オーナーシェフに聞く「独立開業への道」
徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (2)
フランス料理はひとつの文化。
自分の理想のフランス料理を楽しんでいただくために、
これからも自分の価値観を高め続けたいと思います。
Part5. スタッフ、宣伝方法、メニュー構成
開店時のスタッフ確保や宣伝には一苦労。
メニュー構成では自分の夢やこだわりを大切に。
──スタッフは、どのように集めたのでしょうか。
- 花澤
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調理スタッフは、以前務めていたお店の友人から1人紹介していただき、私と2人でスタートしました。サービス担当スタッフは全然見つからなくて、前のお店のオーナーからやっと1人紹介してもらいました。女房は当時、保育園に入れなかった子どもの面倒をみていたので、働けなかったのです。今は昼間だけ手伝ってもらっています。
ですから開店時は、22席に対して、調理場2人、サービス1人だったわけです。でもそれでは無理でした。いざ開店してみると、不慣れな部分も結構あり、うまくいきませんでした。しわ寄せはお客様にいってしまいます。それはどうしても避けたかったので、自分の給料がなくなってもいいという決意で、たまたま応募してきた1人を入れました。現在は、調理スタッフが私を入れて4人、サービススタッフが2人で営業しています。
スタッフの採用基準で一番重要だと思うのは、やはり人柄です。やる気やまじめさはもちろんですが、冗談を言って笑いあえるような、一緒に気持ちよく働ける人が良いですね。
──お店の宣伝は、どうされましたか。
- 花澤
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お店の前に、開店御挨拶と自分の携帯電話番号を書いた看板を出しましたが、これは1件も電話はありませんでした。また当時は非常に暇でしたので、自転車で近隣の住宅街をまわってポスティングをしました。50枚入れて、来ていただけたのは1件くらいでしょうか。
以前働いていたお店のお客様には、前のオーナーに申し訳ないという気持ちから、ご案内はしませんでした。ただ本当に私の料理を気に入ってくださった3組の方には、丁寧なお手紙を出しました。
そのうちに、雑誌に紹介していただけるようになり、お客様が徐々に増えていきました。この雑誌掲載の効果は大きかったと思います。最近では口コミのお客様も増えたと感じています。
──メニュー構成には、どんな工夫をされましたか。
- 花澤
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メニューは、値段を決めたいわゆるプリフィックスタイプで、ランチは1800円と2800円、おまかせで5800円、ディナーは2品で3900円、3品で5800円、おまかせで8500円です。
ある友人からは「1000円のランチもやるべきだ」と言われました。1000円で4品からチョイスができるようにし、ミネラルウォターを付けるべきだ、というわけです。確かにそうすれば多分毎日満席になるとは思いました。しかし、やはり自分が何のために独立したのかを考え、悔いのないお店にしたかったので、1000円ランチは見送りました。自分の生活やお金も大切ですが、自分の夢や作りたい料理を実現するお店にしたかったのです。
欲をいうならば、私は今後もっと高いメニューもお出ししたいのです。もちろんお客様の声を聞きながら、試行錯誤を繰り返しながらですが。高くするかわりに、例えばサーブススタッフを1人増やすとか、夜は1席減らしてゆったりした雰囲気を作るとか、メニュー内容をさらに工夫するとか、何らかの付加価値をつけていきたい。お客様に快適な空間で美味しいフランス料理を味わっていただき、自分の価値観を認めていただけるよう努力したいと思います。
Part6. 独立開業を目指す方へのアドバイス
自分のモチベーションを維持することができれば
独立開業しても大丈夫。自分の価値観をさらに高めたい。
──これから独立開業を目指す方へのアドバイスをお願いします。
- 花澤
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私の先輩のオーナーシェフは、「独立するなら早くしたほうがよい」「とにかく自分でやったほうがよい」とおっしゃいます。私はもともと独立心がそんなに旺盛ではなかったのですが、やはり独立したいという気持ちが少しでもあるならば、どこかのタイミングで実行に移した方がよいと、今では思っています。
自分では、独立開業で後悔していることはありません。もちろん苦労はあります。でも、例えばお客様が少なくても、ビラ配りを一生懸命したり、対策を考えること自体も楽しいものだと思います。また開業資金がなくても、本当に独立したいという気持ちがあれば、借りることができます。それは決して恥ずかしいことではありません。
毎日の仕事のなかでは、時として体調が悪かったり気分が乗らないときもある。でもお客様はその1回のご来店を大切に思って来てくださいます。暇な時にはお客様が1組みしかいらっしゃらないこともあります。そういう時でも、お客様のために真剣に料理しようという気持ちだけは持ち続けたいと思います。お客様が来なくても、掃除だけはしっかりしようというように、自分のモチベーションを維持することができれば、独立しても絶対に大丈夫だと思います。
私は、フランス料理はひとつの文化だと考えています。ただ単にお腹がいっぱいになるのではなく、食事中の会話、時間、そしてすべての料理を楽しんでいただきたい。お客様が席に着かれて、メニューを選ぶことも大切な楽しみです。ご来店いただいたお客様に豊かな時間と空間を楽しんでいただけるように、自分自身の価値観をさらに高めていきたいと思っています。
- フランス料理 ボンシュマン
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- [所在地]
- 東京都目黒区五本木2-40-5 Beat101
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