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Bo! [ボッ]
第11回「厨房で、話そう。」 五十嵐 美幸 聞き手 小池由佳
① 迷いは料理に出てしまうから、自分が「無」になれる厨房をつくったんです。
② 炎は、私のハートのあたたかさ。フライパンは、私の手のひらのようなものなんです。
迷いは料理に出てしまうから、自分が「無」になれる厨房をつくったんです。
  調理中の写真  
 
  小池 五十嵐さんのつくる料理は、見た目もそうですが、食べた時にすごく「やさしさ」を感じるんですよね。やはり女性ならではの視点や発想が、料理に活かされているとご自身でも思われますか。  
五十嵐 若い頃は「女性ができる料理ってなんだろう?」とか、「女性ってどういうことが得意なのかな?」とか、すごく考えたんですけど、最近は今自分ができることをやっていけばいいんだ、と思うようになってきましたね。やっぱり女性は個性が強いので、知らず知らずのうちにこだわってしまうものなんです。でも料理って、いろんな料理人が同じメニューをつくっても、同じ味というのは絶対に出せない。だから「私がつくる料理はこういう料理」というのを表現できればいいのかなと思っています。
    五十嵐さんと小池さんの写真  
 
        
 
  小池 なるほど。女性ならではというよりも、自分ならではという感じでしょうか。  
  五十嵐 そうですね。自分らしい料理をつくるということが、最終的には女性らしい料理につながると、思うようになりましたね。
以前は男性の上にも立たなければいけない立場だったので、誰よりも鍋を振れなくちゃいけないと思っていたんです。でも、がむしゃらに頑張っていても、そのうちに何に頑張っているのか分からなくなってしまって。その時に原点に戻って「私は料理がつくりたいんだ」って思ってから、肩の荷が降りましたね。その当時は、絶対に期待に応えなきゃいけないとか、絶対こうできなきゃいけないというのがあったけど、どこかで開き直れるようになったんですよね。若い頃は、厨房は戦う場所だって思っていましたけど、最近は「私のお庭」みたいなもので、私の育った環境の表れだと思えるようになってきました。
 
 
     
 
  小池 なるほど。そこから五十嵐さんの料理は変わりましたか?  
五十嵐 そうですね、私自身はずっとつくり続けているので分からないんですけど、お客さんや周りの人には、変わったって言われますね。25歳でつくる料理と、35歳でつくる料理は違うんですね。そうなると、この先40歳でつくる料理も絶対変わっていくと思うんです。経験とともに好みも変わるし、自分が求めているものも変わる。それって不思議ですよね。
 
    料理の写真  
 
        
 
  小池 なるほど。ところで、『美虎』の厨房を新しくつくったときに、特にこだわった点はどこでしょうか。  
五十嵐 私は自分の目が届く範囲に全てがないと、料理に集中することができないんです。だから、もし何かあっても一人ですべてをまかなえるようなラインづくりをしました。
何かにとらわれてしまうと、料理に感情を出したいのに、違うところで感情が出てしまったり、ホッとする味はつくれなくなってしまうんです。料理するときに自分が無になって何も意識しないほうが、自然にフライパンも動くし、自然に火も使える。すごく集中してノッているときは、自分でも分かるんですよね。つくり始めたら、もう何も考えない。逆に悩んだり迷ったりしてしまうと、必ず味もぼやけてしまうんです。
だから常に「本当においしいものを提供して、お客さまに喜んで帰ってもらいたい」という最終目的だけは見失わないことが、大切なのかなと思いますね。
    厨房の写真  
    それと、私はお客さまが食べる様子を見ながら、味のトーンを調整したりするので、それができるお店の規模にこだわりましたね。「今日はご年配の方がいらっしゃっているな」とか、「あちらの方は、かなりお酒が進んでいるから、力強い味のトーンに調整しよう」とか。満席になってもすべてが見渡せて、自分で把握できるようにしたかったんです。
食べることは幸せなことだと思ってますから、お客さまに合わせた料理をつくることを大事にしていきたいんです。
 
 
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  「中国料理 美虎」の詳細はこちら
  http://www.miyuki-igarashi.com