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厨房談義[第1回]  業務用厨房における衛生管理ノウハウ 〈概略編〉 「狭い厨房には狭いなりのノウハウがある 大切なのは正しい情報を手に入れ、実践すること」

ミナミアンドアソシエイツ 代表
南岳男

PROFILE
スカンジナビア航空、青山アンデルセン、エレクトロラックスジャパンを経て、1997年にミナミアンドアソシエイツを設立。フードサービス産業における業務用ファシリティのコンサルタントとして幅広く活躍。
日本HACCPトレーニングセンター・リードインストラクター/国際HACCP同盟・公認インストラクター/FCSI(国際フードサービスコンサルタント協会)日本地区代表。

食の衛生管理というと、特殊なマネジメントや難しいマニュアルを思い浮かべがち。「うちは厨房が狭いし、スタッフも限られているから…」と、半ばあきらめている方もいるかもしれません。しかし本来、衛生管理は、厨房の規模や事情に合わせて実践できるはず。今回はこうした観点から、フードサービス・ファシリティの専門家・南岳男氏に「業務用厨房における衛生管理」について伺いました。

──多くの厨房がかかえる現状の問題点とは、どういったものでしょう?

 現状の問題として言えるのは情報の不足です。多くの経営者やオペレーターが「保健所の講習を一度受けた」程度の知識に留まってしまっています。具体的な手法があいまいなため、カンや経験による伝達だけが頼りになってしまい、場合によっては過った方法が一人歩きしていますね。
狭いからこそ接触汚染のリスクは高いのです。正しい知識の収得のために時々専門家の話を聞くことです。

しばしば誤解されることですが、衛生管理は新しい施設や最新機器を導入しなければ実現できないものではありません。「厨房が狭いから」というのは理由にならない。要はいかに正しい情報を得て実行するかなんです。

Subject1 原材料の取り扱い方

原材料の段階で
気をつけるべきは接触汚染

──材料を取り扱うときには、何に注意をすればよいのですか?

 原材料の段階で最も注意しなければいけないのは、食材どうしが触れあうことによっておきる「接触汚染」です。食材は、野菜・肉・魚と分類して別々に容器に入れて管理し、仕入れ日をボールペンなどで書いておくとよいでしょう。下処理時のまな板や布巾などの色分けも取り入れたいものです。

冷蔵庫の中は、新しいものを奥へ古いものは手前へ。すでに調理したものは、フタ付きの容器に入れて冷蔵庫の上段に。冷蔵庫は下に冷気が溜まります。すぐに使うものは最上部に入れるようにしましょう。

仕入れ先にも厳しい目を

 原材料がフレッシュであることは大前提です。業者が流通の過程の温度管理を誤ると細菌が異常発生します。細菌によっては毒素を発生します。この場合、たとえ仕入れ後の取り扱いが適切でも、事故が起こります。フードビジネスのオーナーにとって、仕入れ業者の流通時の温度管理、食材の入っている容器の清潔度といった安全確認は、必須の経営努力だと思います。

Subject2 厨房のオペレーション

スタンダードな服装の意味を
問い直してほしい

──厨房に立つスタッフが気をつけるべきポイントを教えてください。

 ユニフォームは毎日交換して洗濯しなければなりません。また、最近洋食のシェフの間で、帽子を被らない傾向があるのが気になります。人間の毛髪は健康な人でも50~60本は抜け落ちます。テレビの影響と思いますが、なぜスタンダードなスタイルが定着したのか、その意味をもう一度問い直してほしいと思います。言うまでもないことですが火や油、熱湯から身を守ることと、毛髪やフケが食品に落ちるのを防ぐためです。プロ野球選手でヘルメットを被らない人はいないでしょう(笑)?

欧米のシェフに学んだ
徹底した手洗い

 私がフードビジネスに目ざめた若い頃、欧米のシェフたちは手の平のシワ1本から二の腕まで、徹底的に洗うことを教えてくれました。手洗いを徹底させるのにもコツがあります。手洗い場には40℃以上のお湯がたえず供給されていることが望ましいですね。冷水では冬場に手洗いをさぼるスタッフが増えますから。

手を拭くのにはペーパータオルを常備するとよいでしょう。最近しばしば見かける温風ジェット乾燥機は、順番待ちに時間がかかり、大人数の厨房には向いていません。乾燥するまで待てずに残った水分をユニフォームで拭いているのをよく目にします。

道具には何でも
メリットとデメリットがある

 道具には何でもメリットとデメリットがあります。使い捨て手袋は、手の切り傷が直接食材に触れるのを防ぎ、ブドウ球菌などの汚染には大変効果的です。しかし反面、手袋をした安心感から手洗いがおろそかになりがち。手袋をする前に自分の手をよく洗い、手袋をした手も自分の手と同じように洗うことが大切です。

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