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オピニオンリーダーが語る
厨房談義 第29回

17坪以下の飲食店での「効果的な厨房設計」とは?/②

厨房設計には多くの重要な留意点があります。
ぜひ“厨房相談室”までお問い合わせください。

東京ガス株式会社 厨房相談室 室長
加瀬富美二 氏

PROFILE

東京ガス株式会社入社後、1994年よりエネルギーソリューション本部 都市エネルギー事業部へ配属。2014年に開設された「厨房相談室」の室長に、2016年から就任。長年にわたり業務用厨房機器の開発や厨房設計に携わる。現在は、大小さまざまな業務用厨房案件を手がけながら、若手技術者の育成、研修会やセミナーの講師を務めている。一級厨房設備士、一級厨房設備施工技能士、HACCPコーディネーターの資格を有する

前回の飲食店デザイン研究所代表・齋藤俊一氏に引き続き、「17坪以下の飲食店での効果的な厨房設計とは?」の2回目をお届けします。

今回は、東京ガス厨房相談室室長・加瀬氏へのインタビューです。店鋪の設計事務所や飲食店オーナーの方々から、数多く寄せられる質問とは何か。また厨房設計で見落とされがちな設備や機器とは。そして、厨房計画や施工の際の重要な留意点について、プロの視点から語っていただきます。

最後に、厨房・給湯・換気・空調など、最適な機器と適切な換気システムを組み合わせ、快適な厨房を提案する東京ガスの「厨房相談室」についてもご紹介します。

Subject 1 ガスメーターの選定、厨房換気量の算出、内装の仕様、機器の設置基準について。

──厨房相談室への問い合わせのなかで、特に質問が多いのはどんなテーマなのでしょうか?

加瀬

まず多いのは、新しく飲食店を開業する際に、お店でどれだけガスが使用できるのかという「ガスメーターの選定」に関する問い合わせです。これについては、開業予定の店鋪に設置されたガスメーターの「号数の表示」を確認していただくよう、お答えしています。

下の表(※1)と写真をご覧ください。赤枠で囲った部分が「号数」です。例えば「NB10」なら使用最大流量が10m3/hで、ガス設備容量が125kWとなります。

例として、居酒屋の場合は139kW(※2)、中華料理店は157kW(※3)、ラーメン店は165kW(※4)のガス設備容量であった場合、それに対応できる号数のガスメーターが必要になるわけです。


※1=上記表内の「ガス設備容量(kW)」については、目安的な参考数値となります。
※2=居酒屋(139kW)=ガステーブル(3口):32kW/ガスフライヤー(14L):7kW/スチームコンベクションオーブン(小型):15kW/ガス炊飯器(3升):6kW/焼物器(下火中型):10kW/洗浄機:16kW/給湯器(24号)53kW
※3=中華(157kW)=中華レンジ(スープ/餃子焼):36kW/中華レンジ(イタメ×2):46kW/ガス炊飯器(3升):6kW/洗浄機:16kW/ 給湯器(24号):53kW
※4=ラーメン(165kW)=スープレンジ(×2):35kW/ゆで麺器(4カゴ×2):35kW/ガステーブル(2口):20kW/ガス炊飯器(3升):6kW/洗浄機:16kW/給湯器(24号):53kW

加瀬

また、換気量の算出についても多くの質問をいただきます。厨房内では必ず換気が必要です。国土交通省の建築設計設備基準では、ガスと電気でそれぞれ3つの算出方法が提示されており、その最大の風量を厨房換気量として採用することになっています。

建築設備設計基準(国交省ガイドライン)による厨房換気量の考え方

※(第4編空気調和設備 第4章換気設備 第4節火を使用する室の換気)より抜粋
※建築基準法=室内酸素濃度を維持するためのフードの換気量
※換気量の単位
 N:20/排気フードⅡ型、30/排気フードⅠ、40/排気フードⅠ定形外および換気扇
 K:燃料の単位燃焼量当たりの理論廃ガス量 [m3/kW・h]
 Q:実状に応じた燃料消費量 [kW] 
加瀬

厨房の内装仕様や、ガス機器の設置基準も、数多くの問い合わせがあります。これは、ガス厨房機器を設置する際に、床・壁・天井と一定の距離をとらなければならないという基準で、隣接面が「不燃材料」と「不燃材料以外」の場合とで設置基準が異なっています。詳しい情報は各厨房機器メーカーの取扱説明書に示されていますので、参照していただきたいと思います。

●内装仕様における不燃材料(床・壁・天井)
不燃材料とは、「平成12年 建設省告示第1400号(不燃材料を定める件)により、次のように定められているものをいいます。
○コンクリート ○れんが ○瓦 ○陶磁器室タイル ○繊維強化セメント板 ○厚さが3mm以上のガラス繊維混入セメント板 ○厚さが5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板 ○鉄鋼 ○アルミニウム ○金属板 ○ガラス ○モルタル ○しっくい ○石 ○厚さが12mm以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る) ○ロックウール ○グラスウール板

Subject 2 厨房計画で見落とされがちな天井換気扇、埋設配水管の点検口、ダクト清掃について。

──次に、厨房設計を行う際に、重要かつ見落とされがちな設備について教えていただけますか。

加瀬

まず天井の換気扇です。一般に、加熱調理機器から発生する排熱は、上部に設置されている排気フードから屋外に出されます。しかし留意が必要なのは、加熱調理機器以外からも排熱が出ているということです。

例えば冷蔵庫の上部から出た排熱がそのまま厨房内に滞留し、厨房内の温度・湿度を上昇させていることがよく見受けられます。これは冷蔵庫の能力低下につながる要因にもなります。従って、加熱機器以外の排熱を排出する天井換気扇を設けることが必要です。

左:天井換気扇
右:冷蔵庫の上部に設置された天井換気扇
加瀬

最近の傾向として、大小関わらず厨房施設の配水管を埋設するケースが多くなっています。埋設する理由は、以前の排水溝と違って「汚水の臭い」「お湯を流した時の排水溝から蒸気の立ち上り」等を軽減することが可能だからです。埋設する場合は、排水管の清掃や万が一ごみ等が詰まった時に備えて、点検口を設けることをお勧めしています。

厨房内の清潔さを保てると同時に、万が一詰まった場合でも保守が容易になります。点検口がないと、床を剥がすなど大掛かりな対処が必要になり、費用も膨らんでしまいます。

また、排気ダクトの清掃を行うための点検口を設けることも重要です。東京消防庁によると、飲食店の火災の原因は、第1位が天ぷら油火災、第2位がダクト火災となっています。このため火災予防条例では「天蓋、天蓋と接続する排気ダクト内、グリス除去装置及び火災伝送防止装置は、容易に清掃ができる構造とすること」と定められており、横浜市火災防火条例では排気用ダクトは3ヵ月に1回以上の点検、1年に1回以上の清掃を定めています。

点検口を設けることにより清掃が容易になり、逆に点検口がないと排気ダクトを切断して清掃を行うなどの費用が増加します。

上:未清掃の防火ダンパー・排気ダクト
下:清掃後の防火ダンパー・排気ダクト)。点検口(赤枠)から清掃を行います。

Subject 3 厨房に機器・設備などを施工する際に留意すべきポイントについて。

──実際に厨房を施工する時に、厨房機器や設備の選定で留意すべきポイントを教えていただけますか。

加瀬

第1に、清掃性を考慮した仕様になっている機器を選定することです。厨房室も含め厨房機器は使用を続けると必ず汚れることを前提に、清潔さを維持するための工夫が必要です。

具体的には、ロングアジャストやキャスターを使い機器下部の有効寸法を150mm以上空けることで、清掃性が向上します。また脚部を丸パイプにしたり、バックガードエッジを斜め45度にすることで、ゴミ溜まりを抑制することができます。

また、シンクの縁を槽側へ傾斜させることで槽外への水こぼれを防いだり、立ち上がり上部を斜めにすることで水跳ねを抑制することができます。

加瀬

第2に、厨房環境を良くすることや、耐久性に優れた機器、設備を導入することです。例えば床材の性能には、耐久性・防滑性・耐熱性・非吸水性・清掃性・耐薬品性などが求められます。最近では、特殊防滑長尺塩ビシート、塗床、ハイドロテクトタイルなど、様々な性能の床仕上げ材が提供されていますので、用途に合った選択をすることが重要です。

また空調機(内機)は、一般に下部から厨房室内の空気を取り入れて空調機で冷やし、前面から冷気を吹き出す構造になっています。従って、排熱の出ない厨房機器の上部に室内機を設置したり、冷気を低風速で吹き出して作業域を効率良く冷やす置換空調方式の設備を導入すると良いでしょう。

排水管では、従来のHT継手の排水管に替えて、強化ポリプロピレン二層管やRD継手を採用することをお勧めしています。近年、排水管の継手メーカーからスチームコンベクションオーブンなど庫内の洗浄に使用される洗浄剤で、HT継手に悪影響(亀裂・漏水)を与える成分が含まれているものもあり、使用を避けるような注意も示されています。

加瀬

さらに最近では、厨房環境や安全性を向上させた、省エネで高性能な厨房機器や設備が開発されています。すっかりお馴染みになった「涼厨(すずちゅう)」タイプの厨房機器、立ち消え安全装置が付いたコンロ、素材をセラミック製にした非着火性能に優れ油脂の除去率を90%まで高めた高性能グリスフィルター、工具なしで簡単に取り付け・取り外しが出来る厨房用防火ダンパー、排熱を再利用することで省エネ性能を向上させた排熱回収型洗浄機、等々。こうした最先端の技術開発の成果を、ぜひ厨房に取り入れていただきたいと思います。

Subject 4 お客さまのニーズに合った快適な厨房を提案する“厨房相談室”。

──最後に、加瀬さんが室長を務める「厨房相談室」では、どのような業務を行っているのでしょうか。

加瀬

厨房相談室では、厨房・給湯・換気・空調など、最適な機器と適切な換気システムを組み合わせた快適な厨房を実現するために、お客さまのニーズに合った具体的なご提案をしています。

厨房相談室からのご提案

また「myTOKYOGASビジネス」会員の皆様には、店鋪レイアウト、厨房機器リスト、デザインパースなどを提案する「飲食店レイアウト支援サービス」も行っています。東京ガスの業務用厨房に関わるノウハウの蓄積を、ぜひご活用いただきたいと思っています。

「myTOKYOGASビジネス」会員向け「飲食店レイアウト支援サービス」

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