TOKYO GAS エネルギー・フロンティア
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Bo! [ボッ]
この素材なら、こう料理する。北村尚信 MUSEE du KITAOKA プティポワン オーナーシェフ
 
 
フランス料理にはもともと、素材の足りない部分を補うというコンセプトがあるんです。たとえば肉なら、日本でよく使われる霜降り肉ではなく脂肪の少ない赤身肉に、おいしい動物性脂肪のソースを上手に組み合わせることで成り立っているんです。フランス料理で使われている牛はブルゴーニュ地方で生産されてた白い毛のシャロレー種で、この牛は脂肪の少ない赤身で柔らかいのが特徴。つまり脂肪の少なさがフランス料理に合っているんですね。このシャロレー種に近いものを日本で探すうちに、今日の食材であるF1Xに出会ったんです。
北岡さんの写真
F1Xは北海道産黒毛和種とホルスタイン種とを交配させ、さらに黒毛和種を交配させた牛で、柔らかさと脂肪のバランスに優れていてシャロレー種に近い素材だと思います。その肉の持つ柔らかさと適度な脂肪を味わうために、ソースを使わなくてもおいしくいただけるスモークのローストビーフにしました。ソースの代わりになるのがスモークというわけです。まず肉の塊にマスタードを塗り、砕いた黒胡椒をまんべんなくぬり、アルミホイルで包み、強火で熱く焼いた鉄板の上に載せます。すると胡椒は肉にくっつきながら燃え、アルミホイルの中に燻煙が回り、燻製が出来上がるわけです。よく桜のチップで燻製を作りますが、黒胡椒の場合は香りに加え、風味が乗るんですね。これがおいしさに繋がるんです。で、いただく時に黒胡椒をきれいに外してスライスする。もうあとは、味のあるフルールド セル(塩)だけで充分なくらいです。
 
 
調理中の写真
 
このやり方は、実は最初マグロでやったことがあるんです。フランス料理風にしてみようと思って挑戦して、おいしく出来上がったんです。そこで、肉のうま味を引き出せるローストビーフで活かせないかと思い、工夫したんです。ですから特に名前はなく、お店でもそのまま「黒胡椒でスモークしたF1X」です。今回は、おいしさを際だたせるために、ホースラディッシュを砂糖とりんご酢でたたいて、レフォールを添えた皿に仕上げました。
もうひとつこの料理のおいしさには、炎が大切な役割を果たしているんです。狩猟民族のフランスではその昔、捕った獲物を火で炙り焼きにして食べていたんですが、炎で脂肪がしたたり落ちて煙が立ち、肉が煙につつまれることによりさらにおいしくなる。燻煙効果の味わい、香ばしさを食べていたんですね。肉を焼く炎が生んだ煙。煙から生まれた燻製の技術。この発見がなければ今回の料理はなかったかもしれません。料理の原点でありながら、スモークすることでソースの必要性さえ感じさせない、斬新な味わいの発見もあるのが今日の料理です。
 
 
黒胡椒でスモークしたF1X
材料(15人前)
 
調理道具 鉄のフライパン(薄手)
 

砕いた黒粒胡椒を網で漉し、細かい胡椒は
取り除いておく。
   

レフォールは粗めの卸し金で摺り下ろし、
グラニュー糖とリンゴ酢をふりかけ、包丁の背で叩き辛みを出す。
   
牛ロースを寸法に切り、マスタードを刷毛で
たっぷりと塗る。
   
③に①をまんべんなく貼り付け、アルミホイルでピチッと包む。
   
鉄のフライパンを熱く熱し④を6面、
各1分間ずつ焼き付ける。
芯温を50℃に保ちながら熱成とルポゼを
繰り返し焼き上げる。(約2時間)
   
牛脂を2㎝角に切り、リソレして牛脂の
クロッカンを作り、塩を振る。
じゃが芋はカリッとフリチュールし、牛脂
クロッカンとガルニチュールとして散らす。
   
盛り付け時、まわりの黒粒胡椒はきれいに
取り除き、 一人厚さ5~6㎜に切り分ける。
皿にヴィネーグルコンフィでラインを引き、
牛肉を盛り付け、フルールド セルを振る。
レフォールとクレソンを添えて供する。
 
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