厨房談義[第8回] 外食産業を担う料理人の育成について語る 「技術の研鑽だけでなく、食べ歩きで舌を鍛えることも大事」
学校法人 新宿学園 新宿調理師専門学校
西洋料理 主任教員/志田 由彦 氏
学校法人 織田学園 織田調理師専門学校
副校長/石田 稔 氏
変化の激しい外食産業界からの要望に応え、調理のプロを育成する調理師専門学校の教師たち。新宿調理師専門学校・西洋料理主任教員の志田由彦氏と織田調理師専門学校・副校長の石田稔氏に、教育現場で学生に伝えているメッセージや業界の抱える問題点等を語っていただきました。
──将来の料理人を育てる上で心がけていることは何でしょうか。 志田 私の学校では、社会で役に立つ人材を育成することを主眼において、包丁の扱い方、基本の切り方、フライパンの振り方といった料理人としての技術は徹底的に教えています。入社して1年目の人間は現場でどんなことをしていて、学生の間に何をしておいたらいいのか、常に情報を取り入れた上で、就職して即戦力になれるような教育を行っています。 ──料理人は「人材不足」の傾向にありますが、就職先はどういう人材を求めているのでしょうか。 志田 以前は面接試験においても「将来、何をやりたいのか」が問われていたと思うのですが、近年は即戦力として「何ができるのか」を求められる傾向にあります。一部のホテルでは、面接の際にオムレツを焼く実技試験があったりもします。技術を磨くのは当然ですが、フランス語を話せるようにするとか、有名なシェフの名前を知っているなど、短期間で身につけられるアピールポイントも習得させ、面接で意欲を見せるポイントになればと考えています。 |
──技術向上のために学生のモチベーションを高め、工夫していることはありますか。 志田 やる気のある学生に向けて、夜8時まで調理実習室の調理台を開放しています。また、授業内の20分間に課題を出して、時間を計って競争させたりもします。人と比較することで自分の実力を自覚し「このままではいけない」という気持ちが芽生えてくるのです。 石田 まず料理を好きになることが一番大事ですね。机に向かうだけが勉強ではなく、食べ歩きも勉強だよ、と話しています。学校では技術は教えられても、味のつけ方は人それぞれの感性と食体験に関わってきますからね。食べ歩きも、できあいの料理を提供している店ばかりではなく、小さな店でも手作りでやっている店を見つけて、味や作り方を研究し、いろいろなものを食べて舌を鍛え、肥えさせることが必要です。 |