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厨房談義[第2回]  業務用厨房における衛生管理ノウハウ 〈実践編〉 「夏場の食中毒事故を未然に防ぐ! いますぐ取り入れたい衛生対策のキーポイント」

ミナミアンドアソシエイツ 代表
南岳男

PROFILE
スカンジナビア航空、青山アンデルセン、エレクトロラックスジャパンを経て、1997年にミナミアンドアソシエイツを設立。フードサービス産業における業務用ファシリティのコンサルタントとして幅広く活躍。
日本HACCPトレーニングセンター・リードインストラクター/国際HACCP同盟・公認インストラクター/FCSI(国際フードサービスコンサルタント協会)日本地区代表。

温暖湿潤な日本の夏は、食中毒事故がもっとも起こりやすい季節です。厨房談義第2回目の今回は、前回に引き続き、フード・ファシリティ・コンサルタントの南岳男氏に、「夏場に向けて、いますぐ取り入れたい衛生対策のポイント」をお聞きしました。

──夏場に向けて、調理の担当者が特に気をつけるべきポイントは何でしょうか。

Subject1 生魚は特に取扱いの注意を

 梅雨から盛夏にかけての季節は、温度の上昇に比例して、衛生上のリスクが増える季節です。特に和食など、生魚貝類を多く扱う日本の食文化では、腸炎ビブリオ菌のリスクが大変高いことを知っておかなければなりません。腸炎ビブリオ菌は、海水が20~22℃に上昇することで急激に増加します。この時期、河川や沿岸には大量の大腸菌が増殖して魚介類を汚染します。

生魚の取扱いポイント

1 エラ・内蔵を流水でよくすすぐこと
腸炎ビブリオ菌等が潜んでいるのは、身の部分ではなく、エラや内蔵の部分です。海水で繁殖する菌は、真水で死ぬので、下処理のときに、水道の流水で良くすすぐことが大切です。

2 下処理のときは、周囲を汚さない
せっかく下処理を入念に行っても、流水の飛沫が周囲に飛んで汚染しては台無しです。生魚の処理をする時は、サラダ用の生野菜など、お客様に生で提供する食材が近くにないかどうか、注意しましょう。この場で使用するまな板やボウル等の消毒の不完全が思わぬ事故につながります、布巾の使い分けと消毒も徹底して管理しましょう。

Subject2 温度管理は徹底して行うこと

細菌が増殖する危険温度帯は、世界的な基準で5~65℃です。34~35℃が、細菌にとって最も快適、すなわち人間にとって最も危険な温度です。調理後の食品の保管では、この危険温度帯の温度と時間の管理を徹底することです。室温に調理済み食品を2時間以上さらすことは、特にこの時期は最も危険なことです。

温度管理の基本

1 加熱は、食材の中心温度が75℃1分以上経過を必ず確認する。
温度計(温度センサー)は、衛生管理の必需品です。ベテランの調理人であれば、経験値で判ることかもしれませんが、温度管理は誰でも簡単にできるようにしなければなりません。加熱経過が記録される機械の導入も大切なことです。調理済みの食品で直に提供しない物は、速やかに粗熱を取り、個別の容器に密閉します。

急速冷却機がない場合の粗熱のとりかた

  1. 調理済みの食品を小分けにして清潔なタッパー密閉するかビニール袋に入れる。
  2. 氷水を張ったボウルか、よく洗浄したシンクに浮かべ、粗熱を取る。氷は随時追加すること。
  3. ビニール袋に入れた食品の温度計測は、軽くもんで中の温度を均一にして、温度計をサンドイッチ状態にして計測します。目安は10℃です。
  4. 温度が下がったら袋やタッパ-の周囲の水をふき取り、日時を書いたシール(布製のガムテープでも良い)を貼る。

2 その日に使いこなせない食材は、取り分けて保管。
原材料、下処理済み、調理済みの食品はそれぞれ専用の容器に分けて保管します。また、外部より運び込まれたダンボール箱や発泡スチロールの箱をそのまま冷蔵庫に入れることは汚染の拡散につながり、汚染リスクが高くなるので至急改善すること。

3 冷蔵庫の温度は、最低5℃以下を保つ。中身はこまめにチェックする。
冷蔵庫の庫内温度は8~10℃で満足してはいけません。最低でも5℃以下、3~0℃の状態を保つのがベストです。また、冷蔵庫の中身は常にチェックし、賞味期限切れの食品やいつ作ったか分からないような食品がないようにしましょう。特に見落としやすいコールドテーブルのいちばん奥に残っているものなどは要注意です。

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