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オーナーシェフに聞く「独立開業への道」

徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで ⑥

青山に野菜畑を作り、野菜の魅力を
引き出すイタリア料理をご提供したい。
それが独立開業時のコンセプトでした。

HATAKE AOYAMA
取締役総料理長 神保佳永 氏
1977年茨城県日立市生まれ。漁師の祖父、イタリアンシェフの父のもと、幼少時から食材の大切さを身につける。一度は教師への道を目指すが、父の影響を受け、料理人になることに。辻調理師専門学校を卒業後、銀座「ベルフランス」を経てヨーロッパへ、フランスから始まりイタリアへまわる。数々のグランメゾンでの修行を積み、2002年帰国。丸の内「サンス・エ・サヴール」、浦安「ホテルエミオン東京ベイ」洋食総料理長、「Restaurant I」総料理長を経て、2010年6月自身のHATAKE AOYAMAを独立開業し、総料理長に。野菜を多く使う料理が特長で「野菜の魔術師」とも称されている。

Part1 野菜との出会いから生まれたコンセプト

「野菜は高級食材の脇役ではない」という
気付きから生まれた斬新なイタリア料理。

──「HATAKE AOYAMA」のコンセプトを教えてください。

神保

独立開業にあたって、野菜の魅力を引き出すイタリア料理を青山で開業したい、と考えました。そしてインパクトを強くするために、店名に「畑」という言葉を入れ、実際にお店の中に畑を作ろうと思ったのです。

エントランスの横の畑で、たくさんの野菜が栽培されています。

お店の客席から見える小さな畑では、プランターで様々な野菜を育てています。収穫量は多くはありませんが、料理に使われる野菜を見ながら食事をしていただくことができます。畑のある青山のお店で、野菜の魅力満載のイタリア料理をご提供する、それが「HATAKE AOYAMA」のコンセプトです。

──なぜ「野菜」だったのでしょうか?

神保

独立開業を契機として、実は野菜に対する考え方が大きく変わりました。それまで野菜は決して好きではなかったのですが、それが180度変わったのです。

私は、調理師専門学校を出て、海外に修行に行き、帰国してからは高級レストランで働きました。そこで提供される料理は、フォアグラ、キャビア、トリュフ、和牛といった高級食材を使ったもので、それが料理だと考えていたのです。野菜はあくまで脇役で、形と色の見栄えが良ければそれでいいと思っていました。

ところが、いざ独立開業をするとなると、お客様単価を以前の高級レストランのような高値には設定できません。せいぜい1万円で、それでも高いと思っていました。高級食材は使えないし、使うならば質を下げなければならない。これまでのやり方では、料理が美味しくならないと、非常に悩みました。

そんな時、あるトマト農家の方と出会い、栽培されたトマトを食べる機会がありました。これが本当に美味しかった。その感動を農家の方に伝えると、「ウチの畑においでよ」と誘われたのです。

それまで私は、野菜の畑には行ったことはありませんでした。FAXで注文すれば翌日届くのが野菜だと思っていました。畑に行って、トマトの茎や枝や実をじっくりと見て、土壌環境や栽培方法についても話をお聞きし、生まれて始めて野菜の魅力と価値に気が付いたのです。

ひょっとしたら、料理とはもともとシンプルなものなのではないか。野菜本来の味に着目すれば、料理はもっと美味しくなるのではないか。そして、それこそが自分が目指すイタリア料理ではないのか。そんな気付きがありました。

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