厨房談義[第10回] 調理技術の向上と教育について語る 「社会に貢献できる調理人の育成をめざす」
学校法人 服部学園 服部栄養専門学校
調理技術部西洋料理 主席教師 佐藤月彦氏
学校法人井上学園 東京多摩調理製菓専門学校
進路指導課長 東保男氏
──火加減と調理の関係はどのように教えていますか。 佐藤 ガス式の機器で真空調理を教えています。基本的にはこのくらいの火力の強さでこういうふうにして、と教えています。また、1年制の卒業試験はオムレツです。ガスを使用し、鉄のフライパンでオムレツを作るためには瞬間的判断力、火加減、鍋の操作などさまざまな技術が必要です。ちなみに2年制の卒業試験は専門調理師試験の課題と同じ、鶏肉のオレンジソースです。 ──学生に持ってもらいたい料理人としてのマインドは? 佐藤 調理の現場においては「無理です」「できません」ではなく、「はい」「できます」ということが大事だと教えています。しかし「できる」ためにはあらゆる知識が必要です。料理だけでなくテーブルセッティング、ライティング、グラス、皿の知識も必要です。料理長になればお客様とお話することもあるでしょう。新聞や雑誌を読んで時事についても詳しくないといけません。あらゆることが料理人として1人前になるための糧になると考えて欲しいですね。 |
──厨房設備の近代化による調理実習のあり方については、どのようにお考えですか? 佐藤 ガスの良いところ、電気の良いところ両方を教えています。電磁調理台はガス台に比べて湯を短時間で湧かすことができますが、それには専用の鍋が必要です。大きな寸胴をのせてもなかなか湧きません。電磁はプレートと鍋底が接している部分のみが加熱されますが、ガスは熱が外に逃げることによって寸胴全体が温まるからです。電気の利便性も教える反面、店をオール電化厨房にしたら、不都合も生じることを教える必要があります。 東 当校では師範台には電磁調理台も用意していますが、学生にはガス台を使わせています。炎の音や色を五感で感じさせながら、調理の基本技術である火による調理を教えています。中心が熱くて遠くになるほど温度が低くなるガス式のフレンチレンジを導入し、サバイヨン、パプール、シュエなどの調理法を教えています。体験入学では来校者に肉料理はコニャックをかけてフランベする場面を見せていますが、火の勢いや炎の美しさに感動して入学を希望する人もいるくらいです。またフランス語で「クー・ド・フウ」とは、クーは素早い作業、フウは火という意味。レストランで「もっとも忙しい時間」という意味になりますが、ここでも火が登場しています。やはり調理には、火が欠かせないのだと思います。 (ソトワール2006年11月号を再構成し転載しました) |
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