1. 最適厨房ホーム
  2. 厨房談義トップ
  3. 厨房談義[第1回]

厨房談義[第1回]  業務用厨房における衛生管理ノウハウ 〈概略編〉 「狭い厨房には狭いなりのノウハウがある 大切なのは正しい情報を手に入れ、実践すること」

ミナミアンドアソシエイツ 代表
南岳男

Subject3 清掃のノウハウ

──清掃のときには、どういった点に気をつければよいのでしょう?

バイオフィルムを取り除く

 まな板や作業台には、食材から出た炭水化物や油、たんぱく質などが付着します。このうち、油は冷水で落ちません。残った油に細菌のえさとなる炭水化物がくっつき、さらに油煙が付くと、ちょうど雑菌をコーティングしたような層ができてしまう。この層をバイオフィルムと呼んでいます。調理器具を洗うときは、必ず洗剤を含んだ温水で行います。バイオフィルムを破らないと、オゾン水や電解水がはじかれて細菌を殺すことはできません。

洗わなくてよい厨房など
ありません

 どんな厨房でも床は汚れます。汚れた床にはバイオフィルムが固着して細菌の温床になりますから、洗剤を含んだ温水での洗浄は不可欠です。ドライ厨房とは床が年中カラカラに乾いた厨房のことではありません。作業後は最適な洗剤を使って適切に洗浄を行い、翌朝には床が乾いている状態を保つ。大切なのは床に不必要な水をまいたりせず、床に落ちた残菜はすみやかに取り除き、床を常に乾いた状態に保つことなのです。

Subject4 調理のノウハウ

──衛生面から見た調理のコツを教えてください。

食材や細菌の特徴を知れば
調理の方法もわかる

 細菌は冷却しても死にません。細菌を死滅させるには加熱が最も有効です。安全な加熱温度管理の基準値は食材の中心温度(芯温)が70~75℃に達することで菌が死滅するか、安全な許容範囲内になることであり、国が推奨するのは75℃1分間。しかしこれは料理によっては旨味を損なってしまい、品質を追求するレストランではメニューによって実現が難しい基準です。ここで重要なのは細菌と食材の性質を知ること。

大抵の場合、細菌は表面に付着しています。ステーキなど丸ごとの食材なら、中心部に細菌がいることはあり得ませんから(その場合は明らかに腐っていて食べられたものではありません)、表面から2~3mmが高熱で調理されていれば問題はありません。ハンバーグなどは細菌のついた肉片が中心部に入りこむことが考えられるので、芯温を75℃としているのです。

対策と傾向を知るための
情報収集を

 食中毒事故にも流行り廃りがあります。鶏が保菌者となって生卵からの汚染が問題となったサルモネラ・エンティリティデス菌は、養鶏業者や流通業者の取り組みによって改善されてきています。

一方、牡蠣や貝類に付着する小型球状ウイルス(SRSV)は、昨年の食品事故の6~7割を占めました。気をつけなければいけないのは、酢ガキでも事故は発生しているという点です。魚介類は電解水の流水で洗うと殺菌効果があり、臭いも残らなくて安全です。

こうした食品事故に関する新しい情報は、フードサービスに関する業界団体や協会を通じて常に発信されていますから、有効活用してほしいと思います。

厨房談義トップへ戻る