厨房談義[第3回] ヨーロッパに学ぶ、理想の給食厨房 「一流企業の給食厨房施設の背景にある従業員のモチベーションを維持する企業戦略とは?」
ミナミアンドアソシエイツ 代表
南岳男
──どのような調理システムを導入しているのか教えていただけますか? 南 ヨーロッパの従業員食堂の厨房を見て気がつくのは、アウトソーシングを非常にうまく活用していることです。例えば、カット野菜や、真空低温調理で作られたテリーヌ、ムース等のオードブル関係です。ほとんどの施設でクックチルシステム採用が図られていますが、真空低温システムを現場で行うケースはほとんどありません。 真空調理は栄養面などでメリットの多い調理法ですが、施設での衛生管理が万全でなければ嫌気性細菌のリスクが高いため、危機管理面からHACCP管理が徹底している専門工場で作らせた製品を採用しています。クックチルシステムで日常作業の合理化をはかり、シェフ達が力を発揮できる場を上手に演出しています。 ──ハイテクな調理機器を実感体験するには、どこに行けばよいのでしょうか? 南 ヨーロッパでアウトソーシングやクックチルが発達した背景には、ハイテクを駆使した調理機器の開発があります。それぞれの食材に対する最適な加熱調理とクックチル食品の再加熱を的確に大量に行う事が可能になったからです。 |
──厨房作りのポイントを教えていただけますか? 南 厨房に求められるのは作業のしやすさと、衛生管理の徹底です。いずれも厨房設計と機器をどう組み合わせるかで決まる部分です。 衛生管理の基本は清掃にあります。HACCPの導入ということがよく話に出ますが、厨房の掃除がきちんとできていることが大前提です。ドライ厨房という言葉は、日本独特で多くの誤解があります。作業中は食材や水で床が濡れる事は当たり前です。できるだけ床を汚さず作業する事が前提ですが、汚れたら直ちに清掃し、「キープドライ」を心がける事なのです。
作業台の下や床の洗浄化には、キチンとした清掃のシステムを構築しなければなりません。欧米のキッチンは清掃に関しては徹底したシステムが構築されています。オール電化がHACCPの近道というのも短絡的で正しくはありません。例えば、ガス式のケトルでも機器表面温度を快適に保つタイプも登場しています。ガス厨房であっても排気・排熱がきちんとできれば、環境のよい厨房はつくれるのです。 (柴田書店「月刊食堂2004年7月号」より転載) |
- このページの関連記事はこちら