1. 最適厨房ホーム
  2. 厨房談義トップ
  3. 厨房談義[第4回]

厨房談義[第4回] 栄養士が見る、学校給食の現状 「学校給食の現場では今、どんな地殻変動が起こっているのだろうか?」

東京都世田谷区立東深沢小学校
栄養士 関はる子

PROFILE
東京農業大学卒。昭和46年、世田谷区の小学校に栄養士として赴任。以来、センターや小中学校の給食調理に携わり現在に至る。
著書に「タローと作る給食レシピ(第1集、第2集)」(全国学校給食協会出版)、「料理その由来」(健学社出版)、「食べ物百科」(新樹社)など多数。月刊誌「学校給食」に連載を持つなど、幅広く活躍している。

昭和29年「学校給食法」が成立。そして昭和43年には学習指導要領の改訂によって給食は教育活動の一環となり、学校給食は子供達の食育に大きく貢献してきました。給食室から流れてくる美味しいにおいに、給食の時間が待ち遠しかった思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
これまでは、栄養士の立てた献立を調理師が給食室で調理するという「直営・自校方式」(※1)が主流でしたが、平成15年には277校(※2)が「民間委託方式」となり、給食形態は急速に民間委託の方向に進んでいるようです。
34年のご経験をお持ちの栄養士の関はる子先生に、転換期にある学校給食の現場の様子をお伺いしました。

※1) 給食は、運営面で「直営」と「民間委託」に、調理面で「自校」と「センター」に分けられる。
※2) 参考資料「東京都における学校給食の実態(東京都の小学校の民間委託数字)」)

Subject1 「直営・自校」方式から「民間委託」方式へ ~東深沢小学校の場合~

──東深沢小学校の給食は、2004年4月から民間委託になったそうですが、それまでとどんな点が変わりましたか?

 幸いなことに、調理師の方達が民間雇用になっただけで、栄養士と仕入れ先に関しては今までと変わりません。これまで通り私がレシピを作り、食材の発注先を決めていますし、調理も学校の調理場を使う自校方式をとっています。でも将来的には民間に全て任せる方向に行くように感じます。そうなっても良い材料を使って美味しい物を作る、という民間会社が、必ず出てくると思いますよ。

──民間委託になるにあたって、不安はありましたか?

 民間委託になると決まったのが2003年の8月。自分が退職するまで、よもやそんなシステムになるとは思いもしなかったので、青天の霹靂でした。それまで民間委託の問題点しか耳に入ってきませんでしたので、戦々恐々としてその日を迎えました(笑)。民間の新しい調理師さんとの引継など、準備期間がほとんどなくスタートしたので、最初は非常に不安でした。でも結論から言えば、結局は人と人とのつながり。私のポリシーや思いをしっかりと伝えれば大丈夫だと、やり始めてすぐわかりました。

Subject2 民間委託後の問題点

関

──特筆すべきトラブルなどありましたら、教えていただけますか?

 学校給食には、それぞれの学校の味というものがあるのです。直営の調理師ですと同じ学校で長く働くことが多いので、その学校の味を作ることができますが、民間の場合は会社の都合で短期間で調理師が変わることが多いので、それは難しい。

ある時、2カ月ほどで突然調理師の異動があったものですから、その時ばかりは私も珍しく怒りました。「給食の味は1日でできるものではない。給食はそこの学校の子供達や地域の状態が作り上げていくもの。短期の異動は絶対やめてほしい!」と。民間の人達も学校給食に参画するなら、その特質をきちんと踏まえていかないといい仕事はできませんよ、と会社側に注文をつけました。

──調理師さん達と子供達の関係は?

 1年生は1クラス40人近い人数なので、先生だけで配食するのは大変なんです。でも、調理師さん達が毎日配膳のお手伝いをしてくださるので、とても助かっています。子供達も感謝してくれて、感謝のお手紙を書いたり、小松菜取りに行ったので調理師さん達にどうぞ、と持ってきてくれたり。調理師さん達と子供達とのつながりができました。そういう意味では、民間委託だから子供達とのつながりがなくなる、ということはないと思います。また、作る人の顔が見えると、残すともったいない、作った人に悪いな、という気持ちが芽生えるせいか、子供達の残菜が少なくなるんです。

今後の栄養士の役割については、次ページへ!