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オピニオンリーダーが語る
厨房談義 第30回

働きがいのある従業員満足度の高い組織づくり

成果を生み出す組織とは、個人のスキルの高さより、
会社と社員の絆が強く、方向性が一致している組織です。

株式会社Plan・Do・See(プランドゥシー)
平山桂子 氏 / 澤田雅也 氏

株式会社Plan・Do・See PROFILE
設立
1993年4月
資本金
1億円
代表者
代表取締役 野田豊加
事業内容
レストラン/バンケット(ウェディング)/ホテル等の運営、企画
従業員数
社員834名、総従業員1652名(2018年11月現在)
事業所
東京(本社/丸の内・有楽町・赤坂)、京都(高台寺・御池)、神戸(旧居留地)、大阪(京橋)、福岡(博多・海ノ中道)、名古屋(丸の内・南山・伏見)、ニューヨーク、バリ島、マイアミ、ロサンゼルス、ハワイ

株式会社Plan・Do・See(プランドゥシー)は、1993年4月の設立以来、「日本のおもてなしを世界中の人々へ」をミッションに、レストラン・バンケット(ウェディング)・ホテル等の運営・企画事業を国内外で展開しています。特に、「I am one of the customers.:もし自分がお客様だったら」の行動指針に裏打ちされた組織人材開発は高く評価されており、「働きがい」に関する調査として世界で最も信頼されているGPTWジャパンの「働きがいのある会社」調査で、2010年から9年連続ベスト5に、2018年度は従業員1000名以上の参加企業の中で第2位に選出されました。

働きがいがあり、従業員満足度の高い組織は、どうしたら実現するのか。人事部門の平山桂子さん、赤坂プリンスクラシックハウス・キッチン部門の澤田雅也さんに伺いました。

Subject 1 年齢やキャリアに関係なく認め合い、学びあう、そんな豊かな成長環境が当社の組織文化です。(平山)

──2018年度の「働きがいのある会社」調査で、第2位になりました。また昨年まで9年連続でベスト5に選出されています。その理由はどこにあるのでしょうか。

平山

行動指針(I am one of the customers.:もし自分がお客様だったら)がシンプルかつ明快で、社員が働きがいを感じながら過ごせる場所や制度、文化があるからだと思います。

「個人と会社のBeing(価値観)が同じ方向を向いていれば、お客さまも社員も、そして会社も、みんなハッピーになれます」と平山さん。

実は私も中途入社なのですが、採用面接の時に驚いたことがあります。中途採用は即戦力が期待されるものだと思っていました。ところがPlan・Do・Seeの面接は、学生時代の話や休日の過ごし方などの話題ばかりで、前の会社で培ったスキルのことを聞かれなかったのです。

後でわかったことですが、Plan・Do・Seeでは人間の「Doing:スキル・行動・パフォーマンス」よりも「Being:価値観・考え方・感じ方」に重きをおいており、会社の価値観と方向性が同じ人を採用しようとしていました。Plan・Do・Seeの価値観とは、シンプルな行動指針「I am one of the customers.:もし自分がお客様だったら」に凝縮されています。この行動指針から、採用を含めたすべての意思決定が行なわれ、組織の隅々まで浸透しています。

たとえば、ウェディングプランナー時代に、お客さま対応について先輩に相談したことがありました。先輩は「けいちゃんがそのお客さまだったら、どうされたいの?」。それを聞いて、改めてお客さまに向かい合い、自分で考えた対応をして喜んでいただくことができました。

またある時、ナイトウェディングを希望されるお客さまを、夜の時間帯にチャペルにご案内しました。その予定を知っていた同僚が、先回りしてチェペルのキャンドルを灯してくれていたのです。もちろんお客さまは大満足、私もびっくりしましたが、とても嬉しかったです。

つまり細かなマニュアルよりも、その核心にある行動指針を先輩や同僚など全員が深く共有しているからこそ、お客さまにご満足いただける対応が可能になります。そして、それが自分の喜びにも繋がり、チームの絆を強くし、会社の成長にも貢献できる。この循環がとてもうまくいっているのだと思います。

──Plan・Do・Seeでは仕事の目標設定のしかたにも特長があるとお聞きしています。

平山

はい、目標設定のしかたも中途で入社して驚いたことの一つでした。Plan・Do・Seeでは半年に1回、目標設定シートを使って、上司との面談を行なっています。「MUST」(やらなければならないこと)、「WILL」(やりたいこと)、そして「CAN」(できること)という3つの視点から半年間の目標を決めます。

「山に登る目標でも、エベレストを目指す人も入れば、高尾山から始めたい人もいる。数値的なものよりも、本人が本当にワクワクするかどうかが目標設定の一番大切なことだと思います」と平山さん。

驚いたというのは、そのWILLのエリアに、仕事とプライベートの両方を記入することです。例えば、週に1回素敵なレストランで食事をする、映画を月に5本見る、ファッションセンスを磨くなど、私的な目標も書くのです。

この目標設定シートは、社内のカフェで誰でも自由に閲覧でき、他部門の人でも見ることができます。つまり上司や同僚の多くが「あの人はどうなりたいと思っているのか」をよく知っているわけです。そうすると、自然と相互に応援しあったり、WILLの方向性にあった仕事をマネジャーがどんどん任せてくれる。

私も、ウェディングプランナーの時に、コンセプトのある結婚式を企画するのが好きだったのですが、それを知った他部門の先輩がある法人のお客さまのパーティーの企画に参加させてくれました。また、私が買物や食べ歩きが好きなことを知り、パリへインテリアの買付けに同行させてもらったこともあります。

自分がやりたいことを言って、それが叶う組織、それは素晴らしいことだと思います。会社がチャンスをどんどん与えてくれて、それが自己成長に繋がる。本当に人生が豊かなものになると思います。逆に、お客さまへの向き合い方が中途半端だった時には、ムチャクチャ怒られます。そこだけは厳しいですね。

──個人にとって働きやすい風土は、会社にとってはどんなメリットをもたらすのでしょうか。

平山

社員の視線がお客さまに向くことで、お客さまからPlan・Do・Seeを選んでいただけます。そして、それが結果として会社の売上・利益、成長に貢献します。

もともとPlan・Do・Seeには、人に何かをして喜んでいたくのが好きな人が集まっています。そういう行動指針を共有できる人が、自分の好きなことにどんどん挑戦できるチャンスがある。それを上司と同僚が理解し、応援してくれる。

だから、仕事と人生の目標が一体となり、会社でも家族のような繋がりを感じることができます。「働きがいのある会社」調査で「チームとしての連帯感」のポイントが非常に高かったのも、そうした制度と風土があるからだと思います。

目標設定シートによる上司との面談風景。見晴らしの良い場所で、横(またはL字型)に座って、これから半年間の役割についての期待を伝えて合意形成を図っています。

Subject 2 若手がチャレンジできる環境のなかで、メンバー全員がお客さまと本気で向き合っています。(澤田)

──2014年の入社とお聞きしています。なぜPlan・Do・Seeを志望されたのですか。

澤田

もともと料理が好きで、人に楽しんでもらい、人を幸せにできる飲食サービスを志望していました。製菓専門学校を卒業する時、パティシエもやりたい、イタリアンやフレンチもやりたいと、幅広い部門の料理ができる会社を探しましたが、なかなかぴったりくる会社はありませんでした。

「Plan・Do・Seeには、失敗しても、もう1回チャンスをくれる器の大きさがある。だから料理を楽しめるんです」と澤田さん。

そんな時、先生からPlan・Do・Seeを紹介していただいたのです。ホームページを見て、「日本のおもてなしを世界中の人々へ」というミッションに感動し、同時に人をとても大切にする会社だと思い、志望を固めました。

入社後は、有楽町の「シクス バイ オリエンタルホテル」の多国籍料理で3年半、その後今の「赤坂プリンス クラシックハウス」に移りました。最初に驚いたのは、配属初日から肉を焼く担当になったことです。皿洗いからスタートするとばかり思っていたので、ビックリし、モチベーションが上がりましたね。先輩のサポートから入り、2週間後からはメインの担当になりました。

会社の意図は、「料理は楽しいもの、それを実感できる所からスタートする」というものでした。下働きの苦しさに負けて辞めてしまう学生時代の友人もいたので、Plan・Do・Seeには若手にチャレンジさせてくれる環境が確かにあることを実感しました。

もちろん失敗は数知れずあります。発注ミスで欠品を出したり、忙しさにかまけて焼き加減や塩加減がぶれてしまったり。でも、頭ごなしに怒鳴られるのではなく、お客さま目線にたってなぜダメなのかを説明して叱ってくれました。うまくいくと、少しハードルの高いチャレンジをたくさん用意してくれて、気が付くと自分が成長した手応えがありました。自分も後輩には、同じように接しようと決意したものです。

「君の作ったパスタはいいね、とお客さまに言われたとき、その瞬間こそが料理人の素晴らしさだと感じます」と澤田さん。

──これまでたくさんあったチャレンジの機会のなかで、一番印象に残っていることは何でしょうか。

澤田

毎年1回開催される「キッチンコンテスト」です。これは自分が考えた料理で、まず同じ店の料理人が競い、その店の優勝者が全国から集まってNo.1の料理人を決めるコンテストです。年齢やキャリアに関係なく誰にでもチャンスは平等、同じ土俵でメンバー全員が競います。私は3年目までのU-25(25歳以下)キッチンコンテストのメインディッシュ部門で優勝することができました。本当に必死でしたから、嬉しかったですね。

ご褒美として、一流ホテル・レストランを体験することができる2泊3日の報奨旅行をいただきました。各部門の優勝者と一緒に過ごした3日間は、自分の経験値を高める何よりのプレゼントでした。しかもその行程は先輩たちが工夫して考えてくれるのです。これには感激しました。

近々ワールドキッチンコンテストも始まると聞いています。海外の料理人と競えることに、今からワクワクしています。

キッチン部門の「おもてなしコンペ」で優勝した澤田さん。「本当に必死でしたから、嬉しかったです」と語っています。

──Plan・Do・Seeの社風については、どんな感想をお持ちですか。

澤田

ミッション(日本のおもてなしを世界中の人々へ)や、行動指針(I am one of the customers.:もし自分がお客様だったら)が明確で、それを全員が体現しようとしていることにいつも驚かされています。みんな会社が好きで、そしてキッチンやサービスなどそれぞれの部門でお客様と本気で向かい合っている。この環境はとても素晴らしいと感じています。

振り返ってみると、自分の努力以上に、会社から与えてもらったチャンスが大きかったと思います。これからも自分を磨き続けていきますが、同時に会社へ恩返しすることも考えていきたい。新しいチャレンジに手を挙げることも、自分のチャレンジの体験を後輩に伝えることも、また新しい料理を開発することも、みんな会社への還元になると考えています。

料理とは不思議なもので、忙しく急かされる思いで作った料理と、楽しく余裕をもって作った料理とでは、料理の表情が違います。これはすぐにわかります。ですから後輩には、厳しさや緊張感をもって接しながらも、料理とは楽しいものだということを伝えていきたい。それが先輩から私が学んだ一番大きなことだからです。そしていつの日か、キッチンコンテストの同じ土俵で、力いっぱい競い合いたいと思います。

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