探究心を育む学習環境 経済性

ドルトン東京学園/
中等部・高等部 校舎

生徒の探究心を育む
先進的な学習モデルを
実践する校舎に、
多様な省エネ技術を採用し
ZEBを実現

ドルトン東京学園/中等部・高等部 校舎

2019年4月に開校したドルトン東京学園中等部・高等部は、生徒一人ひとりがテーマを選び、自主的に学習する「ドルトンプラン(別名:子どもの大学)」を日本で唯一取り入れています。教室棟の中央に設置した壁のないオープンな図書館「ラーニングコモンズ」が同学園の特徴。また、2022年6月には、現在教育界で注目を集めるSTEAM(Science、Technology、Engineering、Art and Mathematics)教育を実現する新校舎「STEAM棟」が竣工しました。場所を選ばず学習できる環境を構築し、学びの方針にリンクした学習空間になっています。また、既存校舎(教室棟)を含めてZEBスクールのモデルケースとなることを目指しており、教室棟とSTEAM棟のシステムを連携。生徒の探究心を育む先進的な学習モデルを実践する校舎において、多様な省エネ技術を採用することで「ZEB Ready」認証を取得しました。

校舎断面イメージ
BELS

ドルトン東京学園
(11,138㎡〈既存〉+
2,700㎡〈増築〉=13,838㎡)
ZEB Ready
(52%削減

  • 基準一次エネルギー消費量に対する削減率

Point

ポイント

  • Point01 ドルトンプランの実践で重要な役割を果たす
    空間において、快適性と省エネを両立

    ドルトンプランは、生徒一人ひとりの知的な興味や旺盛な探究心を育て、個人の能力を最大限に引き出すことを特徴としています。教室棟の広々としたオープンスペース空間「ラーニングコモンズ」やSTEAM棟は、その中核をなす「学びの設計、学びの探究、学びの発表」の効果的なサイクルを生み出す空間となっており、重要な役割を担います。
    これらの空間における快適性と省エネの両立を目指し、教室棟では、教室で利用した空調された空気を廊下のRC ダクトを通じてラーニングコモンズへ搬送し、居住域空調としてカスケード利用することで、空調負荷を約30%削減。STEAM棟では躯体蓄熱放射空調(TABS)を採用し、2階の図書館は建物の外周を二重に覆うダブルスキンを採用、そこに教室棟のカスケード空調空気を回遊させています。
    また、太陽熱を再生熱源としたデシカント外調機を利用して快適性を高めるとともに、チムニーから屋上のデシカント外調機に空気を送ることで再生側の加熱負荷を軽減するなど、未利用熱も最大限利用しています。

    STEAM棟のカスケード空調空気の回遊イメージ

    STEAM棟のカスケード空調空気の
    回遊イメージ

    • 教室棟のカスケード空調空気を渡り廊下からSTEAM 棟ダブルスキン内に流す
    • ダブルスキン内に空気を回遊させる
    • 渡り廊下のチムニー(煙突)で屋上へ空気を搬送
    • チムニーから屋上のデシカント外調機へ空気を搬送
    • デシカント外調機で熱回収し、屋外へ排気
  • Point02 建物自体を環境学習装置として
    多様な再エネ・未利用エネ・省エネ技術を採用

    高い学習効率を実現するZEBスクールのモデルケースを目指す中、STEAM棟を多様な再エネ・未利用エネ・省エネ技術を採用した「環境学習装置」として活用しています。
    高性能な外皮、高効率な空調・照明システムを利用するだけでなく、空調熱源には井水と地中熱、デシカント再生熱源には太陽熱、さらに自然光を取り入れた照明等、自然エネルギー・未利用エネルギーをふんだんに利用しています。その他の先進的な取り組みも評価され、本建物は省CO2性能に優れた住宅・建築プロジェクトを国が支援する国土交通省サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)に採択されるなど、国からもその先導性を評価されています。さらに、校舎自体を題材として、生徒がさまざまなデータの取得・分析などを通じて、校舎の省エネ化、省エネ運用等を考察し、環境学習に結びつけることを狙っています。

  • Point03 ハイパワー・ペアマルチのGHP採用により、
    省エネと省コストを追求

    空調にかかるコストを抑えたい学校は多く、ドルトン東京学園でも前身の東京学園高等学校の時代から省コストを目的にGHP(ガス空調)を採用してきました。現在も、教室棟・STEAM棟ともにGHPを導入することで、契約電力の削減による省コストを、ZEBレベルの省エネ性能と両立して実現しています。
    GHPはEHP(電気空調)のおよそ1/100の消費電力を実現する(※)GHPハイパワーシリーズ(発電機能付)をぺアマルチで採用。低負荷時に2台の室外機のうち一方を停止することで大幅な省エネを実現し、ZEBレベルの省エネ性能実現にも大きく貢献しています。

    • 室外機に小型の発電機を搭載し、発電機は冷暖房時のガスエンジンの余力で発電を行い、その電力を室外機の冷却ファンやポンプなど補機類に供給することで、室外機の消費電力を削減。

Interview

インタビュー

「先進的な省エネ技術を採用した校舎を
『環境教育』やブランディングに活かしています」

市川 猛

ドルトン東京学園 常務理事・参事

市川 猛 様

平川 聡

株式会社松田平田設計 
総合設計室環境設計部(機械)

平川 聡 様

Q. 貴校の学びの方針にリンクした校舎を設計するにあたり、具体的にどのような工夫をされましたか?

A. 「学ぶ場所を選ばない」ことがドルトンプランの基本で、生徒は教室以外の空間でも先生とコミュニケーションをとれる構造としています。例えば、教室棟の2・3階は、中央にラーニングコモンズ、外周に普通教室があり、その中間は生徒が自由に学習できるスペース、というように空間を段階的につくっており、そこがドルトンプランの教育のあり方とリンクさせた工夫です。(市川様)

Q. ZEB化はどの段階で目指したのでしょうか。

A. 教室棟の着工時点で、将来的に新校舎をつくる計画はありました。新校舎には図書館をはじめ、会議室、普通教室などをつくるイメージでしたが、途中からSTEAM教育を実践する特別教室棟とする計画に変更しました。当初から省エネに配慮した建物にしようという考えはありましたが、設計事務所と計画を進めていく中でZEBを目指すこととしました。(市川様)

Q. ZEB化を目指すにあたり、イニシャルコストについてはどのように考えましたか?

A. 計画に省エネ配慮を盛り込むと建築費が上がることは承知していましたが、国土交通省サステナブル建築物等先導事業の助成金に加えて、学校のブランディングにもつながると考え、総合的にプラスになると判断しました。(市川様)

Q. ラーニングコモンズに床吹出空調を採用した狙いについて、お聞かせください。

A. 生徒が教室内外を行ったり来たりする大空間を空調しないわけにはいきません。とはいえ、教室棟の面積やエネルギー使用量を考えるとラーニングコモンズがかなりのウエイトを占めるので、できるだけエネルギーを使わずに空調する方法を検討しました。結果、普通教室の排気を床下に送ってベースの空調にすることにしたのです。その上でラーニングコモンズ専用の空調機も設置しましたが、そちらには100%の空調能力を持たせず、省エネを図っています。(平川様)

Q. STEAM棟に回遊型ダブルスキンなどを採用した理由は?

A. 今までにない技術を取り入れたいという想いがありました。単純に省エネだけを考えれば別のシステムを採用したかもしれませんが、「環境学習に活かす」というコンセプトに基づいて、さまざまな要素を取り入れたのです。「環境学習装置」「学習環境評価ツール」といった他にはない取り組みは、STEAM教育につながると考えています。(平川様)

Q. 校舎に対する保護者の評判はいかがでしょうか。

A. 見学に来られた保護者の方々が、「教室の空気を床に送って空調を行っている」という説明を聞いて、「そういうところにまで配慮された学校なんですね」と感心されることもあります。(市川様)

所在地

東京都調布市入間町2丁目28番20

延床
面積

13,838㎡

規模・
構造

地上3階、鉄骨造

竣工
年月

2022年5月

ガス
設備

■教室棟
GHPハイパワーシリーズ(発電機能付)ペアマルチタイプ:56kW×7台、71kW×12台、85kW×3台
GHPハイパワーシリーズ(発電機能付)マルチタイプ:45kW×1台、71kW×1台、85kW×1台
GHP標準シリーズ:28kW×3台
■STEAM棟
GHP ハイパワーシリーズ(発電機能付)マルチタイプ:
45kW×2台、56kW×1台、85kW×1台

外皮
断熱

回廊型ダブルスキン
ダブルスキン型チムニー
井水循環パイプ

空調

スラブ埋設天井放射空調
床吹出空調
TABS(射体蓄熱放射空調)

換気

デシカント外調、バランス式自然換気窓

照明

LED照明、サーカディアン照明

その他

BEMS、見える化モニター、
ハイサイドライト
自然エネルギー利用
(太陽光発電、太陽集熱パネル、地中熱、井水)

  • GHP(ハイパワーシリーズ・ペアマルチタイプ)

    GHP(ハイパワーシリーズ・ペアマルチタイプ)

    エンジンで圧縮機を駆動すると同時に発電機も駆動。室外機に電力を供給することで、消費電力をEHPのおよそ1/100に抑える。低負荷時に2台の室外機のうち一方を停止することで省エネを実現。

  • デシカント外調機(太陽熱利用タイプ)

    デシカント外調機
    (太陽熱利用タイプ)

    夏季に要求される除湿と余りがちな太陽熱の有効活用ができる空調システム。

  • ヒートポンプチラー(地中熱ヒートポンプ)

    ヒートポンプチラー
    (地中熱ヒートポンプ)

    太陽の熱を受けて蓄えられた「地中熱」を利用したシステム。

学校法人ドルトン東京学園の詳細はこちら (外部サイトへリンクします)
※掲載情報は2023年10月時点のものです

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