1. 最適厨房ホーム
  2. オーナーシェフに聞く「独立開業への道」
  3. 徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (5)

徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで (5) ─ 地元に根付いた息の長いお店にしたい。いつも真摯にお客さまと向かい合いたい。その姿勢を常に持ち持ち続けたいと思います。

Part2. 店舗物件の選択と、資金調達方法

物件探しは、不動産屋さんとインターネットで。
資金調達にはしっかりとした文書の作成が不可欠。

──独立に向けた準備と、そのノウハウについて教えてください。まず物件探しはどうされましたか?

「お店づくりセミナー」では、参加者は熱心に天下井シェフの話に聞き入りました。
厨房を説明する天下井シェフ。厨房の配置や機器選定はシェフ自ら行いました。厨房 機器は使い慣れたガスを選択。
天下井

当時私は広尾に住んでいたのですが、休みのたびに、月島、恵比寿、広尾、目黒、代官山、田園調布、武蔵小山、久我山、吉祥寺と、結構探し回りました。まあ、実際には私の奥さんが探してくれたのですけれど。

具体的な探し方は、2つです。まず地元の不動産屋さんを回ること。もう一つはインターネットです。ネットでは「飲食店.COM」などのホームページに、希望の坪単価と広さ、立地条件などを登録しておくと、不動産屋さんから資料が届きます。出店計画セミナーなどのご案内もきます。登録料などは無料ですから、便利でした。

資料を見たのは約100件、実際に足を運んだのは40〜50件くらいでした。働きながら、約10カ月かけて見て回りました。最終的に現在の荻窪の物件に決めたのは、「1階の角地」という自分のこだわりがあったからです。

地下のお店で何度か働きましたが、地下にいると地上で何が起こっているかわからない。雨が降ってきても、地下ではその匂いが伝わってきません。だから1階にこだわったのです。それと今の物件は17.87坪で、ゆったりとした席で食事をしていただけるのも気に入りました。

──物件を決めたあとは、資金調達です。これは、どのように計画されましたか?

天下井

まず、井川直子さんの「僕たち、こうして店をつくりました」(柴田書店)という本に掲載されていた「シエル・ドゥ・リヨン」というお店の事例を参考しました。このお店は国立にあるお店で、家族経営されていることもあり、その様々な数字はとても参考になりました。実際の予算の立て方は、冷蔵庫や冷凍庫などの欲しいものを積み上げていって、最後に削ぎ落とすという感じでした。

開業資金は1,800万円で、自己資金が1,000万円、残りの800万円は日本政策金融公庫から借入ました。銀行や不動産屋さんには、自分と奥さんの職務経歴書や、企画書、収支計画書などを提出するのですが、自分たちがやりたいことをしっかりとした文書にすることで、信用していただいたり、印象づけることができるのだと思います。

物件取得には保証金が必要です。また設計管理費、内装工事費、厨房設備費などの設備投資に大きなお金が必要です。また仕入れ代や人件費などの運転資金も準備しなくてはなりません。お金はいくらあっても足りないのです。私は、友人に内装デザインをお願いしました。その彼と自分の友人関係をたどったり、インターネットで業者を捜して相見積を取ったりして、とにかくすべての初期費用を1,000万円でおさめるようにしました。

その他、家賃を売上目標の10〜12%におさえるとか、消費税が発生する時期を考えて開業を1月にするとか、借入金の返済は最初の3カ月は利息だけにするとか、とにかく綿密な資金計画を検討したのです。