TOKYO GAS エネルギー・フロンティア
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Bo! [ボッ]
第3回「厨房で、話そう。」 高良康之 聞き手・大沢晴美
① 素材に火をいれるのは、とても勇気が要ること。生の味を超えられなければ、その意味がないと思うから。
② 古典的なフレンチは、当時のヌーベル(最新)。だから僕の料理も、いつも新陳代謝をしていきたい。
素材に火を入れるのは、とても裕紀が要ること。生の味を超えられなければ、その意味がないと思うから。
  調理中の写真  
 
  大沢 レカンは日本のフランス料理の歴史の中で、名店中の名店で、ずっとトップクラスの座を守り続けてきましたよね。そのレカンのシェフに至るまでに、高良さんがどのような道を歩まれてきたのか、お話いただけますか。  
高良 料理に興味をもったきっかけは、学生の頃のアルバイトですね。実は、当時はモータースポーツに興味を持っていて、お金を貯めてオートバイが欲しかったんです。自動車会社の研究所に入って、F-1カーをつくりたいという夢を持っていました。
そんな中、アルバイト先の厨房で働いている時に、オリジナルでつくったパフェを褒めてもらったことがあるんです。ふつうのパフェに載せてあるサクランボって、みんな手をつけずに食べ残してしまう。僕はそれを不思議に思っていて、逆転の発想でチェリーをメインに使ったパフェをつくってやろうと思ったわけです。これがお客さんにウケて、そういった自分でつくる楽しさに触れるうちに、料理の面白さに気づきました。クルマの仕事に就きたいという想いが、だんだん料理に派生していって「どうせやるならフランス料理を」と思うようになりましたね。
    料理の写真  
 
        
 
  大沢 学生時代のアルバイトがきっかけというお話はよく聞きますけど、メカニックから料理人というと、何か逆のほうに大転換という印象がありますね。  
高良 そうなんですよ。まして工業高校だったので、料理人としての就職口はなかなか見つからなかったんです。ところが、ちょうどホテルのオープンの年に重なって、なんとか就職することができました。洗い場から始めて、その後にコーヒーショップの調理場に回りました。そこで、朝から晩までいろんな料理をつくる中で、フランス料理の面白さを発見して、21歳のときにはフランスに渡っていました。最初の店では毎日ずっとカキを開けていましたよ。
「これをしに来たんじゃない」という意識は不思議となくて、必要なステップだと思ってフレンチの基礎をしっかり学びましたよ。
 
     
 
  大沢 でも、すごく勉強になったんじゃないですか。本当にベーシックなところを学べるという意味で。私の印象では、高良さんはフレンチのベースをきっちり身に付けられた上で、自分のお料理に進んでいかれたんだろうなと感じるんです。  
高良 僕もそれは重要なことだと思ってます。僕のベースの半分はフランス。でも、残りの半分は日本のホテルだったんです。コーヒーショップのカニクリームコロッケでも嫌がらずに本気でつくれるシェフたちが、やっぱりおいしいベシャメル(フレンチの基本的なソースの一種)を炊くんですよ。「おれのカニクリームコロッケ、うまいだろ?」と自信を持って言えるシェフたちに学んでこられたのは、本当に良かったと思います。
    高良さんと大沢さん  
 
        
 
  大沢 そういった料理に対する哲学というか、高良シェフのお考えをお聞かせいただけますか。たとえば火入れをする、フランス語ではキュイールするということは、フランス料理の一番の基本なのかなと思うんですけど。  
高良 そうですね。たとえば日本では生で食べられるものを料理することが多いですよね。魚も野菜もフルーツも。これに火を加えるとか、形を崩すというのはかなりの勇気が要るんです。つまり、生の食材を超えないと火を入れちゃいけないと思うんですよ。
お客さんに「生で食べた方がおいしかった」と言われてしまったら終わりなので。ですから食材に手をかけるときに、どこまで素材のままの味を超えられるか、生かしていけるのかと考えながらつくっています。
    調理中の写真  
    だからといって、僕は食材主義になりたいわけではありません。それよりも季節を大切に考えているので、秋とか冬には僕のお皿には意外と色が少なかったりします。安易に赤ピーマンなどを使いたくないんです。それよりも、たとえばセップダケ(キノコの一種)に火を加えてあげれば、立ち上がった香りで自然に食べたくさせることができますよね。食べてみたら食感の違いも楽しめる。それが、セップダケの料理だと思っています。
トータルでお皿1つが出来上がって、お客さんがこの一皿を食べきったときに飽きていないこと。「気が付いたら食べ終わっちゃった」と言われるようなお皿をつくっていきたいと思っています。
 
大沢 やっぱり火が入り、何か手が入っていく中で、同じ食材を違うものに変身させていく、というところが大切なんでしょうね。
 
 
 
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