袖ケ浦市/袖ケ浦市庁舎
既存庁舎の改修と
新築を組み合わせ、
市民の防災拠点化とともに
ZEBも実現
袖ケ浦市の旧庁舎と議場は1970年、中庁舎は1980年に建設されました。激甚化する自然災害などから市民の生命と財産を守る防災拠点とするため、東日本大震災を契機に、北庁舎・南庁舎・設備棟の新築と、中庁舎の耐震補強及び大規模改修を含む整備計画をスタート。40年以上にわたり地域の風景として親しまれてきた既存庁舎の持つ特徴を、新たに建築する庁舎にも引き継ぐことで、全体の調和がとれた市庁舎として再生しました。
市民の意見をもとに、「安心・安全な庁舎」「使いやすく市民に開かれた庁舎」「環境にやさしい庁舎」を整備方針として掲げ、既存庁舎を含め約1.3万㎡に及ぶ大規模庁舎の整備計画では、設計・施工を一元化するデザインビルド方式を採用しました。
コージェネレーションシステム(CGS)や電気・ガスのミックス熱源のほか、躯体・窓の断熱による空調熱源のダウンサイジング、太陽光発電設備の採用、照明のLED化といった汎用的な技術を組み合わせ、限られた予算の中で、庁舎建物全体で「ZEB Ready」を実現しました。
袖ケ浦市庁舎整備工事
(約13,000㎡)
ZEB Ready
(54%削減※)
-
※
基準一次エネルギー
消費量に対する削減率
Point
ポイント
-
長年親しまれた既存庁舎と新築庁舎一体でのZEB化を汎用技術で実現
本整備計画では、旧庁舎の佇まいを新たに建築する庁舎にも継承することで、長い間市民に親しまれてきた風景の中に調和のとれた市庁舎として生まれ変わるとともに、使いやすさと環境性・経済性を向上させ、庁舎建物全体でZEBを実現しました。
ZEB化をめざすにあたり、将来の設備更新費用やランニングコストを抑えるため、汎用的かつ一般的な機器・技術を選定。方角に合わせた窓面積率の工夫、既存庁舎も含む断熱性能向上などによる空調機器のダウンサイジング、人検知による照明の自動制御とLED化等の組み合わせによって、費用対効果の高いZEB化を実現しています。
新築の北庁舎5階には、市民の意見を踏まえて、「開かれた庁舎」を象徴する展望ロビー・回廊を配置し、日射を遮り冷房負荷を削減する庇やLow-E複層ガラス等を採用し、省エネと眺望を両立。既存の中庁舎とともに屋根の高断熱化も行い、省エネ性・快適性を向上させました。 経済性の面では、都市ガスを燃料に発電するCGSの採用により、廃熱を利用し冷房・暖房を行うことで、大幅な省エネと契約電力の低減にも貢献しています。 -
激甚化する自然災害などから
市民の生命・財産を守る防災拠点としての機能を追求災害発生時の防災拠点となる市庁舎には、市民の安全確保と災害対策本部機能の強化が求められます。旧庁舎は現行基準の耐震性能を満たしておらず、老朽化も進行していたため、東日本大震災を契機に新庁舎の整備計画が策定されました。
建物のレジリエンス強化のため、耐震補強・免震構造の採用のほか、万が一の高潮や洪水に備えて止水板による屋内浸水対策を実施。新築した設備棟は、浸水に備え受変電設備や非常用発電機等を2階以上に設置するなど、対策を強化しています。
また、電気・都市ガスのエネルギー二重化、停電時自立型CGSの採用により、系統電力が途絶えた時でもガスの供給が継続している限り、防災拠点機能の継続に必要な電力供給を可能に。非常用発電機・太陽光発電とあわせて、BCP(※)に寄与しています。都市ガスは耐震性の高い中圧ガスを引き込み、敷地内で低圧に減圧する専用ガバナは浸水対策でかさ上げし、エネルギーセキュリティをさらに強化しました。- ※ BCP: Business Continuity Plan(事業継続計画)
防災機能を有する設備棟は、浸水対策のため主要設備を2階に設置。
中圧ガス専用ガバナは、浸水に備えて基礎をかさ上げ。
Interview
インタビュー
「一般的な機器を選定し、汎用的な技術と組み合わせることで、
費用対効果の高いZEB化を実現できたと考えています」
袖ケ浦市財政部資産管理課
左から
参事徳田 嘉寛 様
班長萩野 晃司 様
笹原 昭浩 様
Q. ZEBを目指すことになった経緯をお聞かせください。
A. 「安心・安全な庁舎」「使いやすく市民に開かれた庁舎」「環境にやさしい庁舎」を整備方針として掲げる中で、事業者からZEB認証取得の提案がありました。当初は新築する北庁舎のみ「ZEB Ready」をめざす、という提案でしたが、実施設計段階で協議を進める過程で、確定した費用内で、庁舎建物全体でのZEB化を検討することになりました。その結果、改修する既存の中庁舎と新築する庁舎建物、一体で「ZEB Ready」認証を取得することができました。(徳田様)
Q. ZEBを実現する上で、どのような点を工夫されたのでしょうか。
A. 既存庁舎の断熱強化は、費用対効果を見ながら範囲を決定しました。外壁の断熱補強は、室内の使い勝手も考慮したうえで断熱厚さを決め、屋根・窓は庁舎全体で断熱を強化することで、空調能力をダウンサイジングし、快適性と省エネ性、経済性の両立を図りました。また、将来的な更新費用やランニングコストを抑えるために、特殊なものではなく一般的な機器を選定し、汎用的な技術と組み合わせることで、費用対効果の高いZEB化を実現できたと考えています。(萩野様)
Q. 新しい庁舎の利用が始まっていますが、実際に建物を使ってみて、ZEB化の効果などに対する実感はいかがでしょうか。(※南庁舎は2024年度内竣工予定)
A. 旧庁舎では照明の照度不足や空調換気の不良、執務室の狭さ、段差などが産業医からも指摘されていたのですが、庁舎整備によって、これらの指摘事項を解消することができました。建物の断熱化が向上したことで空調の立ち上がりが早くなり、室内の温度ムラも少なくなって、職員の執務環境が改善しました。また、既に竣工した北庁舎と中庁舎だけでも、光熱費や契約電力が大きく削減されています。(笹原様)
Q. 省エネやZEBについての今後の課題、方針などについてお聞かせください。
A. 市庁舎の運用については、省エネに対する技術職員の知識向上を図りながら、長期的にBEMSによって消費エネルギーの状況を確認し、適切に運転管理を行っていくことが重要と考えています。また、庁舎のZEB実現をきっかけとして、その後に実施した2件の小学校増築工事においても、それぞれ「ZEB Ready」を取得しており、引き続き袖ケ浦市としてZEB化の取り組みを進めていきたいと思っています。(徳田様)
建物概要・主な導入設備
所在地
千葉県袖ケ浦市坂戸市場1番地1
延床
面積
中庁舎(改修):6469.28㎡
北庁舎(新築):4982.74㎡
南庁舎(新築):1405.99㎡
設備棟(新築):1039.43㎡
規模・
構造
中庁舎(改修):地上7階地下1階・塔屋2階、SRC造
北庁舎(新築):地上5階、RC造一部S造
南庁舎(新築):地上2階、RC造一部S造
設備棟(新築):地上2階、RC造
竣工
年月
北庁舎:2022年7月
設備棟:2022年7月
中庁舎:2023年6月
南庁舎:2024年度内予定
ガス
設備
マイクロガスコージェネレーションシステム(ジェネライト)35kW×2台
ガス吸収式冷凍機 280kW×1台
廃熱投入型ガス焚冷温水機(ジェネリンク) 280kW1台
外皮
断熱
窓:Low-E複層ガラス
屋根:押出ポリスチレンフォーム
空調
高効率パッケージ型空調機
高効率熱源機器(二次ポンプ変流量制御、大温度差送水システム、空調機変風量制御)
換気
CO2濃度による外気量制御
全熱交換器
照明
LED照明
(在室検知、明るさ検知、タイムスケジュール制御、初期照度制御)
その他
太陽光発電設備、蓄電池、BEMS
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CGS(ジェネライト)
災害時にも電力供給可能(※)な停電時自立型を採用。
- ※ 都市ガスが供給されていることが条件となります。
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ガス吸収式冷凍機(奥)・廃熱投入型ガス焚冷温水機(手前)
CGS廃熱を利用した空調システム。冷温水の供給先は、中庁舎の空調機及び外調機、北庁舎の外調機。
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蓄電池
太陽光発電による電力を有効活用するため、蓄電池を設置。災害時にも電力供給予定。
※掲載情報は2024年3月時点のものです