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厨BO! 東京ガス業務用テストキッチン

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セミナーレポート

2024.7.17

【開催報告】「Good, Local, Happy!繋がろう!山の恵み&生産者&Chefs!」~横浜で活躍する豪華シェフの共演~

横浜の水源地の一つである自然豊かな道志村(山梨県)から届いた旬の野菜やジビエ(鹿肉)を用いて、神奈川を代表する料理業界のシェフ達が即興ライブで料理を仕上げるという初の試みのセミナーを開催しました。生産者にもお越しいただき食材の説明や、ジビエの狩猟や獣害の実情などのお話しを伺いました。メイン食材は夏が一番美味しいと言われる本州鹿の背ロースを使用しました。
講師として調理実演を担当してくださったのは、横浜ガストロノミ協議会の理事長、飯笹 光男シェフ(シェ・フルール横濱)と全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部の菅原 伯亮シェフ(インターコンチネンタル 横浜Pier 8)のお二人です。

セミナー当日に届いた食材を見て、味見をし、レシピを組み立ていきます。猟友会の出羽さんは自分たちが獲った鹿がシェフにより、洗練された料理に変化していくのを見て、普段自分たちが料理するものと全く違うと驚かれていました。増え続ける鹿は農作物を荒らし、獣害被害を減らすためにも狩猟が必要です。獲ったジビエも、食材として流通に乗せるには、適切な処理や流通システムと需要がないと成り立ちません。
太田ハッピープランニングの太田さんにもお話を伺いました。太田さんは生産地の道志村と消費地の横浜を結び、食材の紹介・販売の仕組み作りに長年取り組んでおられ、「食」で両者をつなぐことで、生産地が抱える過疎化、高齢化といった社会問題の解決にもつなげたいとのこと。その取り組みをこの地・横浜から始めたい、とのお話が印象的でした。また当日は道志村産食材の物産展・即売会も開催。セミナーで見て、味わった食材が購入できるのは嬉しいと参加者からも好評でした。
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生産者と料理人のトークセッション
~健康と食について~
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トークセッションでは健康と食について伺いました。

◎道志村で生まれ、水を飲み、葉を食べて育った鹿は天然もの。セミナーではロースを使ったが猟師の立場からすると他の部位はどんな料理になるのかと期待が高まる。
鹿は栄養面からも女性に人気だが、アスリートの身体作りなどにも可能性があるのではと感じた。これからも勉強していきたい。(猟友会:出羽さん)

◎今日の食材はどれを食べてもとてもパワーがあると感じた。一番驚いたのはクレソン。これだけ辛味があって美味しいのは初めて。簡単な調理だけでも立派なソースになり、捨てる部分がなかった。普段より、生産者を大切にする人から食材を仕入れたいと思っているので、自然と料理に思いを込めて作るようになる。旬も大切にしたい。昔に比べて温暖化で食材の採れる場所や時期がずれてきていると感じている。それに対応する為にも生産者とコミュニケーションをとるようにしている。(飯笹シェフ)

◎南フランスやギリシャ、イタリアは世界で群を抜いて成人の心臓病が少ないというエビデンスが1950年に既にアメリカの学者の本に出ている。特にイタリアの郷土料理はその村で採れた野菜、肉、お水、魚を使い、その地のワインを合わせることが多い。地元食材の使用は医食同源につながると思い、自分も地元の食材を使いたいと思っている。(菅原シェフ)

◎道志村の人は明るく楽しそうに生きている人が多いと常日頃感じている。美味しい水や空気、村で育った食材を食べていることがつまりは健康につながっているからではないかと思う。(太田さん)
2つの料理業界団体がタッグを組みセミナーを厨BO! で行うのはこれが2回目。今回はさらに生産者も一緒に、これからの「食」の在り方を考えるものとなりました。惜しみなく技や知識を披露して下さったシェフ、貴重なお話をして下さった生産者の皆さま、ありがとうございました。
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実演料理
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■飯笹 光男(いいざさ みつお)氏
「シェ・フルール横濱」オーナーシェフ 
(横浜ガストロノミ協議会)
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本州鹿のスモーク トウモロコシのピューレ添え 道志村の恵み
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道志村は小さい頃から自然が豊かでよく親に連れていかれ遊びに訪れていたという飯笹シェフ。かつては生でも食べた鹿だがウイルス感染が増えているとのことで最近は保健所からしっかり火入れするようにと指導が出ているとのこと。固くならないようにゆっくり火入れし、焼き上がって休ませ後、軽く燻製にかけ、最後にバーナーで炙って仕上げました。
蝦夷鹿に比べて本州鹿はくせも少ないとのこと。脂質は牛肉の1/6程度でビタミンB群が豊富で披露回復や老化防止、貧血、美肌効果があるそう。道志村のハチミツを使った赤ワインソースや、収穫されたばかりの瑞々しいトウモロコシはピューレや焼きトウモロコシ風にして、またクレソンは色鮮やかな緑色のソースや付け合わせに。ルネッサンストマトはコンフィにしました。まさに「道志村の恵み」の一皿でした。
(試食して)飯笹シェフが仰っていた通り本州鹿は蝦夷鹿のようなくせもなく食べやすかったです。付け合わせのルネッサンストマトのコンフィも味わい深く、また瑞々しいとうもろこしの自然な甘みも一皿を構成する上で特筆すべきポイントだと感じました。添えられたクレソンのサラダの刺激的な辛味からくる力強さにも驚かせられました。
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■菅原 伯亮(すがわら ともあき)氏
「インターコンチネンタル 横浜Pier 8」料理長
(全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部)
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鹿肉のロースト ビーツのリゾット添え マスカットベリーAを使った赤ワインソース  
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赤で統一された美しい一皿です。道志村の豊な自然と水源、そこで生まれ育った動植物の生態系をイメージしたというお料理でした。鹿に合わせてビーツを選択。土っぽさや優しい甘みを鹿肉のミネラル感や旨味に合わせたかったとのこと。ビーツは栄養価が高いところも魅力です。水源地道志村の水と土からイメージしたお米を合わせてリゾットにしたり、スパイスと合わせて色鮮やかな赤いパウダーにしたり、チュイルにしたり使い方も様々。赤ワインソースには同じ山梨県産のマスカット・ベリーAの赤ワインを使用しました。ソムリエの資格を持つシェフならではの味覚の説明に納得です。鹿は何を食べていただろうと想像し、コケモモ類を想像してブルーベリーをソースに加えたり、飾りにグロセイユを使用したり、甘みと酸味、温度差や食感に差をつけて味の奥行や変化を持たせるなど趣向を凝らせた一皿は、山の中にいるような世界感が表現されていました。鹿はモモ肉なら煮込みに向きそうで、鹿の生ハムも美味しいと思うとのこと。
(試食して)短時間の仕込みにも関わらず、緻密に考え抜かれ、そして菅原シェフの真面目なお人柄も垣間見られるようなお料理でした。イタリア料理のおしゃれな雰囲気と色気を感じさせる彩りや盛り付けもとても素敵で、クローブを香らせ赤く染まったビーツのリゾットやルネッサンストマトベースのアグロドルチェなど技術的にも洗練されたピアットで感動しました。

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参加されたお客さまの声
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◎シェフのみならず生産者さん、猟師さんの意見を聞けて良かった。
◎鹿が何を食べて育っているのかなど想像して作ることが大切だと感じた。作って下さる2人のシェフでも全く違う料理が出来て、見ていて楽しかった。考え方も全然違ったのもとても参考になった。
◎鹿の肉を良い状態に保つ方法の話 (心臓の止まっていない状態で放血する) が良かった。
◎フレンチとイタリアンの調理法の違いが知れて良かった。イタリアンの講習は初めてだったが、目からウロコの連続だった。リゾットもバターも面白かった。
◎シェフ2人の食と健康についての考え方を聞くことができ、いい経験になった。

最後に両団体を代表して、齊藤 悦夫会長(全日本司厨士協会 神奈川県本部)が「我々料理人の使命は生産者の想いを消費者に伝えること。そのまま伝えるのではなく、スキルを含ませて価値あるものを提供することが大切。それを目指し取り組むのが我々、両団体の共通点。今回で2回目となるこういったセミナーの機会を今後増やしていきたい。」との挨拶で締めくくりました。

【上部写真左より】
齊藤会長、川村さん、太田さん、大駒副総料理長(ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル)、飯笹シェフ、菅原シェフ、森さん(シェ・フルール横濱)、池田さん(シェ・フルール東山)、加藤さん
(ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル)、出羽さん

【左写真上より】
1枚目:飯笹シェフによる「本州鹿のスモーク トウモロコシのピューレ添え 道志村の恵み」
2枚目:菅原シェフによる「鹿肉のロースト ビーツのリゾット添え マスカットベリーAを使った赤ワインソース」
3枚目:登壇者のみなさま(左より)猟友会の出羽さんと川村さん、飯笹シェフ、太田さん、菅原シェフ
4枚目:道志村のルネッサンストマトとトウモロコシ
5枚目:道志村産ハチミツ、鹿肉のシチュー、ジャーキーや野菜を即売会で販売
6枚目:クレソンの茎を使ったソースで最後の仕上げをする飯笹シェフ
7枚目:調理実演中の菅原シェフ
8枚目:両シェフの料理を参加者にご試食いただきました。これは菅原シェフの料理の試食
9枚目:セミナー会場の様子

【主催】厨BO!YOKOHAMA 
【特別協力】一般社団法人 全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部、NPO法人 横浜ガストロノミ協議会
【協賛】一般財団法人 ザ・ブラフクリニック
  • 菅原シェフのお料理に使われた素材。ビーツのリゾット、さまざまなスパイスを混ぜたビーツパウダー、ビーツバターなど鹿肉の断面の色に合わせて赤で統一。
    菅原シェフのお料理に使われた素材。ビーツのリゾット、さまざまなスパイスを混ぜたビーツパウダー、ビーツバターなど鹿肉の断面の色に合わせて赤で統一。
  • 採れたてのクレソン。ピリッとした辛みが長く続き美味。
    採れたてのクレソン。ピリッとした辛みが長く続き美味。
  • 猟友会の皆さまに依頼して届いた本州鹿背ロース
    猟友会の皆さまに依頼して届いた本州鹿背ロース
  • 冒頭の挨拶をする山下副理事長兼専務理事(横浜ガストロノミ協議会)
    冒頭の挨拶をする山下副理事長兼専務理事(横浜ガストロノミ協議会)
  • お料理にも使われた道志村のお水<br>
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    お料理にも使われた道志村のお水

飯笹 光男(いいざさ みつお)氏
「シェ・フルール横濱」オーナーシェフ
辻調理師専門学校を卒業後、横浜元町・老舗フランス料理店「霧笛楼」で10年修行。
その後、藤沢・フランス料理の名店「名古屋」、横浜「メイフェアハウス」料理長を経て、1996年11月「エルミタージュ」をオープン。10年間、料理長を務めた後に独立。
2007年10月、横浜駅そばに「シェ・フルール横濱」をオープン。映画「南極料理人」では料理監修を担当。
リヨンと姉妹都市で、フランスとの繋がりが深い横浜で、繁盛店として愛される「シェ・フルール横濱」。素材にこだわった「創作和フレンチ」は誰もがお箸で食べられるように、さらにフランス料理を日本人に馴染み深い"和"の食材を使用し、フランス料理をより親しみやすくとの思いから、器やプレートに有田焼の食器を使うなど、視覚的にも日本の伝統美を盛り込んだ料理は独自の世界を作り出している。                       
https://www.chaifleurs.net/
菅原 伯亮(すがわら ともあき)氏
「インターコンチネンタル 横浜Pier 8」料理長
2002年に「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」に入社。イタリア料理「ラ ヴェラ」、ビュッフェレストラン「オーシャンテラス」、フランス料理「アジュール」で調理に従事。2021年7月より、「インターコンチネンタル 横浜Pier 8」料理長に就任。
https://www.icyokohama-pier8.com/