高いBCP性能と環境性能の両立 防災性 & ZEB

TODA BUILDING

「100年建築」を
新本社ビルで体現すべく
前例のない領域で
「ZEB Ready」取得に挑戦

TODA BUILDING

TODA BUILDINGは、戸田建設の新本社を含むオフィスのほか、芸術文化施設や商業施設などを有した「アートとビジネスが交錯する芸術文化の拠点」として、2024年11月に開業しました。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において最高評価である星5つを取得するとともに、高さ150m以上の超高層複合用途ビルでは国内初となる建物全体での「ZEB Ready」認証を取得しました。
戸田建設は、「100年建築」を掲げ、建物の企画から建設、運用・維持管理までを一貫して見据えた、長期的かつ持続可能な建築を目指しています。環境性能の重要性が年々高まる中、自らの理念を本社ビルで具現化することは大きな挑戦でもありました。
TODA BUILDINGの開発は、単なる本社建て替えにとどまらず、隣接街区との連携によって都市再生特別地区制度(特区)を活用した大規模開発プロジェクトとして実施されました。特に、再開発におけるテーマの一つである「地域の防災力強化」に対応すべく、高いBCP(※1)性能を有する建物として設計・構築。災害時のエネルギー供給の確保や情報拠点としての機能も兼ね備えており、地域社会に貢献するインフラとしての側面も担っています。

  • (※1) BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
BELS BELS

TODA BUILDING
ZEB Ready
(53%削減)(※2)

  • (※2) 基準一次エネルギー消費量に対する削減率

Point

ポイント

  • Point01 国内初、超高層複合用途ビルで
    建物全体での「ZEB Ready」取得

    設計当時、超高層複合用途ビル全体でZEBを取得した事例は国内にはなく、TODA BUILDINGにおいてもその実現に向けて数多くの課題に直面しました。「ZEB Ready」の取得を目指し、可能な限り多くの環境配慮技術を取り入れるとともに、高効率機器の積極的な採用や機器配置の最適化による運用効率の向上、空調・給排水などの搬送経路の効率的な設計といった多角的な取り組みが行われました。
    空調は、湿度(潜熱)と温度(顕熱)を分離して制御する潜顕分離空調機を採用。湿気を多く含む外気は、ガスコージェネレーションシステム(CGS)の廃熱を利用した低温冷水で除湿し、湿気の少ない室内循環空気は高効率なターボ冷凍機の中温冷水で温度調整を行うなど処理方法を使い分けることで消費エネルギーを低減し、省エネ性と快適性の両立を図っています。また、CGSの廃熱は空調をはじめ、食堂や飲食店の厨房の給湯にも利用され、季節や時間帯による需要の変化に応じて廃熱を効率的に利用できるよう、最適な運用計画が構築されています。
    オフィス部分の外装には、自然換気の取り込みを促す大小のフィンを設置することに加え、屋上まで達するボイド(吹き抜け)を設けることで煙突効果を活用し、建物全体での自然換気機能を向上させています。窓は高性能LoW-Eガラスを採用し断熱性と遮蔽性を強化、太陽光追尾型電動ブラインドと組み合わせることで、日射負荷を最小限に抑えながら自然採光を有効に活用しています。
    このほかにも、LEDや人感センサーでの減灯による照明エネルギーの削減、太陽光発電設備の採用など、さまざまな設計・技術的工夫の積み重ねにより、超高層複合用途ビルとして国内で初めて、建物全体での「ZEB Ready」取得を実現しました。

    自然換気窓とボイド

    自然換気窓とボイド

    吹き抜けの構造により自然換気を促進。

    電動ブラインド

    電動ブラインド

    高性能LoW-Eガラスと組み合わせることにより、
    日射負荷を最小限に抑え、自然採光を有効に活用。

  • Point02 CGS等の採用により、高いBCP機能を実現

    TODA BUILDINGでは、災害時においても必要な情報提供や電力供給を継続できるよう、電源の多重化等のベストミックスなインフラを構築しています。その一つとして、災害に強い中圧ガスを利用したCGSを導入。これにより、災害時にも安定した発電が可能となり、非常用発電機とあわせて、ビル共用部およびテナント専有部に対して最大72時間の電力供給を継続できる設計となっています。また、主要な設備は7階に集約配置することで浸水リスクへの備えも徹底しています。
    建築面では、国内トップレベルの耐震性能を誇る「コアウォール免震構造」を採用し、建物の安全性を確保。中央通りに面した広場部分にも免震性を持たせ、災害時には帰宅困難者の一時滞在場所として活用可能な、地域防災拠点の機能も担っています。
    TODA BUILDINGは、BCPに加え、DCP(※3)にも対応しており、ビル利用者のみならず、地域住民への支援にも貢献しています。

    • (※3) DCP:District Continuity Plan(地域継続計画)

Interview

インタビュー

「ZEB ready取得は、
高いハードルだからこそ挑む価値がありました」

左から
戸田建設株式会社
戦略事業本部 国内投資開発統轄部
プロパティマネジメント部 FM推進課

櫻井 成真 様

戸田建設株式会社
環境設備統轄部 環境設備設計部
機械設備第2設計室

秋山 昌幸 様

戸田建設株式会社
環境設備統轄部 環境設備設計部
電気設備設計室 主管

山岸 一郎 様

Q. ZEB化を目指した経緯をお聞かせください。

設計の初期段階から、本社ビルにふさわしい環境性能として「ZEB Ready」の取得を目標に掲げていました。当時、大規模な複合用途ビル全体でのZEB取得は国内に前例がなく、非常に高いハードルであると認識していましたが、だからこそ、あえて挑戦することに大きな意義があると考えたのです。(秋山様)

Q. 「ZEB Ready」取得に向けて工夫したことは?

まずは、WEBプログラム(※4)の内容を詳細に分析し、省エネ性能の数値が向上する項目を一つでも多く取り入れるよう努めました。他にも、主要設備を7階に設置することで配管経路を短縮し、搬送動力の削減による省エネにもつなげています。社内では本プロジェクトを「Creative Labo」と呼んでおり、将来の持続可能な建築の実現に向けた実験的な取り組みの場でもあったことから、あらゆる角度から検討を重ねました。(秋山様)
(※4)一次エネルギー消費量評価ツール

設備面では、事務室の照明がエネルギー消費の大きな要素だったため、いかに照明エネルギーを削減するかが一つの課題でした。その対策として人感センサーを導入し、在室状況に応じて照明を自動で制御する仕組みを採用しました。これにより、照明エネルギーの大幅な削減につながりました。(山岸様)

Q. 省エネやZEBについて、今後の課題、方針をお聞かせください。

現在、法的にもZEBの実現が求められる時代になりつつあり、今後の設計では全てにおいてZEBを念頭に置いた取り組みが求められます。最新の省エネ技術を取り入れていく必要がある一方、コストとのバランスを見極めた設計・プランニングの技術力もより重要になってくると考えています。
加えて、現在の評価制度では対象外となっている未評価技術に対しても、その有効性を示し、制度への反映を働きかけていく姿勢も重要になると思います。
(秋山様)

今回のTODA BUILDINGでは、各種エネルギーデータを詳細に計測・蓄積しており、それらの実績データをもとに、関係各部門と連携して、継続的な検証と運用改善に取り組んでいきます。取り組みを通じて得られた知見やノウハウは、今後の他プロジェクトや建物の設計・運用にも活用していく予定です。(櫻井様)

所在地

東京都中央区京橋1丁目7番1号

建築
面積

4,679.32㎡

延床
面積

94,912.79㎡

規模・
構造

地上28階・地下3階・塔屋1階
RC造・SRC造・S造・CFT造、コアウォール免震構造

竣工
年月

2024年9月

設計

戸田建設株式会社

ガス
設備

ガスコージェネレーションシステム 700kW×2台
廃熱投入型吸収冷温水機 500RT×2台
ガス焚吸収冷温水機 560RT×1台

外装
計画

屋上緑化
外壁高断熱ガラスの採用
電動ブラインドによる調光制御

空調

ターボ冷凍機 400RT×2台
空冷HPモジュールチラー 50RT×4台

換気

外調機
全熱交換器

照明

LED照明
人感センサー点滅制御
明るさセンサー調光制御

その他

太陽光発電設備

  • CGS

    CGS

    発電時の廃熱を冷暖房に有効利用する分散型発電システム。

  • 廃熱投入型吸収冷温水機(ジェネリンク)

    廃熱投入型吸収冷温水機
    (ジェネリンク)

    CGSの廃熱や再生可能エネルギーといった、幅広い熱エネルギーに対応している空調システム。

  • 地中熱熱源HPチラーシステム

    地中熱熱源HPチラーシステム

    地中熱を利用して冷暖房を行うシステム。

※掲載情報は2025年8月時点のものです。

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