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厨房談義[第3回] ヨーロッパに学ぶ、理想の給食厨房 「一流企業の給食厨房施設の背景にある従業員のモチベーションを維持する企業戦略とは?」

ミナミアンドアソシエイツ 代表
南岳男

PROFILE
スカンジナビア航空、青山アンデルセン、エレクトロラックスジャパンを経て、1997年にミナミアンドアソシエイツを設立。フードサービス産業における業務用ファシリティのコンサルタントとして幅広く活躍。
日本HACCPトレーニングセンター・リードインストラクター/国際HACCP同盟・公認インストラクター/FCSI(国際フードサービスコンサルタント協会)日本地区代表。

ヨーロッパの一流企業には、その企業にふさわしい従業員食堂が存在します。そこでは、企業戦略の中で食堂を従業員のモチベーションを維持するための重要な要素と位置づけています。クオリティの高い料理を提供するためには、当然ながら、レベルの高い厨房が不可欠です。
厨房談義第3回は、ヨーロッパの給食事情にも詳しい南岳男氏に、ヨーロッパの給食施設の厨房から何を学ぶかを伺いました。

Subject1 厨房施設への取り組み

──ヨーロッパの企業は、給食環境についてどのような考えを持っているのでしょうか?

 私はヨーロッパ各地で、多数の企業の給食施設を見る機会を得てきました。そこで感じたのは、企業の従業員に対する考え方が明確だということです。

優秀な人材を確保するためには、快適な従業員食堂がなければならない。そして、それが従業員のモチベーションを高めることにつながる。従業員食堂を単に昼食を提供するだけの場所ではなく、従業員が休憩をしたり、ディスカッションをしたりする場所として、重要視しています。そのために求められる環境をつくろうと考えています。

──ヨーロッパの厨房施設の進化にはめざましいものがありますが、日本の現状は、いかがでしょうか?

 日本の企業で、そこまで明確な姿勢をもった従業員食堂を持つところは、まだまだ少ないと思います。ヨーロッパでは、一般のレストランとまったく遜色のない施設を持ち、クオリティの高い料理を提供する給食施設が多数生まれています。そして、そこには当然ながらクオリティの高い厨房が存在しているのです。

Subject2 一流シェフを雇用

客席も実にアメニティが高い。写真はフランスを代表する企業ルイ・ヴィトン本社の社員食堂。

──給食施設のクオリティ向上を図るために、ソフト面ではどのような工夫がなされているのでしょうか?

 かつてはヨーロッパでも一流のシェフが従業員食堂で働くというケースはほとんどありませんでした。しかし近年は様変わりして、ホテルやレストランの経験豊かなシェフが、従業員食堂に来てくれるようになりました。今、ヨーロッパの従業員食堂で、一流の経歴を持つシェフを雇用する動きが顕著になっています。企業側がそうした技術をもったシェフを雇用することが、従業員食堂のレベルアップをするために欠かせないことだと考えるようになったのです。

──シェフに求められている食以外の役割とは?

 そうですね。企業ではシェフたちが腕をふるえる場所を用意しています。例えば、一般の食堂に加えて、幹部社員やゲストを迎えるためのVIP食堂的なものを作っています。そこでは高級レストランとまったく遜色のない料理が提供されています。

また、一般の食堂でもシェフは厨房に入りっぱなしではなく、利用者の前に出ていって、気軽に会話をしてコミュニケーションをとります。料理の話とか、健康管理のためにどんな食事をしたらいいかなど、利用者に情報を与える。食堂にくることで、お腹を満たすだけではない、楽しみを与えるというわけです。

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