昔から温め続けたイメージどおりの物件を即決。
資金も含めすべての面で、「自分で調べる」ことが重要。
──開業は2009年6月ですが、その準備は何から着手しましたか。
- 「お店づくりセミナー」では、まず試食から。
- 真中シェフのお話に、参加者は熱心に耳を傾けました。
- 真中
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やはり物件探しです。私の場合、当時勤めていたお店の了解を得て、開店準備を同時並行で進めることができました。3時頃までお店に勤めて、その後は自分の開業準備をする。その猶予期間を半年間いただいていました。いま勤めているお店の了解を得ること、そして迷惑をかけないことが、非常に大切だと思います。
物件探しでは、友人から「100〜150件は見た」と聞いていましたが、私は3件見ただけで決めました。というのも、私は料理人になってからずっと、自分が新規開業する際のお店のイメージを決めていたのです。それは「角地で半地下、そしてテラス付き」という物件の条件です。その後、何十件も紹介されましたが、今のお店があるこの物件しか頭にはありませんでした。
実は、申し込みをしてから3カ月間、大家さんから返事がありませんでした。この物件は人気があり、50人以上がエントリーしていたのです。大家さんは、この物件を任せられる人を慎重に選ぶために、その人が働くレストランへ行って食事をしたり、綿密な調査をされたようです。ご了解を得るまでにはかなりの時間がかかりましたが、「決めたからには、ここでずっとやっていくのだ」と腹が決まりました。
──物件が決まると、次は資金面の準備が必要ですね。
- 真中
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はい。資金面でいちばん重要なことは、決めた物件で開業する時に、設備投資を含めた初期費用と、家賃などの運転資金が、自分の資金と見合っているかということです。
必要資金が足りない場合には借り入れをするわけですが、半分は自己資金でないと厳しいと思います。3分の1くらいで始める方もいるようですが、借り入れは少ないほうが危険性も減ります。また、どの金融機関から借りるかも重要です。飲食店の方は国民金融公庫(現在の日本政策金融公庫)から借りることが多いようですが、私が調べたところ、当時の利子は2.5%でした。ところが港区の制度融資を使うと、利子は0.5%だったのです。この差は大きいと思います。資金面だけではなく、開業に関わるすべての面で、自分の目と足で調べてみることが、とても大切だと思います。
──資金調達の際には事業計画書が必要ですが、作り方のコツなどありますか。
- 真中
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わかりやすく作ることがポイントですね。自分がわかるだけではダメで、相手にわかっていただかなくてはなりません。私が作った事業計画書は、15ページくらいでした。最初に目次を入れて、その後に、「コンセプト」「1日の売上・利益」などを入れ、さらに1カ月、1年、3年、5年と数字を入れた具体的な事業計画を作成しました。
「コンセプト」を伝える時には、カラー写真を添付しました。相手の方も、お店のイメージや周辺環境のイメージ、料理のイメージなどがとてもわかりやすくなると思います。自分の考えていることを、いかにわかりやすく伝えるかが、一番のポイントだと思います。
──どなたかに相談されたり、助言をもらったりされましたか。
- 真中
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特別な方はいませんでしたが、周囲の人全員が協力者だと思って接するべきだと思います。ただし、人からお話を伺って、そのまま実行するのではなく、自分でしっかりと考えてから行動に移すべきです。自分で商売をする時には、自分ひとりの決断が何よりも大事です。