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先進ガス厨房事例[第13回] エディション・コウジ・シモムラ

DATA
[所在地]
東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1階
[電話]
03-5549-4562
[HP]
http://www.koji-shimomura.jp/

食通たちの舌を唸らせ続けた下村シェフが、徹底してこだわった「理想の厨房」とは?

エディション・コウジ・シモムラ

「料理で感動を与えるシェフ」、「フランス大使館が惚れ込んだシェフ」と評される下村氏。2006年9月に乃木坂のフランス料理店「FEU」を退いて以来、待ちわびた多くのファンの期待に応えて、2007年7月30日、六本木に「Édition Koji Shimomura(エディション・コウジ・シモムラ)」をオープンしました。
フランス料理の神髄を守りつつも、つねに新鮮なサプライズのある「下村琉」の味わいを作り出す下村シェフは、その経験とノウハウを生かした極めて先進的な厨房設計を実現しています。
下村氏がオーナーシェフとして初めて取り組んだ「理想の厨房」、そこに込めた思いを、じっくりと伺いました。

1. 下村流「最適厨房」の設計コンセプト

下村浩司オーナーシェフ
下村浩司オーナーシェフ
1967年、茨城県生まれ。大阪辻調理師専門学校卒業後、都内フランス料理店勤務を経て22歳で渡仏。多くの2つ星・3つ星レストランで8年間修業後、2001年より「レストランFEU」料理長に就任。2002年に世界的権威のある料理大会「ウェッジウッド・アワード」の日本代表にノミネートされ、2004年にはアラン・デュカス氏主催のフランス大使館パーティの料理を任されて絶賛される。2007年7月30日、「エディション・コウジ・シモムラ」をグランドオープン。

「自然の風が入口から入り、窓からすうっと抜けていく、それが私の理想の厨房です」と下村氏。その言葉には、多くのフランス料理店で腕を振るった経験とノウハウに基づく、下村氏の厨房に対する熱い思いが込められています。
「具体的にいうと、お店はお客様だけではなく、スタッフにとっても快適でなくてはならない、ということです。スタッフが働きやすい厨房環境になっているか。プロの料理人にとって真に使いやすい厨房機器が設置されているか。そして最適な作業動線やコミュニケーションが確保される厨房レイアウトになっているか。こうしたさまざまな要素が組み合わさってこそ、理想の厨房が実現するのだと思います。」(下村氏)
この下村氏のコンセプトは、「エディション・コウジ・シモムラ」の厨房のいたるところで実現しています。その多彩な工夫の一端をご紹介しましょう。

2. 「快適性」を実現する換気天井システム

換気天井システム
天井全体に設置された換気天井システム。加熱スペースの調理排気を吸い上げ、デザート皿が並んだコールドテーブルに冷気が降り注ぎます。凹凸がない形状はデザイン的にも美しく、音も静かです。夏でも驚くほど涼しい厨房を実現しています。

「エディション・コウジ・シモムラ」の厨房は、約13坪。40坪ある店舗施設全体の3分の1を占めています。また表通りに面しているのは、客席ではなく厨房。その理由を、下村氏は次のように語ります。
「客席と厨房のスペース配分については、本当に悩みました。でも働くスタッフが快適でなければ、良い料理は作れません。厨房から外が見えるようにしたのも、スタッフがその日の天候を感じ取り、ご来店いただくお客様の気持ちを察して調理ができるようにしたかったからです。」
厨房には換気天井システムを設置、天井全体が換気フードの役割を果たすこのシステムにより、効率的な換気を実現しました。厨房内を涼しく保つことが可能となり、スタッフが快適な環境で働けると同時に、衛生性も向上しました。またコンロやグリドルなどの熱源から出た暖かい調理排気が自然に吸い上げられ、逆に給気された冷たい空気はデザートなどを調理するコールドテーブルの上に降り注ぐため、厨房レイアウトにも合致した空調が実現しています。

3. レイアウトの工夫

三方開放型の機器
シェフの視線で見た加熱スペース(手前)とサービステーブル(奥)。調理からサービスに至るまで、シェフの視線を遮るものは何もありません。サラマンダーも、サービススタッフが全方向から皿を取り出せるよう、三方開放型の機器が選択されています。

厨房レイアウトにも、下村氏独特のこだわりがあります。壁に向かって作業をするのではなく、シェフからスタッフ全員の動きが見渡せる厨房レイアウトを採用。またシェフの視界をさえぎる棚などを排除し、厨房内のコミュニケーションが円滑になる工夫がなされています。
さらに、食材の保管→下処理→調理→盛り付けの作業動線に合わせて、厨房設備を冷蔵庫→加熱スペース→サービステーブルの順に配置。また、サービステーブルはサラマンダーを境として、コールドスペースとホットスペースが設置され、料理が最適な温度で盛り付けられるようになっています。

4. 多様な素材と調理法に対応したガス厨房機器

下村氏が設置したガス厨房機器の内訳は、コンロ(4口)、プラック(1台)、グリドル(1台)、オーブン(1台)、スチームコンベクションオーブン(1台)。サラマンダーは電気式を採用しています。
「厨房機器は、ガスを基本に考えました。フランス料理は、素材も多様ですし、加熱・調理方法もいろいろあります。従って、熱源が目で見えて、炎を自在にコントールできるガス式が、やはり最適なのです。」
同時に下村氏は、「ガス式でも電気式でも、素材と調理方法に最適なものを選ぶべき」と指摘します。
「サラマンダーを電気式にした理由は、安定した弱火が必要だったからです。焼き色を付けたりする場合にはガス式がよいのですが、電気式には低温が安定しているという良さがあるのです。また同じガス式でも、たとえばグリドルとコンロとでは使い方が異なります。アロゼというフレンチの技法、つまりフライパンを傾けて底にたまったバターを肉の上からかけることで、炎とバターの両方の熱で加熱する調理法は、ガスコンロでしか出来ません。逆にグリドルは鉄板が厚いので、素材を載せても温度が下がりません。ですから魚介類などの表面だけに薄く火を通して香りを立たせたい場合などには、グリドルが最適なのです。特に、ガス式のグリドルの場合、内部にH型バーナーが2台、横2列に並んでいるので、右側のみを点火したり、左側は半分のみ点火したりと、状況に応じて細かい火加減を調節し、メリハリのある使い方が可能です。シェフの感覚で温度ムラを自在に使い分けることができるわけです。」(下村氏)

下村シェフ特注のグリドル
下村シェフ特注のグリドル(中央)。コンロ(右手前)とグリドルの間の仕切り壁を外し、使い勝手を向上させました。またグリドルの油がコンロ側に流れないよう、溝を作っています。さらに、グリドルの仕切り壁の接合部分に油が溜まらないよう、ハンダ付けでR加工が施されています。
スープレンジ
グリドルの横には、フォンドボーを取るスープレンジを設置。毎日は使わないため、通常は特注のステンレス製の蓋をかぶせて作業台として活用、デッドスペースを極力なくしています(写真は蓋をかぶせたところ)。
保温用のシェルフ
コンロ・グリドル・プラックの加熱スペースの上に、保温用のシェルフを設置。それぞれの機器の放熱特性が異なるため、また調理排気部分に角度をつけることで、シェルフ上の食材への加熱度合いを使い分けられるようになっています。シェルフの奥行きは、調理中に頻繁に使うパイ皿の直径に合わせて設計。高さももっとも使いやすくなるよう、シミュレーションを重ねたうえで決められました。

下村シェフが20年来の思いをもとに実現した理想の厨房、それは快適性と調理性をコンセプトとした独自の工夫の集大成です。お客さまに感動を与える料理は、こうした厨房からこそ生まれるものなのでしょう。

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