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オーナーシェフに聞く「独立開業への道」

徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (2)

フランス料理はひとつの文化。
自分の理想のフランス料理を楽しんでいただくために、
これからも自分の価値観を高め続けたいと思います。

Part4. 厨房設計の工夫と課題

自分の経験とこだわりで厨房を設計、
ダクトの騒音対策ではたいへんな苦労を。

──厨房は、どのように設計されたのでしょうか。

花澤

厨房設計については、ホシザキ電機さんをご紹介いただき、プレゼンテーションをしていただきました。私のプランでは最初、中央にストーブを置くアイランド式にしたかったのですが、この店舗の条件では消防法に抵触するため不可能でした。また動線が非常に重要だと考えていましたので、できるだけ動きやすく、もし一人になっても仕事がしやすい厨房設計にしたいと思っていました。逆にいえば、今一緒に働いているスタッフにとっては少し動きづらいかも知れません。冷蔵庫のドアは左開けにするなど、すべて私一人を中心に設計していますから。

こうした厨房設計のヒントは、専門書などではなく、やはり自分の経験から生まれたものです。あとは、同じくらいの広さのお店を経営している知り合いのシェフに、厨房を詳しく見せていただき、大いに参考にさせていただきました。

──住宅街にあるお店として、特に留意したポイントは何でしょうか。

花澤

一番気をつかったのは、近隣の方々と良い関係を築かなければならないという点です。五本木の街並みは建物が非常に密接しています。店舗のビルは3階建てマンションですが、隣の建物とは1メートルも離れていません。従って、ダクトの騒音が非常に問題になるのです。

ダクトの騒音は、気になる人もいれば、気にならない人もいる、という微妙な周波数の音です。でも対策は絶対にしなくてはなりません。お金をかければ本格的な対策を講じることもできますが、開店時ですからコストは抑えたい。非常に悩んだあげく、フィルターを付けることで外への騒音を防ぐことにしました。

そのかわり、厨房のすぐそばにモーターがあるので、私と調理スタッフには非常にうるさくなりました。サービス担当スタッフが厨房の入口でオーダーを言っても、よく聞こえないこともあります。これはかなりのストレスです。しかしコストや近隣への迷惑を考えると、ここは我慢しなければと思っています。客席のお客様に聞こえるわけでもありませんから。

──花澤シェフが、特にこだわった厨房のポイントは何でしょうか。

花澤

全体の動線について工夫した以外には、調理場のシンクの数と位置です。最初のプレゼンテーションではシンクが一つしかなく、位置も不便だったのです。シンクはやはりストーブの近くにないといけないし、3つ欲しい。そのあたりは自分の考えを貫いて良かったと思います。

課題としては、ちょっとしたバックヤードが必要でした。玉葱を箱で置いておけるようなスペースです。マンションの階段下を使わせていただけないかとお願いしましたが、さすがに無理でした。今は、玉葱などはこまめに買うようにしています。

──厨房のエネルギーは、すべてガスだそうですね。

花澤

はい。ガスの方が慣れていますから。実はフランスで働いていた時に電気式も使いましたが、ちょっと水がかかると漏電したり、雷で停電すると何もできなくなったりという経験をしました。今の日本ではそういうことはないのでしょうけれど。でも今から電気式にしようとすると、専用の鍋を買ったりしてコストもかかってしまいます。

ガス式のストーブを導入する際、いろんなシェフに相談しましたが、みな口を揃えて「旧式にしたほうが良い」と言っていました。私はワンタッチで操作のできるデザインもすっきりした最新式に憧れていたのですが、それはオートマチックになっている分、融通がきかないのです。もちろん機種によるのでしょうが、外火と中火の微調整ができないとか、弱火にすることができないとか、修理費が高いとか…。以前務めていた青山ラブランシュや代官山ラブレーも旧式で、使い慣れていたこともあり、私のお店でも旧式を採用しました。