オルガノプラントサービス株式会社は各種水処理プラントの建設、エンジニアリング、水処理装置の運用・メンテナンス、遠隔監視などを行う水処理のパイオニア企業。首都圏のエネルギー供給を担う発電所から離島の町営浄水設備まで幅広いプラントに関わり、圧倒的な技術力とノウハウで水処理の最前線を支えてきた。
上水道・簡易水道など暮らしを支える水処理インフラの多くは地方自治体によって管理運営されているが人口減に加え、節水意識の向上などに伴って水道水の使用量は下降し、水道料金で賄われる水道事業は厳しさを増している。運用自体は自動化が進んでいるが、不具合・異常が発生した場合に適切に判断し、対応できる人員は不足しがちだ。管理に欠かせない水質や処理設備の運用関連数値の記録を人手で行う負担も大きかった。こうした課題を解決するために監視制御システムが導入され、日本国内では大手電機メーカーが高機能なDCS(分散制御システム)による監視制御システムを構築した。しかし、大規模な水道事業を想定して各社がオリジナル開発しているために小規模な自治体の水処理施設には高価すぎることがさらなる課題となった。
そこでオルガノプラントサービスはグループの持つ水処理とエンジニアリングに関するノウハウ、PLC関連技術を活用し、中・小規模な施設にも導入しやすい独自の監視制御システムの開発に取り組んだ。
独自の既存監視制御システムはPLCでセンサーや稼働記録の数値を収集、蓄積。基準値を超えるなどの異常発生時にはアラート発信もする。これにより、従来よりはるかに低コストで水処理装置を監視制御が可能となった。しかし、新たな問題もあった。「既存の監視制御システムは独自に開発したオリジナル製品のため、カスタマイズや機能の追加・修正は開発を担当したベンダー1社に頼らざるを得ませんでした。プラントごと、お客様ごとに求められる設定や画面デザインが異なるため、カスタマイズの手間・時間が次第にストレスになりました。そこで、バージョンアップによって効率化を図りました。SCADA部分を汎用性の高いベースに変更することによってより扱いやすくし、コストを抑えて素早くお客様の要望に応えたかったからです」
と技術センターシステムチーム長の金田氏は話す。汎用性向上を目指し、国内トップシェアのSCADA『JoyWatcherSuite』をベースとした『オルトピアJ』は2014年にデビューした。『オルトピアJ』の開発・導入時をよく知るシステムチームの松下氏は
「海外製のSCADAも使いましたが、『JoyWatcherSuite』は国産なので安心できました。現場で困りごとが起きても障害調査やパッチ提供などの対応が早いし、国内で広く普及しているために対応できる人が多く、わからないことやトラブル発生時にも各方面に相談したり助言をもらえるのも助かりました」と語る。これまでカスタマイズ等はベンダーに依頼していたが、現在数名の技術センター所属社員が『JoyWatcherSuite』を研修中で、今後は社内で対応できる範囲を拡大していく予定だという。省人化、IoT化が求められるなか、『オルトピアJ』はオルガノグループの技術、ノウハウを様々な規模の施設で活用するためのツールとして実績を重ねている。
オルガノプラントサービスでは、さらに専門的な水処理装置の監視提供も行っている。水処理装置は交通不便な場所に無人設置されていることも多く、離島などの場合もある。水質データや設備の運用データに異常があっても管理自治体の担当者がすぐには確認が困難であったり、緊急性や重要度を判断できない場合もある。セキュアな閉域網のVPN接続を経由し、『JoyWatcherSuite』などで構築したシステムによってこうした水処理装置の水質データなどを24時間遠隔監視するのが「リモート監視センター」のサービスだ。
「現在10カ所以上の水処理装置を遠隔監視しています。本社内の「リモート監視センター」に24時間交代制で監視員が常駐していますが、異常発生の際はそのレベルによって担当者が不在でもアラートが届く仕組みになっています。すぐに対処が必要なのか、予備の設備が稼働しているからしばらくは大丈夫なのか、近々に修理・交換などが必要になるのか、などをお知らせすることでお客様の管理負担を低減して装置の確実な運用を支援します。私たちが現場に行くことができないため、必要な数値データが確実に届くこと、数値から的確な判断ができることが大変重要です。古くから継続して業務を受託してきた装置の中には『JoyWatcherSuite』以外で監視しているところもありますが、『JoyWatcherSuite』で構築したシステムが一番安定していて、監視システムの停止といった不具合がないため信頼しています」(「リモート監視センター」責任者)
将来に向けてさらに包括的なサービス展開も構想されている。
「最適な運用を実施する運転管理があり、装置が健全に動くように保つ維持管理があり、さらに必要な点検をどう実施していくかのメンテナンス計画へと発展させていく一連の流れに、弊社は取り組んでいます。まだ100%実現はできていませんが、水処理装置の設置から運用支援、定期点検、補修・更新をワンストップで最適化するところまで行きたいと考えています。その中の一つのキーが『JoyWatcherSuite』を使った遠隔監視装置です」(技術センターシステムチーム小松氏)
クラウド経由でより大量のデータを高速に転送する『JoyCloudConnect』への期待も大きい。『オルトピアJ』のオンプレミス運用で各地の水処理装置に蓄積されている膨大な水質関連データを吸い上げ、分析することによって、水処理技術のさらなる向上や装置の運用効率化が望めるからだ。
「原水の水質は気象条件や季節などの影響を受けて変化します。個々の水源、河川ごとにすべて条件が異なりますが、運用開始以来の約10年間に『オルトピアJ』が蓄積してきたデータをお客様のご理解の下、分析できれば、変化を予測したりより的確な運用や保守に活かすことができます。例えば膜ろ過装置の洗浄や交換をいつ行うのが一番効率的かがわかれば、より精緻な管理につながります」(技術センターシステムチーム長 金田氏)
オルガノグループのコア技術によって蓄積されたビッグデータが水処理技術の大きな転換点となるのかもしれない。貴重なデータの利活用のために『JoyWatcherSuite』がさらに貢献できることを期待したい。
※JoyWatcherSuite及びJoyCloudConnectは東京瓦斯株式会社、オルトピアはオルガノ株式会社の登録商標または商標です。
オルトピアJ:事業内容 - オルガノプラントサービス株式会社