとる。
   

玉葱は薄切りにする。人参、セロリは長さ5㎝位の太めの千切りにする。
   
ホウレン草は葉だけを塩茹でにし、冷水にとり、水分を十分に絞って粗めに刻む。
   
鍋に牡蠣を入れ、白ワイン、水を注ぎ火にかけ、火を通す。
   
浮き実用にする牡蠣を残して、適宜の大きさに切る。
   
粗熱をとり、残りの牡蠣と煮汁をミキサーに入れてなめらかになるまで回し、ピュレにする。
   
別鍋にバター(30g)を熱し、玉葱、人参、セロリを焦がさないように弱火で炒める。
   
⑦がしんなりしたら小麦粉を振り入れ、
しばらく弱火で炒め、ブイヨンを加えて、
アクをひきながら野菜が柔らかくなるまで煮る。
   
⑧に⑥の牡蠣、生クリームを加えて混ぜ、塩・胡椒、シェリー酒で味付けし、⑤の浮き実用の牡蠣を入れる。
仕上げに③のホウレン草を入れる。
   
濃度を調整しながら、最後にバター(30g)でモンテする。
   
スープ皿に盛り付け完成。
 
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