厨房作りのヒント
設計・施工前に知っておきたい
最適厨房の「常識&非常識」
質問4 電気はガスの換気量の半分てホント?
店舗の厨房では油を大量に使うので、換気が気になります。
電化厨房にすると、換気量が半分で済むって本当ですか?
いいえ。熱源にかかわらず、快適な厨房環境には十分な換気が必要です。そして換気量を考えるポイントは、次の2点です。
1 国のガイドラインが推奨している換気量は、
ガスも電気も同じです。
図4は、厨房の必要換気量に関する、各種の算定方法を示したものです。換気量の算定方法には、次の3種類があります。
- 「フード部の面風速」に基づくもの
- 「機器の消費量」に基づくもの
- 「厨房室の換気回数」に基づくもの
国土交通省のガイドラインでは、いずれか大きい値になるものを採用することを推奨しており、一般的に最大値となる「フード部に面風速」に基づくものが採用されています。この方式は、換気フードの面積から換気量を算定することから、原則、ガスも電気も同じ計算式となり、従って導き出される必要換気量も同等となるのです。
※出典:令和3年度「建築設備設計基準」第4編 空気調和設備 第4節 火を使用する室の換気
- 図4:ガス厨房と電化厨房の必要換気量算定方式
- ガス機器の換気量計算
-
ガス機器
機器名寸法 数 ガス消費量
(kW/台)ガス消費量
(kW/計)フード フード面積
(m2)I換気量
V=厨房容積×40
(m3/h)II換気量
V=40K・Q
(m3/h)Ⅲ換気量
V=フード面積×フード部面風速0.3m/s×3600
(m3/h)間口
(mm)奥行
(mm)高さ
(mm)間口
(mm)奥行
(mm)立体炊飯器 780 815 1,340 2 26.8 53.6 2,100 1,000 2.1 - 1,994 2,268 スチームコンベクションオーブン 847 771 1,713 2 24.4 48.8 2,400 1,200 2.88 - 1,816 3,111 回転釜 1,259 906 1,645 1 23.3 51.2 3,100 1,200 3.72 - 1,905 4,018 ティルティングパン 1,310 1,050 850 1 27.9 ガステーブル 1,200 600 850 2 42.0 84.0 1,500 1,500 2.25 - 3,125 2,430 ガステーブル 900 600 850 1 28.7 45.5 1,200 1,500 1.8 - 1,693 1,944 フライヤ 450 600 850 2 8.4 食器洗浄機(ガスブースター) 2,850 850 1,645 1 66.3 66.3 2,400 1,000 2.4 - 2,467 2,592 合計 349.4 15.15 10,560 13,000 16,363 - 電気機器の換気量計算
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電気機器
機器名寸法 数 ガス消費量
(kW/台)ガス消費量
(kW/計)フード フード面積
(m2)Ⅵ換気量
V=フード面積×フード部面風速0.3m/s×3600
(m3/h)間口
(mm)奥行
(mm)高さ
(mm)間口
(mm)奥行
(mm)立体炊飯器 760 725 1,063 2 13.0 26.0 2,100 1,000 2.1 2,268 スチームコンベクションオーブン 900 800 1,655 2 19.1 38.2 2,400 1,200 2.88 3,111 回転釜 1,190 930 850 1 10.2 23.7 3,100 1,200 3.72 4,018 ティルティングパン 1,310 960 850 1 13.5 IHテーブル 1,200 600 850 2 15.0 30.0 1,500 1,500 2.25 2,430 IHテーブル 900 600 850 1 10.0 22.0 1,200 1,500 1.8 1,944 フライヤ 450 600 850 2 6.0 食器洗浄機(電気ブースター) 2,850 850 1,645 1 40.0 40.0 2,400 1,000 2.4 2,592 合計 179.9 15.15 16,363 - 条件等(ガス厨房・電気厨房)
-
- 厨房室面積:110m2(ガス厨房・電気厨房)
- 厨房室高さ:2.4m(ガス厨房・電気厨房)
- フード部面風速:0.3m/s(ガス厨房・電気厨房)
- V:有効換気量(ガス厨房・電気厨房)
- K=理論排ガス量:0.93m3/kW・h(ガス厨房)
- Q=ガス消費量(kW)(ガス厨房・電気厨房)
- 厨房室の換気回数:40回/時間(ガス厨房)
2 ガスの場合、その「ドラフト(上昇気流)効果」により
スムーズな排気ができます。
厨房内には、風の流れ(横風)が発生します。その要因は、調理作業者の移動、鍋振りなどの調理動作、換気による外気流入、スポット空調の気流、冷熱機器の放熱など、さまざま。図5でおわかりいただけるように、電気式機器の場合は燃焼ガスによるドラフト(上昇気流)効果がないため、横風が発生する実厨房で換気量を減らすと、フード補修率が著しく低下するおそれがあります。電化厨房だからといって、安易に換気量を少なく設計するのはたいへん危険なことであり、十分な換気量の確保が必要なのです。
- 図5:ガスと電気における「横風」の影響の違い