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厨房談義[第6回] 見せる厨房設計 「オープンキッチンを成功させるためのプランニングのポイント」

フードビジネスコンサルタント
塚本貞省

PROFILE
ツカモト・アンド・アソーシエイツ株式会社代表取締役
フードビジネスコンサルタント業

日本のフードビジネスは、東京オリンピック以降急成長を遂げ、今やビッグマーケットに発展しています。その基本にあるのは、おいしい食を追求し提供する__この命題を実現させるにふさわしいキッチンのデザイン・設計に携わっていらっしゃるフードビジネスコンサルタント・塚本氏。長年のキャリアと実績をお持ちの塚本氏にここ数年の流行となっているオープンキッチンについてお話を伺いました。

Subject1 クローズドキッチンからオープンキッチンへ

──オープンキッチンを数々手掛けていらっしゃいますが、最近の事例を教えていただけますか?

塚本 乃木坂のフレンチレストランFeu、メトロポリタンホテルのコーヒーショップ(クロスダイン)、神戸ポートピアホテル(SOCO)、芦屋の山の手に開店したリストランテ・ヒロ、その他いろいろありますが、多くはオープンキッチンスタイルをとっています。
数年前に大手町の社員食堂の設計をお手伝いしましたが、社員食堂にしては珍しくフルオープンにしました。バックのキッチンとサービングエリアの間に冷蔵庫、ウオーマーを置くパススルーのタイプはもうやめにして、フルに開放しよう、と。このタイプは実は、私が提案してやって来たスタイルなんですが、どうも、この方法は料理のシズル感やスピード感、サービスの点で劣るんです。中華でガシガシと鍋をあおって調理の臨場感を演出し、ウオーマーに置きかえるのもまどろこしいので、鍋のままどーんと置いて、さあとって下さい!っていう方式はどうか、という提案をしました。さすがにそのまま実現はしませんでしたが、普通のラインと中華のラインの両方を入れてフルオープンとするプランになりました。

塚本

──キッチンをオープン化するのは、どういう理由からでしょうか。

塚本 日本の場合、スペースがないですからね。クローズドスタイルにして間にスクリーンなどを入れてしまうとスペースをとるということもあり、オープンキッチンの方がスペースを上手に使えます。また、サービス動線を短くする、働いている人の緊張感を維持するなど、さまざまな要因があって、結局オープンキッチンに行き着くのです。初めからオープンキッチンにしようと、意識してやっているわけではありません。

Subject2 オープンキッチンの現状は

──キッチンを見せて演出し、アピールするお店が増える傾向にありますね。

塚本 確かに人目を惹くためにキッチンをオープン化したデザイン優先の店も多くなりました。内装も著名なデザイナーにデザインしてもらって、演出も凝っている、おいしい料理でサービスもかっこよくやっているし、値段もそんなに高くない。ところが人気が伸びない、活気がなくなっている店はたくさんあります。
それはキッチンがうまく機能していないからです。フードサービスのデザインというのは、機能やサービス動線を考えた上にデザインや演出が成り立つもので、奇をてらった店は、話題になっても長続きしません。店の雰囲気がなんとなくまとまらない、ダイニングでの食事中の会話もノリが悪い、どうも気分がのらない、というのをお客様は肌で感じるんですね。飲食業は投資回収に時間のかかるビジネスですから、10年以上の長いスパンで売上げを保証できるようなデザインや設計をするべきだと思います。

──キッチンから発する雰囲気が、客足にまで反映するということでしょうか。

塚本

塚本 そうです。本来はオープンであってもクローズドであっても、ごくさりげなく無駄のない動きができるキッチンの設計になっていなくてはいけません。
例えば、ステーキの付け合わせにフレンチフライやベークドポテトを添えるとしたら、ブロイラーやグリルにフライヤーやオーブンが隣接して置かれるべきですが、調理ラインを考慮して設計していなくて、器材がばらばらに配置されていたりします。そのため、繁忙時に作業がスムーズにいかず、調理と盛り付けのタイミングが合わず、お互いにイライラ。キッチンでのストレスが皿にのってテーブルに出てくることになります。コックやサービスをする人のストレスは、必ずお客様に伝わってお店の営業に影響します。

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