オーナーシェフに聞く「独立開業への道」
徹底インタビュー/私のお店が出来上がるまで ⑦
試行錯誤から誕生させた「ヒット商品」と、
感謝の心から生まれる「高い接客力」で、
「行列のできる蕎麦店」を実現できました。
Part2 口コミ評判も接客力も、自ら独自に生み出す
横浜高校の甲子園優勝記念セールが大当たり、
新メニュー開発も接客も、オリジナルが大切。
──「きざみ鴨せいろ」は大ヒット商品になりましたが、どのような販売促進を行ったのでしょうか。
- 平沼田中屋の外観。立地条件が良くない裏横浜で、昼食事には常に行列ができる繁盛店です。
- 鈴木
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「きざみ鴨せいろ」を商標登録し、店のオリジナルメニューとして定着しましたが、そうはいっても一日10杯までは行きませんでした。何らかの販売促進策が必要だと考えていました。
平成10年夏の甲子園大会で、松坂投手の横浜高校は決勝戦をノーヒットノーランという快挙で優勝しました。その前日の準決勝で勝利した時、あるアイデアが浮かんだのです。「優勝記念として、きざみ鴨せいろの半額セールをやろう!」と。優勝した翌日に実施したところ、なんと120杯のご注文をいただきました。それから口コミで評判が広がり、1日平均して30杯の注文をいただけるヒット商品になりました。現在では1日100杯前後の注文があります。
オリジナルメニューの開発は、常に続けてきました。当店のもう一つの看板メニューである「カレーうどん」のルーも、半年かけて開発しました。カレー粉を調べて数十種類を仕入れ、耳かき1杯の精度でブレンドを繰り返す。これを毎日、半年間やり続けました。
現状に満足せず、もっと上を目指すという意欲を持ち続けることが大切なのだと思います。
──接客の重要性について、従業員の皆さんに繰り返し説いていると聞いています。
- 鈴木
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- 平沼田中屋の店内。食事や会話の妨げにならないよう、気配りされた穏やかな接客がなされています。
はい、お客様に来ていただくために、従業員の接客についても考え抜きました。食べ歩きをした時に、繁盛店に共通するのは高い接客力だと気が付いたからです。
接客力とは、従業員がどういう気持ちで働いているか、ということです。挨拶、返事、謝罪、感謝、そこに心を込められるかが非常に重要だと思っています。ですから、話し方や態度、器の下げ方やレジの打ち方、お見送りの仕方にいたるまで、お客様の気持ちに寄り添って、感謝の気持ちを伝えようと日頃から言っています。
新メニュー開発も、販売促進も、接客も、自分の実体験から生み出してきました。コンサルタントの話も聞き、専門誌も購読し、常に新しい情報を収集しつつ、そこからオリジナルを生み出していくという姿勢が大切だと思います。