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最適厨房の「常識&非常識」中級編/厨房メーカーさまに聞く [2] 「クックチルシステム」の導入を成功させるには? ─ 大量調理に「クックチル」を正しく導入・運用すれば、「美味しさ」と「作業の合理化」を同時に実現できます!

尾崎 圭子 氏
服部工業 株式会社
ニュー・マーケット
事業部
尾崎 圭子 氏
(国際HACCP同盟 FPI認定インストラクター)

服部工業 株式会社
服部工業 株式会社

設立
1919年(大正8年)
※創業:明治18年
代表者
代表取締役 服部良男
所在地
本社/愛知県岡崎市羽根町字若宮30番地
工場/愛知県岡崎市羽根町小豆坂183番地
営業所/北海道、仙台、東京、大阪、広島、九州
電話
0120-181249(カスタマーセンター)
事業内容
業務用厨房機器の製造・販売、厨房設備設計・施工・メンテナンス
URL
http://www.hattorikogyo.com/

01. 厨房機器メーカーが自ら運営する「クックチルセンター」

──服部工業さまが、クックチルに取り組まれた経緯を教えていただけますか?

尾崎

当社は業務用厨房機器の製造・販売を主な事業としています。たとえば「涼厨」回転釜や「涼厨」立体炊飯器の製造、海外メーカーのスチコンの販売などを行っています。それに加えて、幼稚園やカフェ、カルチャーセンター、FMラジオ局など、さまざまな事業をグループで多角的に展開しています。いずれも地域に密着し、地域の皆さまに豊かでしあわせになっていただきたいという理念から生まれたものです。

その1つ、1933年に創立した「めぐみ幼稚園」は、2006年に園舎を移転し、それから「食育」をコンセプトに運営しています。子どもの身体と心に良い給食を実現するために、地産地消で旬の食材から手作りし、化学調味料や加工食品を使わない独自の献立にこだわってきました。しかしケチャップなどの調味料まで手作りしますので、300名を超える園児のための調理にはたいへんな手間がかかります。美味しくて安全な手作りの給食を、何とか効率的に実現できないか。その思いからクックチルを導入したのです。

また、カルチャーセンター「暮らしの学校」内にある「カフェくるみ」には、受講生がよく来店されます。その手作りランチがとても好評でした。お弁当にしてほしいというご要望を多くいただきました。その結果、食数が120食まで増えることになり、調理スタッフは朝の4時から準備をせざるをえなくなりました。この勤務体制を改善するために「カフェくるみ」でもクックチルを導入しました。同時にセントラルキッチンである「クックチルセンター」を開設し、「めぐみ幼稚園」と「カフェくるみ」の2カ所に提供することで、作業効率を一挙に高めたのです。

02. クックチルを成功させる「レシピ」と「作業オペレーション」

──クックチルは難しいという話を耳にしますが、実際はどうなのでしょう。

尾崎

確かに一部には、クックチルを上手に運用するのは難しいと指摘する方もいます。しかしコツさえつかめば大丈夫です。それには2つの大きなポイントがあります。

カフェくるみのランチメニュー

まず「レシピ」作りです。クックチルとは、加熱調理後の食材を急速冷却して低温状態で保存し、再加熱して提供するシステムです。つまり料理を提供する現場で必ず再加熱するのですが、クックチルのセントラルキッチンからは現場が見えないため、つい調理の最終工程まで仕上げてしまいがちです。冷却する前の加熱をどこで止めるかという、最適な時間管理に基づくレシピが必要になるわけです。

めぐみ幼稚園の給食メニュー

またクックチルを導入すると、それまでの献立の数を減らさなければいけない、あるいは献立を変えなければならないという誤解もあるようです。これも間違っています。当グループの「めぐみ幼稚園」では以前と同様、毎日異なる献立ですし、幼稚園とは別の献立で「カフェくるみ」のランチとお弁当を提供しています。つまり、多様な献立を前提に、下処理と加熱時間をクックチル独自のレシピとして蓄積しています。

──調理作業の段取りも、大きく変わりそうですね。

尾崎

はい。クックチルを成功させる2つ目のポイントが、まさに「作業オペレーション」の組み立てです。当社のクックチルセンターでは、料理が提供される4日前に食材を搬入し、3日前に下処理、そして2日前に調理して冷却保存します。つまり以前のように1つの献立を下処理から盛り付けまで順番に作業するのではなく、3日間の作業内容を分業化して同時並行で進めるため、作業が大幅に平準化され、時間短縮が実現するのです。

ただし、厳密な作業指示書が必要になります。誰が、いつ、何をするのかをしっかりと決めないと、オペレーションがうまく回りません。10数品目の献立について、下処理・加熱調理・再加熱を分業して行うために、従来の調理工程とはまったく異なる作業の組み立てと、指示書が必要になります。

一般的に、クックチルに対応したレシピ・作業オペレーションを作りスタートしても、レシピ・オペレーションの修正・改善を繰り返し安定するまでには、3カ月から半年の期間が必要です。そこを乗り越えれば、自施設のレシピ・作業の全体像と自分の役割を把握した調理スタッフが自発的に動けるようになり、調理の大幅な効率化が実現します。

服部グループ内にお客様となる「カフェくるみ」「めぐみ幼稚園」があります。そのお客様をしあわせにするシステムがクックチルでありクックチルセンターでした。そこでは今現在も日々、美味しい食事・安全な食事提供をするために試行錯誤をしています。

その日々の作業が、他のお客様のお手伝いになれば良いと思います。

03. クックチルを成功させる十分な経験

──実際にクックチルを導入する時、留意すべき点は何でしょうか?

尾崎

まずクックチルの厨房に求められる要件を十分に検討することです。たとえば、提供する食事は昼食だけか、朝昼晩の3食か。どんな献立を計画しているのか。何人のスタッフでオペレーションしようとしているのか。将来は在宅の方向けに配食サービスも行う計画があるのか。余分な機器は本当に邪魔なので、最小限必要なものは何なのか……。このように運営体制や将来の展望までを確実に設計担当者に伝える必要があります。

同時に、クックチル導入後の運用についても、しっかり準備することが重要です。先ほども指摘した「レシピ」の開発と「作業オペレーション」の仕組みづくりに加えて、適切な「衛生管理」を実現するための対策もしっかりと検討しておくことが大切です。

──そのために、服部工業ではどのようなサポートをしていますか?

尾崎

当社は、回転釜やスチコンなどの業務用厨房機器というハードだけではなく、クックチルを成功させるためのすべての経験をお話しし、お見せしています。病院・福祉施設・学校などの関係者の方々から「厨房機器は購入した、スタッフも揃えた、でもうまくいかない」という相談をよくされるのですが、それを解決する経験が必要なのです。

当グループは、「めぐみ幼稚園」と「カフェくるみ」で実際にクックチルを導入・運用し、たいへんな試行錯誤のなかから獲得した経験があります。クックチルの膨大なレシピ、もっとも効率的な作業オペレーションと合理的な衛生管理手法、トラブルや不都合が発生したときの対処方法。これらの経験をお客さまに、ぜひご提供したいと思います。

また当グループのクックチルセンターでは、自社グループの製品だけではなく、お客さまがよく使われている他社製品も設置し、使い勝手やメンテナンス方法まで含めた幅広い運用ノウハウを蓄積しています。さらに当グループの営業担当はクックチルセンターで十分な研修を行い、厨房作業の大変さとクックチルの良さを体験することで、お客さまと同じ目線で課題の解決をするようにしています。調理スタッフの管理、献立レシピの開発、作業日程と作業指示書の作成まで、お客さまの立場に立ったご提案ができるのです。

病院・福祉施設・学校など、さまざまなお客さまの課題を解決するために、ぜひ当社のクックチルのソリューションをご活用いただければと思います。

「厨BO!」東京ガス業務用テストキッチン

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東京ガスの業務用テストキッチン「厨BO!YOKOHAMA」では、業務用機器や換気設備など、快適な厨房づくりについてご提案しています。ぜひお問い合わせください。
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