厨房談義[第16回] 患者様がモチベーションの原動力 「栄養士は、とっても素晴らしい仕事。自分の知識で人を救えるのですから」
管理栄養士
せんぽ東京高輪病院 栄養管理室長
足立香代子 先生
──モチベーションを保つには働く環境も重要な要素の一つかと思います。先鋭的な栄養療法に取り組むせんぽ東京高輪病院では、管理栄養士の方はどのようなスタンスで働いておられますか?
- 足立
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当院の栄養管理室には外部からの研修生も多く、看護師さんや薬剤師さんといった他職種の方もたくさんいらっしゃいます。そうした外部からの刺激は、当院の管理栄養士たちが知識の幅を広げたり訓練するうえで相乗効果をもたらしています。できることが増えるにつれ仕事は面白くなりますから、当院の管理栄養士は長く務める人が多いんですよ。
また、働く環境で忘れてはならないのが、厨房環境です。そして、厨房環境で第一に気を使っているのが衛生管理。当院の厨房ではガスを使っていますが、火力を一気に上げ、手早く大量に調理できるので、作り置きをしないで済み、結果として食中毒の心配も避けられます。ガスは、衛生管理にも一役買っているのです。なおかつ、「涼しい厨房」であることも重要ですよね。厨房内が暑くて汗がダラダラ出るようでは、衛生管理にもよくありませんから。室温や湿度の管理ができる快適な厨房であるということは、そこで働く人のモチベーションにも関係してきます。そこで作られる食事が患者様の口に入ることを思えば、厨房が涼しいということは大切なポイントですね。
──医療現場で働く中で、足立先生も壁にぶつかったことが何度もあるそうですね。第一線で活躍し続けている先生から、管理栄養士さんたちへメッセージをお願いします。
- 足立
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私が20代の頃は、管理栄養士として医師に問題点を提示しても、まったく耳を傾けてもらえませんでした。質問をしても「カルテを見れば書いてある」と言われるばかり。自分ではカルテを見たうえで質問していたのですが、知識がないためにきちんと読み取れず見落としていたのです。そんな自分が情けなくて、約2年間、病院に泊り込むほどののめりこみようで、あらゆる検査と薬を網羅するほど猛勉強。ところが勉強すればするほど奥深く、分からないことが次々と出てきて、30代にはうつ状態になった時期もありました。そんな時にターニングポイントとなったのが「できない自分を認める」ことでした。
できないことを認めるのは辛いと思いがちですが、冷静に考えればスキルがない人の話には説得力がないので誰も耳を傾けてくれません。しかし、自分の中の「できない」を自身で受け止め、一つひとつクリアすれば「できる」が増えていくのです。「できない」が「できる」に変わることの楽しさを体を通して知って欲しいですね。そして、「できる」が一つ増えるごとに、人の役に立てることが増え、その喜びの相乗効果でモチベーションも高まっていきます。自分の知識やスキルが役に立つのだと分かると、未来が開けて、年齢を重ねることも楽しくなりますよ。
- せんぽ東京高輪病院
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