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厨房談義[第18回] 何よりも自分自身が「食を楽しむ」ことが大事 「食の大切さを知ってもらうために、固いイメージの"栄養"をPOPで明るく伝えていきたい。」

管理栄養士/料理研究家
森崎友紀 先生

PROFILE
大学で栄養学を学び、管理栄養士資格を取得。病院、料理教室、学校などで管理栄養士として働いてきた経験を生かし、現在は料理研究家として活躍。美容と健康に関するサイト運営、レシピの提案、セミナー企画、各種イベント講師、メニュー開発などを行っている。身近な素材でおしゃれな食卓を演出する料理教室「MAGENTA」主宰。多くのテレビ・ラジオ・雑誌などのメディアでも幅広く活躍中。

大学卒業後、管理栄養士として病院勤務を経験した森崎友紀先生。その時期、「食の専門家であり、食のプロである管理栄養士や料理研究家がもっと表舞台に出て、本当に正しい知識や情報を伝えていくことが必要」と考えた森崎先生は、食事の大切さや食生活の情報をみなさんに広く発信していくために、料理研究家という道を選ばれました。現在、様々なメディアで活躍している森崎先生に、病院勤務時代のお話を踏まえ、振り返って考える医療現場での管理栄養士・栄養士のあり方などを伺いました。

Subject1 祖母に教わった「食の大切さ」

──森崎先生は以前、管理栄養士として病院に勤務なさっていたそうですが、食の世界に興味を持ち、管理栄養士を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

森崎

私は子どもの頃、アトピー性皮膚炎に悩まされていたのですが、母が薬剤師だったこともあり、家にはたくさんの薬が常備されていました。けれども薬ではいっこうに治らず、そんな私を気遣った祖母が、栄養バランスを考えた料理を作ってくれて。一汁三菜のような昔ながらのメニューで肉、魚、野菜をバランスよく摂るうちに、薬では治らなかったアトピーが徐々に改善されていったのです。「食」の大切さを実感すると同時に薬に依存する怖さを知ったこの体験は、幼かった私の心に強烈に刻まれました。
また、食を楽しむ家庭環境だったことも、栄養学を志したことに大きく影響していると思います。当時、我が家は8人の大家族だったのですが、みんな食べることが大好きで、家族の団らんの大半は「今日の食事どうする?」という献立会議だったほど(笑)。そのせいか私も食への興味がとても強く、小学2年生の遠足のときには、自分でちびまるこちゃんのキャラ弁を作るようになりました。そうした家庭環境のおかげで、成長するにつれ「食」にまつわる仕事に就きたいと思うようになったのです。

Subject2 もっと「栄養」に目を向けてもらうために

──管理栄養士が働く場はいろいろある中で、「病院」を選んだ理由を教えていただけますか。また、病院勤務時代の経験があったからこそ、今の仕事につながっているそうですね。

森崎

そもそも「専門職として専門性を発揮し、人の役に立つ仕事をしたい」という思いが、とても強くありました。そして、幼い頃の経験から「病気を治すことは、直接的に人の役に立てる」と思う一方で、学生時代に病理学が大好きだったこともあり、「病院ならやりがいのある仕事ができるはず」と考えたのです。
ところが、現実はまるで違って。私が勤務していた頃は管理栄養士・栄養士に対する世の中の認知はとても低く「重要な役割を担っているのに軽視されている」とジレンマを常に感じていました。また、医師や看護師は患者様とコミュニケーションをとる機会が多いのに、管理栄養士はそれがほとんどなく、伝えたいことがあっても一言添えてカルテを預けるだけ。そんな現状に疑問を募らせていたある日のこと、病棟を回った際に、私が作った食事がまるごと捨てられているのを目撃して。その患者様のメニューを作るのに夜を徹して頑張っていただけに、ものすごくショックでした。
けれど冷静に考えれば、「なぜ食べるのか」という理由が解らないまま好きでもない料理を出されても、食べる意欲がわかないのは仕方のないこと。とはいえ、伝えようにも管理栄養士の言葉に耳を傾けてもらえるチャンスがない。ならば世間の"栄養"に対する目を根本的に変える活動をしようと考えたのが、メディアの仕事にチャレンジするきっかけでした。

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