地元の料理店を徹底的に食べ歩きリサーチ。
店舗物件は、土地・建物の購入方式がおすすめ。
──独立開業の資金は、どのように工面されたのでしょうか。
- 小倉
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まず、自分がどこに、どんな店を出すかを考えました。東京で勝負しようかという思いもありましたが、やはり長く店を続けるためには、波が激しい都会よりも、実家があり友人もたくさんいる三重県で出店し、地域に貢献していきたいと考えました。それから本屋さんで「個人事業の始め方」とか「カフェの始め方」などの本を買い、電車の中でずっと読みながら構想を練りました。
出店した場所は、伊勢神宮と松阪牛で有名な松阪にはさまれた多気郡明和町という所です。28席のお店で、周囲は田んぼだらけです。最初の目論みでは、商業地区・松阪の人口10万人と、伊勢の10万人、そして私の住んでいる町の2万5,000 人が、車で30分程度の圏内ですので、来店していただけると思っていました。しかし無名な場所では観光客が呼べないというのが弱点で、出店当初は少し困りました。
たとえば、インターネットで「伊勢市 フランス料理」で検索するとします。しかし、それでは私の店は絶対にヒットしません。逆に、伊勢、松坂、伊勢志摩、スペイン村など、観光地として有名な地名を活用すれば、ネット検索でも非常に強いのです。そして良いホームページを準備しておけば、観光地から多少離れていても観光客は確実につかめます。
──地元でお店を出すと決めてから、リサーチを兼ねた食べ歩きもされましたか。
- 小倉
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はい。片っ端から食べ歩きをしました。その行き先は、自分の狙っている客層が行っていそうなお店です。具体的には、イタリアンとフレンチの店で、開店前にはほとんどに行きました。価格帯やメニューを自分の目と舌で確かめ、地域の特長をつかんでいきました。
たとえば、高級志向のフランス料理を出すとします。その場合は、同じ価格帯の料亭の話も聞きに行きます。そして食べに行った時に「実は将来、この辺で店を出そうと思うんですが」と声をかけ、そのシェフと仲良くなっておきます。そうすることで後々、自分で仕入れ業者を探すときに助かりますし、その地域の情報がいっぱい入ってきます。どこのシェフもいやな顔はしないし、喜んで話してくれると思います。
──店舗物件には、買う、借りるなどいろいろ選択肢がありますが、どう考えましたか。
- 小倉
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3つの選択肢があると思います。第1は、居抜き物件を活用して低資金でオープンする。第2は、テナントを借りて自分で改装する。そして第3は、自分で土地を買って建物を作る。それぞれにメリットとデメリットがあると思います。
第1の居抜き物件は、厨房機器もそろっているし、何よりも水道の配管やグリストラップなどにお金がかからないメリットがあります。特に田舎では下水道が通っていないところもあるので、それだけで400 万円かかるということもあります。しかしデメリットは、前のお店のイメージが残っており、たとえば「あそこは何をやってもあかんとこなんや」というイメージが残っていたりしますので、そこに気をつけなければいけません。
第2のテナント方式ですが、田舎ではテナントで入りづらい面もあります。また1番目の居抜き物件の場合の費用は400〜500 万円ですが、テナントの場合、内装等を変えるなど自分で全部リニューアルするとなると、1,000 万円は軽く超えます。その借入金返済と毎月の家賃負担は、かなり大きな金額になります。
これを踏まえて、第3の自分で土地を買って建物を作るという選択肢ですが、自分が長いこと続けていける自信があったら、これがお勧めではないかと思います。というのは、購入した土地や建物は後々自分の財産になります。また仮にうまくいかなかった場合でも、そこを賃貸に出せば何とかその店は維持できるというのもメリットです。最初にテナントとして借りて、その後事業を大きくしていくという人もおられますが、最初でつまずくとその夢はつぶれてしまいます。長い目で見た場合、私は買うのがお勧めだと思います。