明治大学/和泉ラーニングスクエア
費用対効果の高い
省エネ対策を積み上げ、
理想の学修環境とともに
ZEBも実現
和泉ラーニングスクエアは、明治大学創立140周年記念事業として2022年3月に竣工した和泉キャンパスの新教育棟です。吹き抜けの大空間「ラーニングコモンズ」を中心に、多様なスペースを配置し、学生同士の主体的・対話的な学びを促すアクティブラーニングに対応した教育環境を整えています。さらに、「環境に優しいキャンパスづくり」といった大学の目標のもと省エネ・省CO2にも配慮し、「ZEB Ready」認証を取得。コージェネレーションシステム(CGS)や電気・ガスのミックス熱源の採用のほか、効果的に自然採光・通風を取り入れるハイサイドライト、全照明のLED化、外部階段及びテラスにおける熱負荷の抑制等、多様な省エネ対策を組み合わせ、学修環境や快適性にも配慮したZEBを実現しました。また、建築設備一体での取り組みにより、光熱費に加え更新修繕費等の削減も図っています。
明治大学 和泉ラーニングスクエア
(約12,200㎡)
ZEB Ready
(52%削減※)
-
※
基準一次エネルギー
消費量に対する削減率
Point
ポイント
-
適材適所・最適容量の空調システム設計で、
省エネ・省コスト・BCP対策等を実現アクティブラーニングに対応する多様なスペースを配置した和泉ラーニングスクエアでは、それぞれの空間の特性に合わせた熱源を選択することで、省エネ・省コストを実現しています。
大空間のラーニングコモンズは、CGS廃熱を利用した廃熱投入型吸収式冷温水発生機(ジェネリンク)を大温度差・中温冷水で採用。ラーニングコモンズの次に床面積が大きい大教室は、空気熱源のモジュールチラーを同じく大温度差で採用し、熱源自体と搬送動力の省エネを図っています。計画当初は、夏場の負荷率100%をまかなえる熱源容量で空調システムを設計していましたが、実際の運用で空調が全室フル稼働するケースは極めて少ないことから、熱源容量を大幅に見直し、削減することで、コストだけでなくBEI低下にも大きく寄与しました。また、電気・ガスのミックス熱源でランニングコストに配慮するとともに、双方バックアップ可能なシステムとすることで、BCP(※)にも対応しています。- ※ BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
CGSについてはこちら
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エネルギー消費の多い大空間において、
快適性・省エネ性・設備更新コスト低減を追求延床面積の80%を占めるラーニングコモンズと大教室は、快適性と省エネ性を両立するために、人がいる高さだけを対象とする床吹出空調による「居住域空調」を採用。さらに床吹出空調は全面床下チャンバー方式でダクトレス化し、ダクト更新時の内装解体工事等が不要となる工夫をしています。
また、年間エネルギー消費が大きいラーニングコモンズは、CGSの廃熱を利用するデシカント外調機及び二次側空調機による潜顕分離空調を採用し、デシカント外調機で湿度をコントロールすることで、過剰に空間を冷やさずに快適性の維持を可能にしています。
大教室の空調には、全熱交換器組込型のエアハンドユニット(AHU)を採用し、AHU の排気を屋上のモジュールチラーの給気として利用(屋内廃熱のカスケード利用)することで、冷暖房時のヒートポンプの効率を向上。
さらなる熱の再利用として、屋上機械室の高温排気の一部をデシカント外調機の再生空気に利用することでCGSの廃熱利用効率を高めています。デシカント外調機への給気ダクトを機械室屋根面に敷設し、太陽熱によりさらに昇温された外気をデシカントの再生側へ給気することで、空調にかかる電力消費の削減にも貢献しています。
また、空調以外でも、設備更新性を高める天井を貼らない計画、更新不要な樹脂管の積極的な採用などの工夫により、更新修繕費等の大幅な削減を図っています。
Interview
インタビュー
「快適性・省エネ・省コストを突き詰めた結果、ZEBが実現できました」
明治大学 管財部 施設課
安島 大晴 様
Q. 和泉ラーニングスクエアの建設においては、「アクティブラーニングの実現」を重要視されたそうですね。
A. 「ラーニングスクエア」という名称の通り、アクティブラーニングの実践の場として、建設計画を立てていきました。外観は旧第二校舎(1960年竣工)の雰囲気を継承しながら、目的やスケールの異なる活動に柔軟に対応できる多様なスペースが学生たちに好評で、少人数のディスカッションなどに活用できる「グループボックス」などは常に予約がいっぱいと聞いています。
Q. 教育環境へのニーズが変化する中、現在はカーボンニュートラルの実現など、持続可能性や環境面への配慮も新たな社会テーマとなっています。そのあたりの取り組みや、和泉ラーニングスクエアのZEB実現の経緯をお聞かせください。
A. 本学では、「学校法人明治大学環境方針」のもとカーボンニュートラルの取り組みを計画的に進めているところです。和泉キャンパス以外でも、2023年2月に生田キャンパスにおけるカーボンオフセット都市ガス導入に関する契約を締結するなど、全キャンパス・全施設について、省エネとCO2削減を積極的に行っていく方針です。
和泉ラーニングスクエアについては、計画当初からZEBを目指していたわけでなく、実施設計まではCASBEE”A”相当の省エネ性能を目標としていました。工事に入ってから熱源容量などを見直している中で「ZEB Readyを取れる可能性がある」と設計事務所から話があり、ZEBの実現に向けて改めて舵を切りました。
- ※ 生田キャンパス カーボンオフセット都市ガスの導入については明治大学Webサイトでもご覧いただけます(外部サイトへリンクします)
Q. 本建物は、一般的にZEBの難度が高いとされる規模(10,000㎡以上)にあたります。具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。
A. 外部階段やテラスなどによる熱負荷の抑制や、庇による日射熱負荷削減による省エネの効果もあると思います。また、今回特にこだわったのはCGS廃熱を利用したデシカント空調機を中心に計画した空調システムです。
空間によって空調熱源を使い分けているのですが、やはり大空間のラーニングコモンズを、いかに省エネしながら居住空間としての快適性を保つかが大きなポイントでした。通常は7度冷水で温度を下げますが、湿度をコントロールすることで体感上涼しくさせたほうがいいだろうということでデシカントを使いました。そのうえで、当初は大教室の熱源の負荷率を100%で考えていたのですが、夏場のピーク時に空調が100%稼働する状況は現実的にありえない、ということで、デシカントによる湿度調整の効果も含めて負荷を見直し、熱源容量をぐっと下げることができ、この点もZEB実現に貢献しました。
Q. 非常に合理的に考えられた省エネと設備計画が、結果としてZEBにつながったということですね。設備更新費削減といったお話もありましたが、コストも重視されたのでしょうか。
A. 費用対効果は重視しています。限られた予算の中で、ちょっとでも効果があることを積み重ねて最大限効果を出すことを考えました。
光熱費については、熱源を電気・ガスのミックスにしたことはランニングコストの面で非常に大きかったです。電気だけではピーク電力が上がり、契約電力も上がってしまいますが、ガス熱源をメインにしても十分に施設を運用できます。加えて、エネルギーリソースを複数化しておくことで、停電時などのリスクヘッジも図っています。電気のモジュールチラーが止まっても、ジェネリンクでバックアップができるよう回路を組んでいるので、停電時も大教室の空調が可能です。
建物概要・主な導入設備
所在地
東京都杉並区永福1-9-1
建築
面積
2,661.97㎡
延床
面積
12,241.52㎡
規模・
構造
地上8階、鉄骨造・一部CFT柱
竣工
年月
2022年3月
ガス
設備
マイクロガスコージェネレーションシステム(ジェネライト)35kW×2台
廃熱投入型吸収式冷温水発生機(ジェネリンク)390kW×1台
外皮
断熱
グラスウールボード(屋根)
Low-Eガラス(エコガラス)
空調
床吹出空調方式
デシカント外調機
モジュールチラー、EHP(高効率型)
換気
ラーニングコモンズ:デシカント外調機+排気ファンによる1 種換気
大教室:空調機(全熱交換器組込)
小教室:全熱交換ユニット
照明
LED照明(一部人感センサー)
その他
中央監視設備
自然換気システム
太陽熱集熱ダクトによる熱源システム効率向上
雨水及び空調ドレン水の雑用水利用
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CGS(ジェネライト)35kW×2台
最小クラスのガスコージェネレーションシステム。
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廃熱投入型吸収式冷温水発生機(ジェネリンク)390kW×1台
CGS廃熱を利用した空調システム。
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ハイサイドライト
ラーニングコモンズの吹き抜けに自然光を取り込む鋸屋根状のハイサイドライト。さらに、重力換気で空調負荷の削減も図っている。
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太陽熱集熱ダクト
屋上機械室の排気をデシカント外調機へ給気するダクトを機械室屋根面に敷設。ダクトの上面を黒く塗装し太陽熱による昇温効率を高めている。
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※掲載情報は2023年10月時点のものです