省エネの積み重ねが支える学習環境|経済性 & ZEB

板橋区/区立上板橋第一中学校

「ゼロカーボンいたばし2050」のモデル事業として、従来計画をベースに
快適性と省エネを両立し、ZEB化を実現

板橋区/区立上板橋第一中学校

東京都板橋区は、2022年1月、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンいたばし2050」を表明。同年3月に「板橋区地球温暖化対策実行計画(事務事業編)2025」を策定し、脱炭素の取り組みを戦略的に進めています。同計画の柱の一つに「区施設の整備におけるゼロエミッション化の推進」を掲げ、区有施設の計画的なZEB化を推進する中、そのモデル事業として検討されたのが、上板橋第一中学校の改築工事です。
改築にあたっては、生徒が日常的に快適に過ごせる学習環境を損なわないことに配慮しつつ、地域に開かれた学校としての役割や、災害時に避難所としての機能を担うことも重視しました。建築計画では、断熱性能の向上や日射制御などの工夫により建物負荷そのものの低減を図るとともに、従来の学校改築で採用してきた省エネに配慮した設備計画を基本とすることで特別な設備に過度に頼ることなく、「ZEB Ready」の認証を取得しました。

Point

ポイント

  • Point01 行政・設計者・地域の連携による「ゼロカーボン」に向けた取り組み

    上板橋第一中学校の改築においては、脱炭素に向けた区の方針のもと、行政と設計者が協議を重ねながら、複数の想定に基づく検証を行い、整備内容の具体化が進められました。
    あわせて、PTA、同窓会、町会、地域コーディネーター、学校関係者で構成された「上板橋中学改築検討会」を設置し、整備内容について協議を推進。ZEBの考え方についても共有し、教育施設としての学習環境の快適性にも十分に配慮することで、関係者の理解を得ながら検討が進められました。
    板橋区では、同中学校を含むZEB化モデル事業の検討により、学校1校を改築した場合、ZEB化以前と比べて約100[t-CO2/年]のCO2削減効果が見込めることが検証できており、今後は原則として、延床面積2,000㎡以上の新築・改築工事において、ZEB化を通じたCO2削減に取り組んでいく方針です。
    行政や設計者に加え、学校や地域のさまざまなステークホルダーが連携し、「ゼロカーボンいたばし2050」の実現に向けた取り組みが進められています。

  • Point02 日射負荷の低減と照明・空調の最適化による省エネルギー化

    建築計画では、外装に格子リブやLow-E複層ガラス等を採用することで、日射負荷の抑制を図っています。
    設備計画においては、従来の学校改築で採用してきた省エネに配慮した設備計画を基本としながら、空調負荷の最適化を行いました。空調機を設置した教室から、隣接するホームベース(HB)や廊下といった空間へ空気を流し、最終的にはトイレの換気を通じて排気する構成としています。HBは、現状ロッカールームとして利用されていますが、将来的に生徒数の増加に応じて教室として利用することも想定された可変的な空間です。現時点の利用状況に応じて、空調機の設置範囲や台数を過不足なく設定するとともに、空調機を設置していない空間も含めて空気の流れを考慮することで、校舎全体の環境を維持しながら、省エネ化を図っています。
    このように、建物外皮による日射負荷の低減と、空調負荷および空調機台数を適切に設定する設計の考え方により、建物負荷そのものを抑え、消費エネルギーの削減につなげています。

  • Point03 高効率GHP・EHPの組み合わせでZEB化とランニングコスト低減を実現

    空調設備には、部屋用途や運用特性に応じて、複数の選択肢を検討した結果、GHPとEHPを併用した計画を採用。校舎全体としてはGHPの採用比率を高めつつ、用途に応じてEHPを組み合わせることで、エネルギー効率と運用面のバランスを考慮した空調システムとしています。
    GHPについては、ペアマルチタイプを採用することで、部分負荷運転時の効率向上を図るとともに、運転時のエネルギーコスト低減にも配慮。あわせて、適正な空調容量で、設備全体の効率化を図っています。
    また、機器台数を適正化した計画とすることで、将来的な更新時のコスト低減や、日常的な保守・点検にかかるメンテナンス負荷の軽減にもつなげています。これらの考え方は、板橋区が重視する「施設の長寿命化」を踏まえたものであり、ZEB化の達成とあわせて、長期的な運用を見据えた空調設備計画としています。

Interview

インタビュー

「特別なことではなく、今まで行ってきた
設備計画の延長線上でZEB化を実現できました」

板橋区
政策経営部
教育施設担当課長
教育委員会事務局
副参事

彼島 勲 様

株式会社安井建築設計事務所
東京事務所 設計部

生沼 千里 様

株式会社安井建築設計事務所
東京事務所 設計部
設計部長

辻 昭憲 様

株式会社安井建築設計事務所
東京事務所 設計部
主事

西澤 章 様

左から
生沼 千里 様 設計部長徳田 嘉寛 様
主事辻 昭憲 様

Q. ZEB化のためのイニシャルコストについてどのようにお考えですか?

A. ZEB化は初期投資が従来の改築に比べて増える点は認識していますが、長期的なエネルギーコスト削減、環境負荷軽減による持続可能な社会への貢献など、社会的要望へ応え、付加的価値の創造していくためには必要な取組であると考えています。(彼島様)

Q. 「上板橋中学改築検討会」のZEB化に対する反応はいかがでしたか?

同検討会の委員からは「環境を配慮することも重要だが生徒の集中を欠くようなことはないようにしてほしい」といった意見がありました。その声を受けて、生徒の快適性も含めて検討を行いました。(彼島様)

Q. ZEB Ready取得にあたり、設計事務所との検討や協議の中で、特に印象に残っている点はありますか?

設備に関しては過去の改築校においても省エネに配慮した計画としてきたので、まずは従来通りの設備計画を本案件に反映させ、どこまでZEB化できるかを考えました。結果として、断熱化・開口部の対策、一部空調範囲の見直しにより、特別な機器を導入することなく「ZEB Ready」認証を取得できました。これまでの設備計画が間違っていなかったことの証明にもなり、設計段階での印象的な出来事です。(彼島様)

Q. ZEB取得に向けて、建物の躯体や外装など、建築計画の面ではどのような工夫を行いましたか?

プロポーザルの段階から、環境性能を高めるため、格子リブやLow-E複層ガラスの採用を検討しました。庇も開口部の真上に設け、柱はアウトフレームとした上で格子リブを設置することで、日射の抑制を図っています。
これらの工夫により、試算では日射負荷の影響を約65%低減できる結果となりました。
建物が方位に対して東西方向に長く、西側からの負荷が比較的少ない配置であったことも日射負荷の低減に寄与しました。負荷抑制を建築的な工夫によって実現できた点は、よい効果が得られたと感じています。(辻様)

Q. 教室の空調では室内機を1台としていますが、その意図を教えてください。

板橋区様は、施設の長寿命化に対する意識が高く、将来的な機器更新や維持管理にかかるコストの低減も重視されています。本計画では、建物の断熱性能の向上や空調負荷の低減を踏まえ、室内機1台でも十分な空調性能を確保できると判断しました。台数を適正化することで、更新コストやメンテナンス負荷といったトータルのコスト削減にもつながると考え、板橋区様にもご理解をいただきました。(辻様)

Q. 設計者の立場からZEB化に向けて苦労した点や工夫は?

ZEBを目指すにあたり、意匠面では一定の制約が生じるため、その中で建物としてどのように差別化を図っていくかが悩みどころでした。例えば、校舎南北面は単調で長大な壁とならないよう半コマ毎に壁を設けることで分節化し、再生木や緑のカーテンによって周辺環境に調和した計画としています。(生沼様)

また、ZEB 化に向けては、板橋区様と試行錯誤を重ねながらさまざまなパターンで検討を行いました。設備面では目新しいものに頼るのではなく、空調機を設置しないホームベース(HB)(※1)に教室から空気を流し、さらに廊下を経てトイレで排気するといった工夫を積み重ね、建物全体で空調効率の向上を図っています。(西澤様)

(※1)生徒各自のロッカーが設置された部屋

所在地

東京都板橋区常盤台一丁目1番1号

建築
面積

3,974.60㎡

延床
面積

10,706.07㎡

規模・
構造

地上5階 RC造、S造

竣工
年月

2027年2月(予定)

設計

株式会社 安井建築設計事務所

空調

■GHP:507.5kW(35.5kW×1台、45kW×8台、56kW×2台)
■EHP:297.1kW(3.6kW×1台、25kW×1台、33.5kW×1台、45kW×1台、50kW×1台、67kW×1台、73kW×1台)

外皮
断熱

東京都財務局の「省エネ・再エネ東京仕様」に準ずる

換気

全熱交換器、全熱交換器自動換切替機能

照明

在室検知制御、明るさ検知制御、タイムスケジュール制御、ゾーニング制御

その他

再生可能エネルギー 太陽光 32.0kW

  • CGS

    ※画像はイメージです

    GHP(ペアマルチタイプ)

    2台の室外機を負荷に応じて制御する省エネ空調システム。運転時間の少ない室外機を起動させるなどの選択運転により運転時間を平準化し、機器の長寿命化に貢献。

  • ※画像はイメージです

    太陽光発電

    太陽光のエネルギーを、太陽光パネルによって電気に変換して発電するシステム。電気料金の削減や災害時の電力確保に有効。

※掲載情報は2026年3月時点のものです。

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