横浜シンフォステージ
大都市脱炭素化モデルを
公民連携で構築する中、
ビルの付加価値向上に
つながるオフィス部分の
ZEB Readyを取得

2024年5月、みなとみらい21中央地区53街区に開業した横浜シンフォステージは、オフィス・ホテル・店舗などで構成されるツインタワーの大規模複合施設です。横浜駅方面と屋根付きのペデストリアンデッキで結ばれ、雨に濡れない快適な歩行者ネットワークを構築。横浜駅とみなとみらい駅をつなぐ「グランモール軸」、陸側のビジネスゾーンと海側のウォーターフロントゾーンをつなぐ「キング軸」が交差する、みなとみらい21地区の新たなシンボルにふさわしいビルです。2022年にみなとみらい21地区が脱炭素先行地域に選定されたことから、横浜シンフォステージも公民連携での脱炭素モデル構築の取り組みに参画。オフィス部分で同エリア初の「ZEB Ready」認証のほか、建物省エネルギー性能表示制度(BELS)の建築物全体評価で最高ランクの星5つを取得するとともに、横浜市建築物環境配慮制度(CASBEE横浜(※1))で最高ランクとなるSランク相当の環境性能も有しています。
- (※ 1) CASBEE 横浜:CASBEE(建築環境総合性能評価システム)で定める評価基準に加え、横浜市の地域性や政策等を勘案して評価基準を修正した、より地域の実態を反映した環境配慮制度。


横浜シンフォステージ
ZEB Ready(50%削減)(※2)

横浜シンフォステージ
BELS認証(星5)
- (※2) 基準一次エネルギー消費量に対する削減率
Point
ポイント
-
アフターコロナに求められるビルの新たな価値を追求
コロナ以降、多様化する働き方や変化する社会ニーズを踏まえ、横浜シンフォステージでは屋外空間に5つのプラザを配置。オフィスワーカーの休憩やアウトドアワークの場所を確保し、建物そのものの活用だけではなく、地域や周辺事業者にも開かれた場所として共創やオープンイノベーションを誘発する場所(ワークプレイス)となるよう計画されています。感染リスクがある中、通勤やショッピング、行楽で都心まで足を運ばずとも、より身近な場所で自然と文化の香りにあふれる環境で充実した時間を過ごす体験ができ、建設当時ではまだ確立されていなかったアフターコロナに求められる価値観を先行して取り入れたビルとなっています。
さらに、ビルの付加価値を高める一つの選択肢として、オフィス部分でZEB Readyを取得。ダブルスキンや垂直ルーバー・水平ルーバーによる熱負荷低減、および高度なシミュレーションを駆使した最適容量選定による省エネ空調システムの2点が特に特徴的な取り組みとなっています。オフィスのカーテンウォールは景観への配慮や周辺環境に応じて複数の種類の外皮を組み合わせるとともに、ファン動力(空調機容量)の変化点を考慮してルーバーの出寸法や設置間隔、角度が設定され、都市景観と省エネルギーを両立する外装計画となっています。ファン動力(空調機容量)を縮減することで、複数フロアあるオフィス部分の省エネルギー性能向上に大きく寄与しています。「横浜シンフォステージ」に込められた想い
本街区を通してヒト・モノ・コトが調和・共鳴(Symphony)し、すべての来街者にとっての新たな価値を創出し、発信する舞台(Stage)を提供する横浜とみなとみらいをつなぐグランモールプラザ。大屋根によりイベントやアクティビティを全天候で楽しめる。
ランチやワークプレイス、企業イベント等の様々な活用を想定したゲートプラザ。コミュニケーションやイノベーションを誘発する開放的な芝生広場となっている。
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公民連携により脱炭素の取り組みを推進
横浜市は、みなとみらい21地区について「公民連携で挑戦する大都市脱炭素化モデル」を構築していく方針を定めており、エリア内の電力が逼迫した際、建物の電力を抑制して地域の電力需給バランスを調整する「ディマンド・リスポンス」(DR)という試みを行っています。横浜シンフォステージにおいても、電力会社・アグリゲーター(DR指令者)・事業者が三位一体となってDR対応に取り組んでおり、建物に導入されたガスコージェネレーションシステム(CGS)も活用しています。
DRの仕組みとしては、アグリゲーター(DR指令者)から電力抑制指令(DR要請)が届くため、その指令に応じて建物内の電力抑制を行います。オフィスや商業施設の需要が高まり、再エネの効果が期待できなくなる夕方にDR要請が届くことが多いことから、夕方以降に停止させているCGSを稼働させることで、CGSの発電により必要な電力需要を賄います。加えて、建物内の照明の減調光、給排気ファン等の一時的な停止、エレベーターの台数制御等、DR要請に対して自動で応答する制御を取り入れることで、極力建物使用者に電力抑制を感じさせることなく、地域への貢献を実現しています。 -
CGS導入により地域全体のエネルギーの平準化やBCPに貢献
横浜シンフォステージは、近隣の地域冷暖房センターから供給される熱によって空調負荷を賄う一方、CGSを電主熱従で運転することにより、電力負荷に応じてCGSの運転停止や負荷制御を行っています。CGSからの廃熱を、夏期はジェネリンクを利用して冷水として、冬期は熱交換器を介してビル内に温水として供給。地域全体のエネルギー使用の平準化に寄与しています。
さらに、非常用発電機とCGS、2つの非常用電源を確保することで、災害時における地区やビルの停電時の保安動力に加え、建物内の電源の一部に電力を供給することが可能となっています。非常用発電機からは、建物機能上最低限必要な設備とオフィスやホテルの換気設備へ電力供給を行います。CGSは耐震性の高い中圧ガス導管を利用し、オフィスの基準階の空調や共用部の空調への供給を行う仕組みとしており、建物上必要な機能と付加機能を明確に分けています。 災害時におけるテナント入居者への一時滞在や業務支援を継続する仕組みにより、地域のBCP(※3)対策にも貢献しています。- (※3) BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
Interview
インタビュー
「将来にわたり競争力のある地域No.1ビルを追求した結果、
答えの一つがZEB Ready取得でした」

株式会社大林組
開発事業本部 統括部長
プロジェクト推進部長
鈴木 敬一 様

株式会社大林組
開発事業本部
プロジェクト推進部 課長
能勢 健弘 様

株式会社大林組
設計本部
設備設計部設備設計課
係長
古澤 洵 様

株式会社大林組
設計本部
設備設計部設備設計課
係長
浅沼 祐也 様
Q. 「横浜シンフォステージ」建築計画のポイントは?
A. みなとみらい21地区の横浜駅側からの玄関口になる場所だけに、外観はもちろん機能面でも「地域No.1ビル」として、将来にわたって競争力のあるものを作っていきたいという想いがありました。各種の取り組みや「ZEB Ready」取得にあたっては、共同事業者をはじめ周辺事業者や行政など様々な関係者と一緒に作りあげてきました。(鈴木様)
Q. ZEB化を目指した経緯と認証取得に向けた取り組みをお聞かせください。
当初の計画には「ZEB
Ready」取得は想定していませんでした。ただし、ビル所有者として環境配慮を重要視しなければならないという考えもあり、建物全体ではなくてオフィス部分のみであれば「ZEB
Ready」が取得できることが見えてきたため、そちらへ舵を切ったのです。みなとみらい21地区で初取得となることから、テナントへの訴求力もあると考えました。(能勢様)
特徴的な取り組みとしては、熱負荷を低減させる外皮とファン動力(空調機容量)の最適容量の選定が挙げられます。ファン動力の変化点を考慮した上でルーバーの出寸法や設置間隔、角度を決定しました。オフィスのカーテンウォールを垂直・水平ルーバー、コンパクトダブルスキンの3種類で構成し、景観への配慮に加え、オリエンテーションや周辺環境に応じて複数種の外皮を組み合わせており、省エネルギーと都市景観を両立する外装計画となっています。これまで熱負荷計算で考慮することができなかったルーバーの設置間隔や角度の負荷削減効果を精緻に把握するとともに、ファン動力を縮減することで、複数フロアあるオフィス部分の省エネルギー性能向上に大きく寄与しています。(浅沼様)
それに加え、照度センサーによる自動ブラインド制御や、基準階共用部の設定照度を常に制御するような取り組みも実施しています。(古澤様)
Q. DRの実践で工夫されたことは?
事業者からは「極力建物利用者に電力抑制を感じさせたくない」というお話をいただいたため、電力抑制を感じさせない程度の制御と、建物に導入されたCGSをうまく活用できないか検討しました。過去のDR要請のデータ等も確認し、DR要請が多く発生する夕方の時間帯をメインに対応可能、かつ段階的にDRに応答できる仕組みを構築しました。(古澤様)
Q.省エネやZEBについて、今後の課題、方針をお聞かせください。
横浜シンフォステージでは、テナントへのサービスの一環としてエネルギー消費量を見える化しており、より積極的な環境負荷低減やランニングコスト削減の取り組みにつながっていくことを期待しています。(鈴木様)
ZEBの取得やBCP対応を踏まえたCGSの導入などは、テナントに選ばれる「魅力あるビル」の要素の一つになっていると思います。建物の環境負荷低減の取り組みについてテナントの理解も得ていくことで、脱炭素先行地域へのさらなる貢献にもつなげていきたいと考えています。(能勢様)
建物概要・主な導入設備
所在地
神奈川県横浜市西区みなとみらい5丁目1番2号
建築
面積
約14,724㎡
延床
面積
約182,937.70㎡
規模・
構造
ウエストタワー:地上30階、塔屋2階、地下1階
イーストタワー:地上16階、塔屋1階、地下1階
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、制振構造
竣工
年月
2024年3月
設計
株式会社大林組
ガス
設備
ガスコージェネレーションシステム 700kW×2台
ジェネリンク 450RT×2台
外装
計画
・コンパクトダブルスキン
・ルーバー(垂直、水平)
空調
・熱源方式:DHC(みなとみらい21熱供給(株))受入方式、
CGS十ジェネリンク十蓄熱槽
・空調方式:単一ダクトVAV方式
換気
・全熱交換器による外気負荷の低減
・CO2濃度による外気量制御
・COセンサーによる駐車場換気量制御
・共用部換気風量制御
照明
・高効率LED照明
・昼光利用/在室検知による省エネ照明制御
その他
・BEMS
・外気冷房による熱負荷低減
・ブラインド開閉制御
・雨水、空調ドレン水利用
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CGS
発電時の廃熱を冷暖房に有効利用する分散型発電システム。
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廃熱投入型吸収冷温水機
(ジェネリンク)CGSの廃熱を廃熱投入型吸収冷温水機を介して冷水利用が可能な空調システム。
※掲載情報は2025年7月時点のものです。