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厨房談義[第16回] 患者様がモチベーションの原動力 「栄養士は、とっても素晴らしい仕事。自分の知識で人を救えるのですから」

管理栄養士
せんぽ東京高輪病院 栄養管理室長
足立香代子 先生

PROFILE
1968年中京短期大学家政科食物栄養専攻卒業後、医療法人病院を経て、1985年からせんぽ東京高輪病院に勤務し、現在に至る。管理栄養士の第一人者として栄養士を中心に各医療関係者向けセミナーの講師として講演多数。日本栄養士会功労賞、日本臨床栄養学会教育賞など受賞多数。著書に「検査値に基づいた栄養指導」、「検査値に基づいた栄養アセスメントとケアプランの実際」他、多数。日本臨床栄養学会理事、日本褥瘡学会理事など多数就任。

せんぽ東京高輪病院は、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士など多職種が協力して栄養療法を行なう医療チームNST(nutrition support team:栄養サポートチーム)を、他病院に先駆けて実施。その中心となっているのが、管理栄養士の第一人者である足立香代子先生です。医療現場の第一線で栄養指導などを実践し続ける一方、栄養面においてトータルコーディネートができる人材育成にあたっている先生に、医療現場で働く管理栄養士のあり方などについてお話を伺いました。

Subject1 現場は、様々なことが得られる場所

──全国各地で講演活動を行っている今でも、足立先生は医療現場で栄養指導などを実践し続けていらっしゃいます。先生にとって、第一線で活躍するモチベーションの源は何でしょうか。

足立

私は、患者様のことが大好き。だから今でも現場が大好きなのです。患者様とコミュニケーションをとる度に何らかの“気付き”があり、気付く度に勉強してきました。そうして経験を重ねるうち、この職業ならではの専門知識が患者様の役に立つようになってきました。その「役に立つ」という実感が、モチベーションの源になっています。
大事なのは患者様に対して、何が問題で、どうしたら改善されるか、さらにどうしたら幸せになってくれるかを考えること。病気の状態を観察し、栄養や医学の観点から模索して、「患者様が幸せになれる」方向性が見えてきた時に、初めて自分の充実感や存在価値を感じることができます。そこに管理栄養士という職業の魅力があると思うのです。

Subject2 大切なのは「信頼」してもらうこと

──患者様とコミュニケーションをとる時に、足立先生が常に心掛けていることを教えてください。

足立

嚥下機能を判断するところまでは看護師と同様ですから、観察力だけでは不十分です。その次に何をするかで、管理栄養士の専門性が発揮されなければいけません。患者様の状態に応じて「茶碗蒸しはどう?」「冷奴は食べられる?」といったいろいろなアイテムの提案は、この職業だからできること。提案が的確ならば、「この人は信頼できる」と患者様は思い、「ならばやってみよう」と行動に移してくれます。「自分のことを考えてくれている人がいる」という実感を患者様に伝えるのが、管理栄養士が目指すべきコミュニケーションのあり方なのです。
また、患者様が納得できる「説得力」を身に付けることも不可欠です。以前、鼻からチューブを入れるのを拒んでいた患者様に、「生きるためには、塩分を摂ることが大事なんですよ」と必要性を説明し、さらに「スポーツ飲料に似た味ですよ」と伝えたところ、うなずいて承諾してくださいました。再び患者様のもとを訪れた際、努力している姿を見て「あぁ、救えるんだ」と思えて、涙がこみ上げてきました。自分の知識を使って、どこに問題があるかを探り出し、何ができるかを提案できる管理栄養士の仕事は「なんて面白いんだろう!」と私は思っています。

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