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オピニオンリーダーが語る
厨房談義 第28回

17坪以下の飲食店での「効果的な厨房設計」とは?

小型の飲食店を繁盛店にするためには、
“人が集まるデザイン・設計”が求められます。

飲食店デザイン研究所 代表
齋藤俊一 氏

PROFILE

法政大学工学部建築学科卒業。大成建設設計本部在籍後、Pelli Clarke Pelli Architects Japan/光井純&アソシエイツに在籍。2008 年ハーミットクラブ一級建築士事務所設立し、2011年には千葉アトリエを開設。2015年株式会社ハーミットクラブデザイン設立、飲食店デザイン研究所、wacca(ワッカ)、楽暮(らくら) デザインブランドを立ち上げる。

飲食店のあり方が多様化し、オーナーの要望も複雑なものになっている近年、店鋪設計者には設計やデザインだけでなく、「集客力」「サービス力」「円滑な稼働率」などを実現できる提案力が求められるようになっています。

今回は、個性的な飲食店の企画・デザイン・設計を専門とする「飲食店デザイン研究所」の齋藤代表をお招きし、ハードとソフトの両面から飲食店設計に必要なノウハウをお話いただきました。

通常、小規模店舗は15坪程度が主流ですが、17坪を確保することで客数を増やす複数の設計プランが可能となり、店鋪の稼働率も向上できます。そこで今回は17坪という限られた面積のなかで、いかに効果的なデザイン・設計を実現し、店鋪としての稼働率を向上させるかについて、齋藤代表に詳しく伺いました。

Subject 1 入りたくなる、また来たくなる、行きたくなる。繁盛店の店鋪デザインの基本的な考え方とは?

──飲食業会の現状と、そこで求められる飲食店デザイナーの役割について、どのようにお考えでしょうか。

齋藤

現在の飲食店を取り巻く環境変化でもっとも注目しているのは、スマホやパソコンからお店の情報を簡単に得ることができるようになったことです。料理の種類や店内空間、コスト感などが、各種のWebページに豊富に掲載されています。以前は大通りに面した立地が有利でしたが、今では路地にある小規模店舗で見つけてもらいやすくなったのです。

こうした状況は、飲食店デザイナーの役割を大きく変えつつあります。絵さえ描ければよい、図面とパースが描ければよい、設備も含めた設計ができればよい、というこれまでの役割から、“人が集まるデザイン”を提案できるスキルが今求められています。

店鋪デザイン研究所のWebページ。「入りたくなる、また来たくなるお店づくり」の考え方や、豊富なデザイン・設計の事例が掲載されている。

──齋藤代表が指摘される“人が集まるデザイン”とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

齋藤

まず「入りたくなるデザイン」です。これは店鋪の入口まわりをデザインすることで、本来であれば寒い、うるさい、人目が気になるなど“嫌な席”になりやすい席を、“人が人を呼ぶ席”へと変化させるのです。人目につくファサードやアプローチにデザインの比重を置くことで、入りたくなるお店が実現します。

店鋪のファサードをデザインで演出。例えば外から見える部分にカフェテレスを設けることで、人が人を呼ぶデザインが実現する。
齋藤

次に「また来たくなるデザイン」です。これには2つの考え方があり、まず“マイナスをなくすデザイン”。エアコンの風が直接当たったり、呼んでもホールスタッフが来ない、椅子がフカフカすぎて食が進まないなど、もう次は来ないというマイナス要因を減らします。もう一つは“会話が弾むデザイン”です。店内までのアプローチでワクワク感を演出したり、我に返るトイレ空間を特徴づけたりします。それが「素敵だね」「面白いね」という会話を生み、また来たくなるお店になります。

入口から客席までのアプローチを演出し、会話を引き出す。トイレも空間も照明の工夫やミラーの活用で、印象的な空間になる。
齋藤

3つ目に「行きたくなるデザイン」も重要です。行ってみたいお店に共通するのは、スマホで調べた時に「どんな風に素敵なのか」を、分かりやすいキャッチコピーと美しい写真で表現していることです。そうすれば、来店した時に写真を撮ってSNSで拡散していただけたり、飲食雑誌に掲載してもらいやすくなるのです。人とお料理と空間を一つの世界観で表現することができれば、行きたくなるお店が実現します。

スマホで撮影したくなるシーンを作ることが重要。料理のみならず、小物、トイレ空間、ユニフォームなどを一つの世界観で統一する。

Subject 2 飲食店オーナーの「3つのコスト」の視点から店鋪デザイナー・設計者の役割の発揮する。

──齋藤代表の「飲食店デザイン研究所」は、3つのコストという視点から様々なご提案をされていると伺っています。

齋藤

はい。3つのコストとは、建築的技術力による事業全体の「資金的コスト」、面倒な手配や作業を請け負うことによる「時間的コスト」、専門家ネットワークの知識により不安を取り除く「精神的コスト」です。この視点からオーナー様に何をどのようにご提案するかを検討していきます。

例えば、初期の段階では現地調査や立地調査を行いますが、私たちはしばしば近隣のコンビニに行って、そこに置かれた雑誌の種類からお店のターゲット層を絞り込みます。コンビニに置かれる雑誌の種類は極めて緻密なマーケティング調査から決定されているからです。

またお店のターゲット、競合、消費者心理を考えて、お店の特長や他店との差別化のポイントを見つけていきます。これは自店鋪を中心に置き、その周辺にそれらを何重にもマッピングする手法で、ワッカマーケティングと呼んでいます。

事前調査から、企画、設計、制作、アフターフォローに至るまで、工程別に3つのコストの視点からオーナー様に提供するサービスを厳密に体系化しているのです。

Subject 3 オーナー様の気持ちに寄り添い、極めて具体的な設計・デザインのプランをご提案しています。

──齋藤代表はこれまで、多くの個性的な小規模店舗のデザイン・設計の実績をお持ちですが、飲食店オーナーの期待に応える秘訣は何なのでしょうか。

齋藤

私たちのご提案が、飲食店オーナー様に刺さること、心から納得していただけることが重要だと考えています。具体的には、前述の体系化された提案内容に加えて、席数、客単価、満席率、回転率という、オーナー様が必ず気にされる数値についても極めて具体的な提案を行うよう心がけています。

例えば、l7坪の店鋪の場合、一般的な席数は24席ほどです。客単価が4,000円で、満席率70%、5回転したとすると、1日の売上は約10万円となります。1ヵ月25日稼働したときの月商は250万円です。こうした売上予測から必要な資金計画を立案し、その中で実現可能なデザイン・設計をご提案します。

齋藤

17坪は、複数の店鋪設計プランが可能な最小面積です。客席と厨房のバランス、客単価を上げるライティング、満席率を高めるテーブルゾーニングなど、具体的に詰めていくわけです。

ちなみに、満席率を高めるためには、席数よりも組数を重視することがポイントとなります。テーブルと椅子を移動できる設計にして、12席のテーブルを6席×2組、4席×3組、2席×6組と柔軟に対応できるようにすることで、坪当たり売上を上げることができます。

またお店全体の設計は、人の流れとお皿の流れがぶつからないよう、もっとも効率的なものにします。こうした設計者の考えをオーナー様に十分納得していただくために、私たちは「スケッチアップ」という設計ソフトを活用しています。これは3次元空間で見たままの状態で、直感的な3Dモデリングを行うことができるソフトです。このソフトを使うことで、私たちのご提案をより深く正確にご理解いただけるようになりました。

小規模な飲食店を繁盛店にしたいと、多くのオーナー様は真剣に考えています。“人が集まるデザイン”の提案を通して、そうしたご期待にこれからも応え続けたいと思います。

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