厨房談義[第17回] 食行動の変化にもつながる「栄養計算」の大切さ 「小さな発見を記録し続けた“マイデータブック”。今ではなくてはならない存在に。」
栄養士
亀石早智子 先生
- PROFILE
- 女子栄養短期大学卒業。女子栄養大学出版部「栄養と料理」編集部で栄養計算などデータ関係の仕事を10年間担当。1991年、「カメイシ メニューデータ プレゼンテーション」を設立し独立。雑誌「オレンジページ」の料理特集や連載記事を中心に、雑誌や本の栄養計算を一手に引き受ける一方、栄養士のための講演活動を行うなど幅広く活躍中。
栄養士には欠かせない作業である「栄養計算」。そのプロフェッショナルとして、長年に渡り第一線で活躍なさっているのが亀石早智子先生です。現在は、これまでに培った経験をもとに栄養士のためのセミナーでも講演を務めるなど、後進の育成にも力を注いでいらっしゃいます。そんな亀石先生に、栄養計算にまつわる貴重な経験談のほか、栄養士の働き方についてもお話を伺いました。
──長年「栄養計算」を深く追究してきた亀石先生は、今では栄養計算の第一人者として多くの栄養士から注目される存在でいらっしゃいます。先生が栄養計算に興味を持つようになったきっかけを教えてください。
- 亀石
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「栄養と料理」(女子栄養大学出版部)の編集部在籍時に、栄養計算を担当したのが始まりです。当時、外食調査として編集者やカメラマンとレストランに出かけ、栄養計算を行うこともあり、試行錯誤の連続でした。
素材を一つずつ計量器で計るにあたり、サラダのように素材が生(なま)の料理ばかりではありませんから、加熱調理した素材のデータをいかに計算するかが大変だったのです。壁にぶつかってばかりの日々でしたが、「なぜ?」という疑問にチャレンジし解決していくのが面白くて。“面白い”と思う気持ちは、今も変わらずにあるんですよ。
──その後は独立し、雑誌をはじめ多方面でご活躍なさっていますが、“栄養計算のプロ”である先生から見て、栄養計算の大切さはどのような点にあるとお考えですか。
- 亀石
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日本人の平均寿命が延び、病気を抱えて生きる人が増えている現代社会では、健康志向が一段と強まっていますよね。栄養分野において、時代のニーズに応えるものの一つに栄養計算があると感じています。
また一方で、手料理する機会が減り、冷凍食品や中食の利用が増えているのも現代社会の特徴です。使われている油や塩などの量が“見えない”料理でも、データ表示があれば「何をどれくらい食べたのか」が判るので安心感を得られます。
何より栄養価が“見える”ことによって自らの食生活の計画が立てやすくなるはず。こうした背景からも、栄養計算は食行動の変化に良い影響を与えると思っています。