セミナーレポート
2023.7.3
【開催報告】健康ブーム最前線【薬膳フレンチ】という新たな発想
毎朝、農家へ通う難波シェフの料理は、季節が織りなす野菜を用いた心も身体も満足する洗練されたフレンチ。薬膳と聞くと体には良いけれど地味であまり美味しくないイメージを持っておられる方も多いかもしれません。そんな印象をうち消すような二品の実演に感嘆の声が上がりました。
人間の身体は季節毎に体調が変わり(例えば春は頭痛、梅雨の時期はむくみなど)陥りやすい体調がある、そんな時に身体が欲する食材、美味しいと感じる食材には、その時の自分に不足している栄養素が多く含まれていることが多く、これらを意識して摂取することを続けることで、丈夫な身体を作っていこうとする薬膳の考えは、難しいものという印象と異なり、とても分かりやすいものということを深井先生から教わりました。
お店で薬膳を取り入れ始めた当初は薬膳の食材表をみたり、深井氏から提唱される季節の食材を使いながらメニューを考案していた難波シェフも、実践するうちに「とても理にかなったもの」と納得するようになり、さらに元々旬の野菜を多く取り入れていたので、知らないうちに薬膳を取り入れている部分も多かったとのこと。さらに、薬膳の季節のお薦め食材を使った一皿は毎年同じものにならないよう工夫をしており、今回の枝豆のデザートもその工夫のひとつです。
食べた時の感動や驚き、楽しい気持ちにさせてくれるのはレストランならでは。この上向きの気持ちや、香りにも「気」の流れを良くする効果があり、薬膳の大切な要素の一つ。外食だからと健康面をあきらめて食事するのでなく、身体に良く、美味しい食事が楽しめるお店がこれからも増えていって欲しい、と深井先生。また、今、自分はどんな食材が食べたいかで、自身の体調不調の気付きになるので、ぜひ身体の声に耳を傾けて欲しいと締めくくりました。薬膳を身近に感じられるセミナーでした。
このセミナーの動画視聴を受付中ですのでぜひご覧ください。サイト下部よりお申込ください(8/2より視聴開始)。
【開催協力:一般財団法人ザ・ブラフ・クリニック】
【実演内容】
◆三崎のマグロ・自根きゅうり・完熟尻黒トマトのコンポジション◆
1品目は、『三崎のマグロ・自根きゅうり・完熟尻黒トマトのコンポジション』。
その日に使う野菜を収穫するのが難波シェフのルーティン。セミナー当日の朝も、畑から収穫してきた新鮮な自根きゅうりと完熟尻黒トマト、その他ミニ野菜や食洋花を色とりどりに美しく盛り付けた逸品となりました。
コンポジションの一番下に敷く自根きゅうり(カボチャに接ぎ木していないきゅうり。カボチャに接ぎ木したものはカボチャっぽく皮の厚い、種が大きな水っぽいきゅうりになりやすい)を、まるで冬瓜のようなやさしい歯ざわりになるように茹で上げ、生姜汁を塗ります。きゅうりは身体を冷やす食べ物なので、生姜で身体を温めるという陰陽のバランスを意識してのもの。さらに三崎マグロを煮詰めたバルサミコ等で味付けしていきます。一番上に層をなすトマトのムースは、ひと晩かけて漉したトマト水にゼラチンとEXオリーブオイルを乳化させながら泡立てたふわふわの状態。この三層が絶妙なバランスでコンポジション(構成)されていて、食べていて楽しいお料理でした。「薬膳」というと漢方やスパイスばかりを思い浮かべますが、決してそれだけではないということも深井先生に教えていただきました。
◆枝豆とカモミールのジーヴル ハマブーンはちみつ◆
2品目は、デザートの『枝豆とカモミールのジーブル ハマブーンはちみつ』。レシピを見ると多くのパーツの組み合わせであることがわかるのですが、外見は白色主体でとてもシンプル。そしてナイフを入れると中から色々な風味のパーツが次々と登場し、驚きです。これこそフランス料理レストランのデザートにおける醍醐味。
セミナーでは時間の都合上、すべての工程を調理することが難しかったのですが、ポイントとなるメレンゲの立て方や他材料を加えるタイミング、それぞれの溶液の濃度の付け方などを丁寧に教えていただきました。細かい点は是非アーカイブをご覧ください。
特筆すべきは「薬膳」の代表格「ハーブティー」などでもよく知られるカモミール(花)の香りを上品に調節して三つのパーツ(エスプーマ・ソース・メレンゲカップ)に使いわけるところ。難波シェフの料理センスが光る部分です。何回も試作・改良を繰り返して完成したということなので、盛り付けの美しさも相まってセミナーにご参加いただいたお客様にも大好評でした。
【ご参加者の声】
・フランス料理の中に薬膳の考え、食材がどのように組み合わさり料理として完成し、美味しく提供できるのか等、大変学びが多くレストラン営業に参考になりました。(フレンチレストランオーナーシェフ)
・薬膳と聞いて、地味で美味しさ二の次+健康第一と想像していましたが、繊細で美しいお料理をとても美味しくいただきました。(中略)また、深井先生のお話も「身体が欲するものが必要なもの」という切り口が薬膳にたいするイメージをもっと易しいものに変えてくださり興味がわきました。(調理師協会スタッフ)
・薬膳の理念をお話しだけでなく、お料理に驚き?などを加える事で記憶に残して伝えていくという話に心を打たれました。(出張料理人)
・香りと口溶けと味がふわっとして、お店のコース料理を食べてみたいと思いました。(スペイン料理人)
・とても丁寧な説明でわかりやすかった。薬膳料理に興味が湧いた。(フレンチレストランオーナーシェフ)
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▲ペタルドゥサクラで不定期に開催される「薬膳フレンチ講座」も人気
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▲蜂蜜のチュイル 見た目からも蜂蜜と分かるように。シリコンシートに薄く伸ばしてデザートの飾りに使用
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▲当セミナーの動画を製作しました。お申込は8/20まで。
1974年岡山県津山市生まれ
18歳から広島、東京のレストランで修行
2001年渡仏。一時帰国し「ラ・ロシェル南青山」の石井シェフに師事し、再び渡仏。
ブルターニュ地方の2つ星「L' hôtel de Carantec restaurant Patrick Jeffroy」
パリの1つ星「e.t.c.」、3つ星「Le Pavillon LEDOYEN」で部門シェフ等を務める
2009年帰国
三國清三シェフに出会い、「ミクニヨコハマ」の支配人兼料理長を4年間務める。
2014年12月オーナーシェフとして「ペタル ドゥ サクラ」を開業
講演・料理教室等で食育の活動も行う。
「濱の料理人」の副会長、「NPO法人 横浜ガストロノミ協議会」
「クラブアトラス」、「トック・ブランシュ国際倶楽部」のメンバー
▼「レストラン ペタル ドゥ サクラ」
https://petaledesakura.com/
12年間の事務職を経た後、WEBデザイナーに転職。6年後、体調を崩し家族の勧めでヨガを始める。短期間で体調が改善したのをきっかけに指導の道へ。2008年薬膳資格を取得し、食と運動の結びつきを体系化した「薬膳ヨガ」を確立。地元鎌倉で薬膳とヨガのクラスを開く。2012年薬膳フレンチ講座をスタートする。好きなものは本とワイン。
https://yakuzenyoga.com/