厨房談義[第4回] 栄養士が見る、学校給食の現状 「学校給食の現場では今、どんな地殻変動が起こっているのだろうか?」
東京都世田谷区立東深沢小学校
栄養士 関はる子
──民間委託になって、栄養士としての仕事の内容に変化がありましたか? 関 私は毎朝のミーティングの時、学校で今起きていることを話すようにしています。例えば、運動会の練習で疲れているから残菜が多いとか、子供が荒れていたずらが多い時は遠慮なく怒っていいからね、など、常に学校の状況を話してあげます。そうすると、作っている人にも子供の顔が見えてくるでしょう? 栄養士は献立を立てるだけではなくて、調理師、委託会社の管理職、学校の間に立って、学校給食を円滑に回していく役目を担っていると思います。いわばプロデュース役としての栄養士、これが民間委託になった際に求められるスキルのひとつだと思います。 ──美味しい給食を提供するために、調理師さん達との関わりはどのように工夫なさっていますか? 関 料理を作るということは機械的なことではありませんから、作る人達の気持ちが一つにならないと、美味しい給食はできません。 私が最初に担当した学校は、今の時代と比べたら調理器具などものすごく悪かった。でも調理師さん達と試行錯誤しながら気持ちを一つにして、美味しい物を出したいね、と話し合っていました。その後多くの調理師さん達と関わり、いろんな苦労もありましたが、気持ちを一つにすることが良い仕事につながると、つくづく思います。民間だからできない、ずさんだろう、わからないだろう、といった先入観を持ってはいけません。まずは学校給食とはどういうものか、を理解してもらうことに努め、意識や調理の仕方など、ミーティングや実際の業務で確認して会得してもらいます。 昨年、ガススチームコンベクションオーブンが入って、レシピが一挙に広がりました。きれいにできるし、ロスもない。もう宝物です! こんなふうに設備もよければ、実務的にも、もっといい仕事ができると思います。 |
──「タローのレシピ」等、子供が喜ぶレシピ作りを実践なさっていますね。レシピのアイデアはどこから? 関 タローのレシピ、あれはもともと卒業生に給食の人気レシピを毎年あげていたものをまとめたものです。「アレ美味しかったから、教えて」と聞きに来るので、じゃあ、レシピを作ってプレゼントしようと。 「お家でこういうのを作ったからやってみて!」という子供達からのリクエストを参考にして、レシピを作ることもあります。今の時期は6年生が最後の給食になるので、6年生から一番食べたい物を募り、作ります。「これはうまいねえ! ほんとにうまいね!」の子供達のその一言で、あー、この仕事をやっていて良かった、と心から思いますね。 ──教育の一環として給食が位置づけられていますが、これからの学校給食に望むことはどんなことでしょうか? まずは、給食時間の確保です。時間がなくて残してしまう、というお子さんもいます。デザートを残した子に「キライなの?」と聞くと「時間がなくて食べられなかった」と言うのです。そんな時は、いけないとわかっていても、「こっちに来て食べていいよ」とカーテンの陰で食べさせちゃうんですよ(笑)。 学校給食だけでなく食について思うことは、生きることは食べること。それを子供達がしっかりと意識して成長していって欲しい。そのための手だてを、私達大人がしていかなければいけないと思っています。 |
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