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オーナーシェフに聞く「独立開業への道」

徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで ⑭

野菜のおいしさを多くの人に届けたい。
かしこまらず、楽しく食事ができる
フレンチレストランを目指します。

レストラン Minet.
オーナーシェフ 峯岸昌昭 氏
武蔵野調理師専門学校卒業後、ホテル麹町会館を経て、上野ブラッスリーレカンにて高良康之シェフに師事。全日空ホテル、レストランFeuで従事した後、フランス料理文化センターの上級コースを通じて、フランス・シャニー「メゾン・ラムロワーズ★★★」、サンボネルフロワーの「レジス&ジャック・マルコン★★★」で研修。リヨンの「ル・ヌーヴィエーム・アール★★」では、ポワソンの部門シェフを経験 。帰国後は、長野県白馬村の「ラ・ネージュ東館」にて料理長に就任。2019年12月白金高輪に「Minet.」をオープン。

Part1 地方の豊かさを感じた、フランス修行時代

フレンチレストラン「ブラッスリーレカン」
での修行を通じ、渡仏を決意。

──料理人を志したきっかけを聞かせてください。

峯岸

高校時代は野球漬けでした。高校3年で野球部を引退した記念に、父に「全日空ホテル」のフレンチに連れて行ってもらい、その味に衝撃を受けました。もともと食べることは好きでしたが、この経験から作り手になることを決意し、武蔵野調理師専門学校に進学しました。

──フランスでの修行を意識したのはいつごろからですか?

峯岸

卒業後はフレンチのシェフを目指して、個店やホテル、結婚式場で修行しました。最初は「いつかフランスに行きたい」くらいの軽い気持ちでしたが、2002年「ブラッスリーレカン」のオープニングスタッフとして働いた際に、当時の料理長だった高良シェフや職場の先輩から刺激を受け、「日本でやっていくなら、本場のフランスを見なければだめだ。フランス人が作っている姿だったり、味だったり、仕事を見たい。そして自分の身をフランスに置いてみたい」と強く思うようになり、フランスでの修行を本格的に考えるようになりました。

「レストラン ラフィナージュ」 オーナーシェフ 高良康之氏

店名のMinet.(ミネ)は、峯岸シェフの昔からの愛称。フランス語では子猫を意味します。

──フランスではどんな経験をされましたか?

峯岸

2006年にフランス料理文化センター(FFCC)の上級コースに参加し、「メゾン・ラムロワーズ★★★」、「レジス&ジャック・マルコン★★★」をはじめとする星付きレストランやホテルで研修を受け、グランシェフたちの発想のすごさ、人間性のすばらしさを肌で感じました。

仕事は厳しく、フランス人料理人と毎日ケンカをするなど、いろいろありましたが、すべてが楽しくて苦労と考えたことはなかったです。レジス・マルコンシェフの店で働いていた時、オニオンスープを賄いで作ったところ、当時料理長を務めていたエリック・プラシェフから、「誰が作ったんだ?」と聞かれました。怒られるのかと思ったら、「美味しい」とすごく褒められ、未だに会うとその話をしてくれます。

──いったん帰国した後、再び渡仏されましたね

峯岸

はい。ワーキングホリデービザを取得し再度渡仏したときには、クリストフ・ルールシェフ率いる「ル・ヌーヴィエーム・アール★★」で魚部門シェフをまかされました。ルールシェフとは今でも交流があり、昨年来日した時も大阪まで会いに行き、一緒に居酒屋にも行きました。一緒に仕事をしたグランシェフたちは、たとえ自分のフランス語がつたなくても、ちゃんと仕事ぶりを見ていてくれていましたし、シェフが間違っていた時は、きちんと謝ってくれました。自分も仕事をする上で、シェフたちから学んだその姿勢は守りたいと思い、今も心がけています。

また、ほとんどが地方レストランでの研修だったので、生産者とのつながりや、地場食材の豊かさを感じられたことも大きな財産になりました。

店内は色味を抑えた落ち着いたインテリアで、シンプルで上質な空間。

Part2 長野県白馬村で鍛えたチーム統率力

素晴らしい素材に触れ、野菜作りに開眼。

──帰国後は独立開業に向けどんなキャリアを積みましたか?

峯岸

帰国後は数店舗で経験を積んだ後、お声がけ頂いた長野県白馬村の「ラ・ネージュ東館」で腕を磨き、1年半後には料理長に就任しました。当時は分からないことだらけで、色々と言われて大変でしたが、「チームを率いる」という新たなキャリアを積めたことは大変貴重な経験になりました。

また、日本でも機会があれば、地方で働いてみたいと思っていたので、その夢も叶いました。大自然に囲まれた長野県白馬村では、素晴らしい食材や漆器などに出会うことができましたし、休みの日は、会社の保有する畑で野菜を育てたりしながら過ごしました。

漆器やナイフは長野県とフランスで出会った職人の作品。

Part3 肩肘張らずに味わえるフレンチレストランを目指す

いつかは自分の育てた野菜で料理をつくり、
お客さまに喜んでもらいたい。

──新規開業に向け、店舗物件はどのように探しましたか?

峯岸

知人や東京ガスの厨房相談室に相談にのってもらいながら、物件を探しました。最初は東京の郊外で探していましたが、料理とともにお酒を楽しんでもらいたいという想いがあったので、そういった客層を考えると、徐々に都心での出店を目指すようになりました。

飯田橋に良さそうな居抜き物件を見つけたときには、厨房相談室に同行いただき内見をしました。残された厨房機器はそのまま使えましたが、自分の思い描く厨房をつくるにはガス容量が足りず、増設も難しいことが分かりました。自分では厨房機器やガス設備の状態など見分けが難しいので、同行し、アドバイス頂けたのはとても有難かったです。

今の物件は、前のオーナーとたまたま知り合い、移転を控えていると聞いて見せてもらったのですが、見た瞬間にここだ!と思い即決しました。白金高輪駅の近くでありながら、昔ながらの町工場跡や小さな洋品店が並ぶ商店街の中にあり、隠れ家的な雰囲気に惹かれました。

──お店のコンセプトを教えてください。

峯岸

店のコンセプトは、かしこまらず、親しく、楽しく食事できるフレンチレストランです。

メニューは長野県と北海道から取り寄せた野菜を中心に組み立てています。いまは、オープンしたばかりで、なかなか時間を作れませんが、いずれは店前のスペースを利用して、野菜やハーブを育てて収穫、提供し、お客さまに野菜の成長と店の成長を見ていただきたいと思います。

テーブルの上の木葉型の漆器や、無農薬で作られているほおずきジュースは、長野時代につながりのあった職人や生産者から仕入れたものです。また、壁面に飾っている「峯」の額装は、長野県でお世話になったシェフから開店祝いに頂いたもので、実は世界を舞台に活躍する長野県在中の名だたる書家の作品だと伺い大変驚きました。人とのつながりが今のお店を作っていると思います。

──Minet.オープンを迎えて、これからの課題などお聞かせください。

峯岸

オープンして感じたことは集客の難しさです。メイン通りから少し奥まった場所の地下一階に店があるので、人通りが少ない上、店の存在に気づいてもらうのが難しい。看板の出し方や広告を上手に利用して、少しずつお客さまを増やしていきたいと考えています。今後は、他のシェフとのコラボディナーなども企画していく予定です。

実は、フランスのランスで、最近2ツ星になった「ラシーヌ」の田中一行シェフと5月5日にコラボディナーを計画しています。田中シェフとはFFCC上級コースの同期の縁で、今からとても楽しみにしています。

長野県や北海道から取り寄せた野菜をふんだんに使用した料理。
レストラン Minet.
[所在地]
東京都港区白金3-9-8 スカーラ白金シティプラザB1
[TEL]
050-3476-6742
[営業時間]
18:00~23:00(L.O. 20:30)
[定休日]
火曜日・水曜日(不定休日あり)
[座席]
総座席16席
[URL]
https://ggtu300.gorp.jp

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