- DATA
- [所在地]
- 東京都千代田区丸の内1-1-1
- [URL]
- http://www.palacehotel.co.jp/
- [開設年月日]
- 平成24年5月17日(改築グランドオープン)
- [厨房の面積]
- 1,046m2(B4F:メインキッチン、各下処理室、冷菜仕上・盛付室など、B2F:荷捌きエリア)
- [飲食施設]
- 1F:メインダイニング(162席、個室1)、ロビーラウンジ(76席)、メインバー(25席)/6F:フランス料理(64席、個室3)、日本料理(98席、和洋個室9)、鮨(20席、個室1)、中国料理(108席、個室4)、ラウンジバー(76席)、ペストリーショップ、宴会場(4室の合計347m2)など
- [特徴]
- レストラン、宴会場、宿泊客に向け、パレスホテルの味とサービス、すばらしい眺望を提供。
パレスホテルは、1961年に最新設備を備えた近代的ホテルとして、丸の内に誕生しました。約50年にわたる長い歴史を経て、パレスホテルからパレスホテル東京へ。建て替えのため一次休館し、2012年5月、新たな時代にふさわしいホテルへと生まれ変わりました。
新しいホテルの厨房は、地下4階のメインキッチンを中心とした集約型調理システムを採用しています。総料理長をはじめとする調理スタッフと厨房コンサルタントチームが一丸となり、約3年にわたり計画を推進し、最新の調理オペレーションを模索。徹底した衛生管理ができる厨房であることを第一に、その一方で伝統の味やブランド、サービスをさらに向上せていくためには何がベストなのか。軌道修正や検証を重ね、衛生性・調理性の両方を実現する新しいスタイルのホテル厨房が誕生しました。
- 日本料理(6F)
- 地下4階のメインキッチンで食材を集中加工し、可能な限り作業集約による効率化を図っている。各階のレストランに付随する厨房では、オーダーに応じたそれぞれの調理法を展開する。
- 洋菓子製造(B4F)
- 地下4階には、メインの加熱調理室のほか、洋菓子専用・パン専用の厨房がそれぞれ併設されている。調理室には小型の洗浄機があり、厨房内の調理道具は厨房内で片付けることができる。
食材納入から提供まで「ワンウェイ動線」となるハードの設計としくみを構築し、HACCPに対応した厨房レイアウトを実現しています。また、納入された食材はすべて地下2階の荷捌きエリアで専用容器に移し替えることで、外部からの菌の持ち込みを防止。清潔区域との境界には前室とエアシャワーを設置し、衣服についたゴミやホコリなどを落してから入室する配慮がされています。さらに、温度管理を自動化できるシステムと、清掃性に優れた厨房設備の設計・施工により、スタッフの負荷をできるだけかけずに、厨房内を清潔に保つことができます。
- 1 HACCPに対応したワンウェイ動線の厨房レイアウト
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- 地下2階の荷受スペースから納入された食材は、すぐ隣にある荷捌きエリアへ。入室前に台車用の自動クリーナーや外部の空気を遮断するエアシャワーを設置している。
- すべての食材は館内専用容器(写真右)に入れ替えてから移動。荷捌きエリアへの食材納入業者の立ち入りを極力制限し、段ボール類は納入業者が持ち帰るルール。
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- 2 衛生管理の徹底を促すさまざまな厨房設備の工夫
- a.冷機器下の排水溝と設けている。コンクリートベース。/b.清掃性の高いステンレス側溝を採用した排水溝。/c.床材と同じ素材の排水溝カバー。臭いを最小限に。/d.什器の脚の高さは掃除のしやすさを考慮した200mm。/e.什器の扉は容易に取り外しできる。/f.HACCPマスター(温度管理)の導入。冷蔵庫などの温湿度を記録。
メインキッチンで食材を集中加工し、作業集約による効率化を図っています。その一方で、パレスホテル東京が誇る「味」「サービス」そして「ブランド」の維持・向上を図ることも重要なミッションです。共通の下処理食材を利用することで、各レストラン厨房ではおいしい料理をつくることに専念できます。また、メインキッチンでは、ガスの瞬発力や繊細な火加減が重要な役割を担っています。
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- 3 ガスレンジ
- 地下4階にあるメインキッチンの中央に並ぶガスレンジ。ここで、宴会場や各階レストランで提供する中間品や完成品の調理を行う。
ガスコンロなど加熱調理機器の上部には、「換気天井システム」を導入しています。このシステムは「暖かい空気は上昇する」「冷たい空気は下降する」という自然の法則を応用したもので、排気と給気を撹拌させずに置き換えて効率よく換気できます。また、ガスフライヤやガス立体炊飯器は「涼厨」を採用し、集中排気と低輻射を実現。厨房内の温度を25℃以下に抑え、季節を問わず快適な空間を生み出します。
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- 4 広々した厨房空間を生み出す「換気天井システム」
- 調理で生じる排気・排熱・油脂分を置換換気で効率よく捕集し換気を行う。スポット空調等による強い気流を発生させず、従来タイプの換気フードと比較して、視界も妨げられないので、作業空間も明るく広々に。また、自動洗浄により、清掃性にも優れている。
5 ガスフライヤ
6 ガス立体炊飯器- 6階にある日本料理のキッチンに導入した「涼厨」タイプのガスフライヤと立体炊飯器。空気断熱構造により、輻射熱を大幅にカットする低輻射タイプ。さらに、集中排気、簡単清掃構造など優れた特長をもつ。
調理部責任者様に伺いました!
1つ1つの調理の「作業分解」ができてこそ、メインキッチンが機能する!
新しいホテル厨房を実現すべく、今までの分散型調理から集約型調理へ作業革新を実施しました。集約型調理を導入することで、ホテルにとって大変重要な「高い衛生性」を徹底することができるのが、まず大きなメリットです。もちろん、それに加えて「生産性」や「効率性」も向上します。しかしながら、伝統の味やサービスもきちんと守りたい。そこで、重要になるのが作業分解です。メインキッチンと各階のレストラン厨房で、どの部分の調理作業をどこで行うかを明確にし、整理していくこと。とても地道な作業ですが、集約型調理システムを最大限に活かすには欠かせないポイントです。
レシピをデータ化して、情報を共有。
可能な範囲で、調理のレシピをデータ化しています。これは、効率化はもちろんですが、パレスホテル東京の味と品質を維持し、伝承させるためにも重要な取り組みです。また、レシピをデータ化することで、必要な食材の種類や調理作業フローが明確になり、作業分解に連動させることも容易になります。さらに、レシピを登録しておけば、作業指示書を手書きする負荷も軽減します。調理室近くに小部屋を設け、データメンテナンスもしやすくなっています。
「ガス・蒸気・電気」、熱源の特長を活かしたベストミックス厨房。
作業分解は、機器を効率よく配置した厨房づくりにも役立っています。熱源にはそれぞれメリット・デメリットがあり、それを理解した上で、機器を導入しました。たとえば、焼く・炒めるなどの瞬発力やパワーを必要とする調理や微妙な火加減で行う調理にはガスは不可欠です。一方で、大型の洗浄機やスープケトルなどは、地域冷暖房の蒸気を活用することでコストも抑えられます。
設計者に伺いました!
衛生管理しやすい厨房環境をつくるには?
株式会社シニリトルジャパン
取締役
伊藤 芳規 様-
総料理長をはじめ、調理側から作業工程のすみずみまで徹底的なヒアリングを行い、快適に働きやすく、かつ衛生管理しやすい厨房設計を行っています。その中心となるのは、食材納入から提供まで「ワンウェイ動線」の構築ですが、他にも換気天井システムや「涼厨」機器導入による厨房内の温度管理、床面の色分け、清掃性の高いステンレス側溝、床の長尺シート、機器類のコンクリートベース、建具、照明のステンレスカバー、外して洗える什器など、さまざまな工夫を取り入れています。
HACCPマスターなど、作業負荷を軽減する設備。
たとえば、スタッフの目に入りやすいように冷蔵庫の温度表示を大きくしたり、HACCPマスターで厨房室や冷凍・冷蔵庫などの温湿度を管理。食材の受発注システムと連動した納入時の温度チェックや調理中の温度も記録します。また、作業台を通常よりも高めの900mmとし、作業者の腰への負担も軽減。ホテルパンなど備品のサイズを統一することも煩雑な作業をなくすことにつながっています。
最低30年以上持続できる厨房を目指す。
旧パレスホテルの厨房も約50年使用した実績があります。そのため、今回の厨房も長く利用されることとなるでしょう。そこで、パレスホテルの伝統の味を守ることのできる効率のいい厨房でありながら、耐久性も考慮した施設を目指しました。たとえば、ステンレス側溝や高い耐久性の床材、ステンレス製の建具などを採用。消耗部分はメンテナンスも可能です。
※本ページの内容は、2012年7月現在のものです。
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