TOKYO GAS エネルギー・フロンティア
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Bo! [ボッ]
  「シェフ」という「クリエイター」は、エゴイストじゃなければいけない。  
    調理中の写真  
 
  大沢 厨房づくりのお話などを伺っていると、経営者としての視点やチームで料理を作り上げるという視点が反映されていますよね。料理の世界では「職人さん」という言葉があるけれど、料理って決して1人で仕上げる仕事じゃないじゃないですか。シェフという仕事は、人を動かせるかどうかというのにかかってくると思いますが、オーナーシェフを5年間やってきた松嶋さんは、その辺はどう考えていますか。
 
松嶋 そうですね。最近よく調理場のスタッフに言うんです。シェフやシェフ・ドゥ・パルティ(部門シェフ)の人間に、おまえたちのタイトルにはシェフって書かれているんだから、シェフはオレだけじゃなくてみんなもシェフだよと。つまり、シェフを語る人間は人を使うのがいちばんの仕事で、他の人にできる仕事はその人にやらせて、自分はもっと時間を作って仕事の質を上げていかなければいけないということです。そういう話をフランス人にも日本人にもしますけど、日本人の部門シェフは、なかなかそれがわからないですね。
 
     
 
  大沢 まじめであればあるほど、自分で一生懸命やっちゃうんですね。
 
松嶋 そうなんです。「職人」という言い方もよくわかるんですけど、最後はお客さんが喜ぶためにつくるものです。だから、シェフや部門シェフはチームをうまく使って、完成度の高い料理を出すのが本来の仕事だと思うんです。その中で日本人はラクするのが下手なんですよね。まじめにやることに意義を見いだしてしまう。フランス人はどうやってラクしようかを考えるけど、結果オーライになるんですよ。でも、そこの差がシェフという仕事の差なのかなと思いますよね。
 
        
 
  大沢 すべてを自分だけではできないのがこの仕事ですものね。絵を描くのともまた違いますし。
 
松嶋 これは自分の価値観だから、全部正しいとは思わないんですけど、うちのお店で働いているスタッフに関しては、自分の価値観をちゃんと伝えてコントロールしないと、店がばらばらになっちゃいますよね。僕が思っていることをやらないと、自分のスタイルの料理は出ていかないわけですから。
    調理中の写真  
 
     
 
  大沢 確かにそうですね。最後になりますけど、次の自分のビジョンを聞かせてください。
 
松嶋 まだまだ海外でやりたいというのはありますね。僕が子供のころに憧れたコロンブスのように、いろんな国に行ってみたい。アメリカでも、スペインでも、それ以外の国でもチャンスをいただけるならトライしてみて、その土地のことをまた勉強して、人としていろんな成長をしていきたいと思ってます。
 
        
 
  大沢 ニース以外の場所も視野に入れて考えていたんですね。
 
松嶋 そうなんです。料理人とシェフというのは違うということが自分の中では分かっていて、さらにシェフというのはクリエイターだと思っているんです。ある時、フランス人のアートディレクターの友達にこう言われたんです。「クリエイターはエゴイストじゃなきゃいけない」って。なぜかというと「エゴイストというのはエゴイートから来た言葉で、人の持っているエゴを食べて自分で吸収して、そのエネルギーを爆発させることによってクリエーションが生まれるんだ」と言われました。それを聞いた時はなるほど!と思いましたね。
    料理の写真  
    僕も旅をするようになって、いろんなことを吸収できるようになったけど、シェフというのは様々なことに触れて、自分の中で消化して、それがお皿に反映されることって少なくないと思うんです。それは料理の世界だけじゃなくて、別の職業でも言えることです。いろんなところへ行って、いろんな人と交流して、遊びの中で情報を集めていくと、また違う何かが生まれる。だから、いろんな国で自分の店を持てたら、また自分も何か新しいことを生むことができるんじゃないかと思っています。  
  大沢 そういうチャレンジの中で、新しいことがどんどん出てくるんですね。今日は貴重な話を聞かせてくれて、ありがとうございました。  
 
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