公立学校のあるべき姿 防災性

東京都葛飾区/区立水元小学校

学校が備えるべき機能と
ZEB化を両立した
新たなモデルを構築

東京都葛飾区/区立水元小学校

※改築後のイメージパース

東京都葛飾区立水元小学校は、2023年7月より新校舎建設工事を開始し、2025年4月に運営を開始する予定です。新校舎の特徴は、空調負荷低減と高効率空調(GHP、EHP)の導入のほか、照明、換気などの省エネ対策を採用すること。さらに、施設面だけではなく、校舎の使用実態に関する先生方との意見交換やワークショップを行い、運用面も含めて「これからの公立学校のあるべき姿」を追求し、「ZEB Oriented」相当を実現することが挙げられます。

葛飾区立水元小学校(約8,000㎡)
ZEB Oriented相当

学校のZEB化の検討フロー

学校のZEB化の検討フロー
  • 出典:東京都財務局「ZEB 化の手引き (学校編)」(令和5年2月)

Point

ポイント

  • Point01 運用実態に合わせた
    省エネ対策でZEB相当を実現

    学校改築計画にあたって、区と学校との意見交換、設計者(株式会社類設計室)や家具メーカーを交えたワークショップなどを開催。学校における空調の運用実態、施設の使用実態等に合った省エネ対策を検討しました。
    実際に効率的な空調の運用を行うために、例えば児童が下校した後、先生方が異なる部屋に分散することなく、できるだけ同じ空間を共有して一緒に活動する状況をつくるにはどのくらいの規模の部屋・レイアウトがふさわしいのか。そのような部屋に適した家具・備品は何か。実態として、先生方は日頃どんな活動をしているのか。さまざまな観点からヒアリング・意見交換や、民間オフィスの視察も含めた事例学習を行い、設計に反映していきました。その結果、ZEB Oriented相当を実現するだけではなく、先生方が働きやすい環境づくりにもつながりました。
    また、さらなる省エネのためにBEMS(※)を導入予定。どの時間帯にどのくらい空調を使用しているかを把握できる仕組みを備えることで、運用後の省エネにも取り組みます。

    • BEMS :Building Energy Management System(建物内で使用する電力の使用量などを計測して「見える化」を行う)
  • Point02 GHP導入で
    ランニングコストを低減

    学校のエネルギー消費量で大きな割合を占める空調、換気、照明の設備等の効率化を重視し、GHP(ガス空調)・EHP(電気空調)を併用した高効率な空調設備をはじめ、換気については空調負荷を低減する全熱交換器、LED 照明機器と明るさ検知制御、さらに断熱性能を向上するLow-E複層ガラス(※)などを採用。複合的な省エネ対策を行います。
    なかでも、GHPの導入により、契約電力の削減でランニングコストを抑えることができます。

    • Low-E複層ガラス:ガラス面に薄い特殊金属膜をコーティングしたガラス。夏の暑さを和らげ、冬の暖房効率を高める等、室内の快適性を向上。
  • Point03 停電対応型GHPで
    レジリエンス性を向上

    停電対応型GHPは、通常時は省エネ性に優れ、地震や水害等による停電時でも、自立運転・電力供給を継続(※1)することができるGHPです。停電時には、自立運転スイッチをオンにするだけでGHPが発電を行い、空調や照明、コンセント(携帯電話の充電・PC・テレビ等)が使用可能(※2)になるため、地域防災拠点としてのBCP(※3)に貢献します。

    • ※1  都市ガスが供給されていることが条件となります。
    • ※2  使用できる電力容量はメーカーや設置状況により異なります。
    • ※3  BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)

    停電対応型GHP システム図

    停電対応型GHP システム図

Interview

インタビュー

作村 和規

「水元小学校を公立学校の
在り方のモデルに」

葛飾区 施設部営繕課建築第一係長

作村 和規 様

Q. 葛飾区では計画的な学校改築を行っているそうですね。

A. 葛飾区には小学校・中学校が70数校あり、その多くが昭和30年代、40年代の建物で、現在計画的に建て替えを進めています。水元小学校の新校舎建設工事もその一環で、温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す区の方針決定と、同校の設計のタイミングが合ったため、これまで以上に環境に配慮した学校建て替えの先駆けのような位置づけになりました。

Q. 「葛飾区立水元小学校」改築計画は、設計当初から「ZEB Oriented相当」「CASBEE“S”」相当を目標に掲げられていたとのことですが、具体的にどのように計画を進められたのかお聞かせください。

A. ZEB化には高額の費用がかかると思われがちですが、もともと水元小学校の建設計画には省エネ対策を盛り込んでおり、大きな費用を追加しなくてもZEB Oriented相当にすることは可能でした。学校は80年使用する施設ですから、長期的なランニングコストも考慮に入れ、自信をもって計画を進めました。
また、学校は災害発生時に主要な避難所になります。地域の方々からも「電気が止まってもエアコンやエレベーターが稼働する仕組みを検討しているのか?」といった質問をいただいており、それに応えられる施設づくりを目指しました。そのため、体育館に停電対応型GHP、普通教室・特別教室にGHP、職員室などの管理諸室にはEHPを採用しています。日中の電力デマンドを抑えるためにGHPを活用しつつ、災害時に「都市ガスは止まっても電気は使用可能」という逆ケースも想定し、リスク分散のためにGHPとEHPを使い分けたのです。

Q. 今後の取り組みについてはいかがでしょうか。

A. 水元小学校の建設計画以降、葛飾区は「ZEB Ready以上」を目指して学校の新築・改築を進めています。同校についても、設計段階の評価はZEB Oriented相当ですが、学校側に運用面で気を遣っていただくことで、運用段階でのZEB Readyを目指したいと考えています。水元小学校を一つのモデルとして、ここで得た知見を今後の公立学校の新築・改築に活かしていく方針です。

所在地

東京都葛飾区水元四丁目21番1号

建築
面積

3,675.88㎡

延床
面積

7,985.46㎡

規模・
構造

地上3階 RC造(一部S造)

竣工
年月

2025年1月予定

ガス
設備

GHP 22.4kW×1台、45kW×1台、56kW×4台、71kW×2台
停電対応型GHP 56kW×4台

外皮
断熱

硬質ウレタンフォームA種1H:150mm
押出法ポリスチレンフォーム3種b:100mm
Low-E複層ガラス
庇、バルコニー
緑のカーテン、土壁

空調

EHP

換気

全熱交換器
CO2制御

照明

LED照明
明るさ検知制御

給湯

潜熱回収型給湯器

昇降機

機械室レスエレベーター

再エネ

太陽光発電

その他

ドライミスト
冷媒式放射パネル
BEMS
ディーゼル発電機
雨水ろ過
光庭

  • 停電対応型GHP

    ※画像はイメージです

    停電対応型GHP

    災害等による停電時でも自立運転・電力供給を継続(※1)し、空調、照明、コンセント等が使用可能(※2)となる「停電対応」機能を搭載したGHP。

    • ※1  都市ガスが供給されていることが条件となります。
    • ※2  使用できる電力容量はメーカーや設置状況により異なります。
  • 太陽光発電

    ※画像はイメージです

    太陽光発電

    太陽光のエネルギーを、太陽光パネルによって電気に変換して発電するシステム。電気料金の削減や災害時の電力確保に有効。

※掲載情報は2023年10月時点のものです

ページ先頭へ