自己満足ではなく、お客さまの声を常に聞くことが大切。
地元の方々と仲良くし、地元に根付いたお店にしたい。
──売上計画は、どのように立てたのでしょうか?
- 天下井
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いちばん最初の価格設定は、ランチを1,000円、夜は2人でワインを1本入れていただいて1万円(1人5,000円)にしようと思いました。開店前に荻窪界隈を歩いた時に、ランチは680円とか850円でしたので、それを参考にしたわけです。
ただ荻窪駅の南側は高級住宅街でしたので、1月5日の開店時のランチは1,300円にしました。さらに2週間後には1,500円に変更し、週末の土日は2,100円にしました。立地環境に合った価格にしたということです。夜は4,500円のプリフィックスとしましたが、2年後から消費税を納付することも考えて4月1日からは4,700円にしました。
売上計画は通常、客単位×席数×回転率×日数で決まります。私の場合、席の回転は考えず、20席の回転率を0.8と設定し、売上計画を立てました。
──どんなお客さまをターゲットとして考えたのでしょうか?
- 天下井
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荻窪駅南口という立地の特性から、特に中高年の女性を意識しました。実際、ランチは95%が女性の方で、しかも多くは40〜50代の方です。20代の方はほとんど来店されません。最初の頃はOLやビジネスマンの方も多少見えていましたが、今では来られません。
いろんな食の経験をお持ちで、ヨーロッパなどへも旅行をされていて、地元のお店で落ちついた席でゆっくり食事をしたい、という方々をお招きしたいを考えました。価格設定や、野菜を豊富に使ったメニュー構成も、そうしたお客さまを想定したものです。
自分が作る料理と、お店の場所がうまくマッチしているかは、とても重要です。たとえば銀座のお店の料理を荻窪でお出ししても、たぶん満席にはなりません。その逆もしかりです。地元密着でお店を経営する場合、どんな方がお見えになって、何を求めているのかを、しっかりと考えることが大切だと思います。自己満足で終わらず、お客さまの声を常に聞きながら、料理やサービスを真摯な態度で続けていく。それが重要です。
──地元密着という場合、周辺の方々との関係も大切ですね。
- 天下井
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はい。不動産屋さんやご近所の方から信頼されるために、コミュニケーションは大切です。開店前には、近所のお店に入って「この近くでフランス料理をやりますが、どうでしょうか?」とリサーチも兼ねた関係づくりをしたり、工事前には周辺のお店にお菓子を持ってご挨拶に行きました。
それから私はお酒が好きなので、開店前からこの界隈のバーなどによく行きました。すると、そのバーの方が私のお店を紹介してくれたりします。また目の前に洋服屋さんがあるのですが、「天下井さんのお店、美味しいという評判だよ」と、ご近所の方に薦めてくれました。地元の方々と仲良くすることは、とても大切だと思いますね。
──集客のための広告宣伝は、何かなさいましたか?
- 天下井
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「食べログ」には登録しました。またオープン前1カ月間、お店の前にショップカードを置いたのですが、4,500枚のカードが全部なくなりました。それ以外は特に集客のための施策はやっていません。おかげさまでいろんな雑誌から取材の依頼がきますが、荻窪という地元に根付いたお店を作りたいので、すべてお断りしています。