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厨房談義[第22回] 学校給食における衛生管理の実践 「ノロウイルス等による食中毒を防止するためには “なぜ必要か?”という問題意識が大切です。」

東京医科大学兼任教授(医学博士)
中村明子 氏

Subject3 「使い捨て手袋」の正しい運用 使い捨て手袋を使う理由を考えよう!

──使い捨て手袋にも正しい使い方があるそうですね。

中村

はい。例えば以下のようなケースは、使い捨て手袋の不適切な使用例です。その理由がわかりますか?

(1)段ボールの開封時
(2)下処理の作業時
(3)エプロンのひもを結ぶ
(4)一時的に外して置いておく

使い捨て手袋を使う理由は、2つあります。一つは「手の汚染を食品に付けない」こと、もう一つは「食品の汚染を手に付けない」ことです。

前者は、加熱調理後の食品を扱うときや、生で食べる食品を扱うときに、手の汚染を食品に付けないために使うのです。後者は、肉・魚・卵など、食中毒の原因となる菌やウイルスを、自分の手に付けないために使うのです。

こうした理由がわかれば、正しい運用が可能になると思います。上の(1)〜(4)のケースが不適切な理由もお分かりいただけると思います。

設問 食品を扱うとき、次の3色のうちどの色の手袋が良いですか?

  • 1 ピンク
  • 2 ブルー
  • 3 グリーン

また、手袋の切れ端などによる異物混入にも、十分に注意してください。その場合、ピンクやグリーンの手袋だと食品の色に多いため紛れてしまいます。ブルーは食品の色からかけ離れているので、手袋の色として適正なのです。

Subject4 衛生管理の意識向上のために“なぜ?”という問いかけがプロの責務

──最後に、学校給食などの衛生管理を実践するために、心がけるべき点を教えてください。

中村明子 氏

中村

調理場の衛生管理は、すべて科学的な裏付けに基づいて行われています。ですから「何故それが必要なのか?」を考えることが、非常に大切だと思います。

その例を、最後にご紹介しましょう。

(1)野菜は裁断してから洗浄しますか。それとも根を切り落として洗浄しますか。

野菜は根の部分がもっとも汚染されています。従って、まず根を切り落とし、その後で洗浄するという手順が正しい方法です。

(2)下の2枚の写真で、何が問題か、わかりますか。

中村明子 氏

写真左は、温度計で調理中の食品の温度を図っていますが、釜の外側に近い場所に温度計を入れています。熱い釜に近い場所ですから測定値は高くなり、中心部に菌やウイルスが残存するリスクが残ります。正しくは内側の3カ所を測定して平均値をとることが適切な方法です。

写真右は、これから加熱されるひき肉が、厨房内に置いたままになっています。これでは室温で菌が増殖してしまいます。加熱しても菌は残ることがあるため、加熱する直前まで冷蔵庫で保管するのが正しい方法です。

これまで見てきたとおり、ノロウイルスや食中毒は、一人ひとり衛生管理に対する意識向上で防止することができます。そして「なぜそれが必要なのか?」と問いかけることがプロとしての責務であり、また安全な食事を提供することにつながると思います。

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