1. 最適厨房ホーム
  2. オーナーシェフに聞く「独立開業への道」
  3. 徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (4)

徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (4) ─ 自分で調べ、自分で考え、自分で工夫する。独立開業を成功させるためには、謙虚な気持ちと決断力がとても重要です。

Part4. 店舗のコンセプトと運営方法

お客様一人ひとりをよく見て、謙虚に対応。
仕入れ先との関係も、手間暇かけて大切に。

──2009年6月に、めでたく新規開店されました。開店以来、シェフがこだわっているお店のコンセプトを教えてください。

真中

私の店では、ランチを1,200円で、ディナーを2,100円でお出ししています。ランチに関しては、周辺はオフィス街ではないので、グループではなく一人で食事をする方が多いのです。そこで、800円や1,000円ではなく、1,200円という価格設定にし、お一人でも満足できる料理をお出ししたいと考えています。

またディナーについてですが、このあたりは夜になると、人通りも車もまったくなくなるのです。自宅に帰る人といっても、東麻布に住んでいる人は3,000人くらいしかいません。そこに飲食店が70軒近くあるのです。ただ調べてみると、地元の人が気軽に食事に行けるお店がなかった。そこで価格を安く設定し、犬連れの方、シガーを嗜まれる方など、いろんな方に来ていただけるようにしました。テラスを終日開けているのも、それが理由です。

実は終日営業のカフェテラスの原価は、通常の料理に比べると非常に安いのです。その利益をディナーに回して営業しています。テラスではゆっくり時間を過ごしつつ、本を読まれているお客様もたくさんいます。この界隈のお客様のニーズがそこにあるならば、それに合ったお店づくりをすることが必要だと思います。

──お客様と良い関係を保つために、心がけていることはありますか。

真中

料理もそうですが、カッコつけずに気軽にやることでしょうか。独立する前に料理長を務めていたお店は、フレンチの名シェフである音羽和紀さんのプロデュースなのですが、音羽さんから「フランス料理だからといって固くなってはいけない。お客様一人ひとりをよく見て、つねに謙虚に生きていかなければいけない」と教えていただいたことも影響していると思います。

ただ、食材や食育という面では、料理人としてお客様にきちんと伝えなければいけないと思っています。例えば、お客様がニンジン嫌いだったら、私もどうしたら食べていただけるかを考えます。またここ1年で2回、お客様を連れて長野の生産者の畑に行き、農家の大変さを実感していただくような取り組みもしています。

──食材の仕入れは、どのようにされていますか。

真中

いま仕入先は25件くらいで、この規模のお店としては多いと思います。そのなかには、野菜だけを直接仕入れる農家が3件あり、毎週替わりで送っていただいています。魚も函館と沼津から産直で仕入れていますが、市場からの仕入れより安くて、鮮度も1週間くらい日持ちが違います。生産者から直接仕入れる産直の方が、やはり良いと思います。

もちろん、手間はかかります。インターネットで調べた産地の野菜を実際に食べてみて、気に入ったら、その生産者を直接訪ねるのが良いでしょう。料理人と生産者が一緒になって、はじめてひとつの料理ができると思っていますので、仕入先は大切にしたいですね。そう考えていると、ワインも含めて、仕入先はどんどん増えていきます。

──イベントなど、販売促進のための取り組みはいかがですか。

真中

夏には「ワンコインパーディー」を行いました。ピンチョスを20種類程度とビールを用意して、それを500円のキャッシュオンでやりました。お客様は50人くらいでしたでしょうか。

ただ私は、イベントが先にあるのではなく、一人ひとりのお客様を大切にすることが何よりも重要だと考えています。そうすると、お客様がイベントを企画してくれる。いま月2回ほどイベントを実施しますが、お客様や仕入先の方が作ってくれるイベントが多いのです。