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セミナーレポート

2022.1.24

~ 仔鴨のルーアン風・フランス料理の伝統芸術を伝える ~

1月24日(月)「クラブ・アトラスシェフによるオンラインセミナー」開催報告

ご好評を博した2021年7月のクラブアトラス セミナー開催に続き、今年度2度目となる「クラブ アトラスのシェフによるオンライン料理セミナー」を開催しました。

今回、講師を務めていただくのは「シェ・シミズ」のオーナーシェフ 清水 郁夫 氏。フランス ノルマンディ地方発祥の伝統料理で、フランス料理の芸術とも言われる「仔鴨のルーアン風 Caneton à la Rouennaise(カヌトン・ア・ラ・ルアネーズ)」をご披露いただきました。多くの方にこの料理を知っていただきたいという清水シェフの思いが込められています。

窒息鴨をローストし、客前で、胸肉やモモ肉を切り取り、プレスカナールという特別なプレスマシーンを用い、ガラから絞り出したエキスをソースに加えて仕上げます。調理場のシェフとレストランフロアのサービス担当が連携して仕上げる点も見所の一つで、この技術を習得し、認定試験に合格すると「メートル・カナルディエ」に認定されるという国際認定資格もある程。
調理場側に清水シェフ、サービス側には数々の国内外のグランメゾンで支配人を歴任された下野 隆祥 氏が今回特別にゲストとして参加下さり、長年のご友人同志で気心の知れた、共にメートル・カナエルディエでもあるお二人の競演となりました。

レシピにはCaneton (仔鴨)とありましたが、当日はクラブアトラスの伊藤シェフの推薦で京都産の合鴨「七谷鴨(ななたにかも)」を使用。一羽4kgもある大物で、かるく4人前は取れる肉付きです。肌はきれいに整えられいて、ビカビカに輝いている状態。見るからに健康で新鮮だとわかります。

下野先生のサービス技術も素晴らしく、現代のフランスや日本のフランス料理レストランでもなかなか見ることができない貴重な体験となりました。下野先生によると、サービスが客前で調理の仕上げをする際には素手で食材を触らないことと、ナイフの柄だけを持って刃には触れないことが衛生的で美しいサービスのポイントなのだとか。

フランス料理で有名な鴨料理といえば「鴨のオレンジソース」などが挙げられますが、ノルマンディ地方のルーアンでは古くから「仔鴨のルーアン風」が伝わっています。街の中心をセーヌ河が流れ、右岸と左岸を結ぶ渡し舟があり、かつて農家の人々は鴨を乗せて河を渡り、朝市が開かれる対岸の市場に運んでおり、鴨は生きた状態で売買されていました。ところが鴨が荷物の下敷きになり息を詰まらせ死んでいまい、売る価値がなくなった鴨でしたが、あるシェフが、窒息して肉に血が回っている鴨を軽くローストし、ガラから血を絞りソースに加えてとろみをつける新しい調理方法で評判になったのが起源と言われています。

清水シェフからはプレスカナールの器材が無い場合は、漉し器と麺棒などで押しながら絞り出すと良いことや、付け合わせの料理は自由にその季節に応じたもので良いなどアドバイスもあり、ぜひ気軽に取り入れてみて欲しいとのことでした。

この日の試食はクラブアトラスのメンバーシェフ 飯塚 隆太 氏(レストランリューズ)にご担当いただき、味や感想を伝えていただきました。試食された飯塚シェフからの「ソース・ルアネースの仕上げにどうしてレモン汁を加えるのか」の質問には、ワインの酸味だけでなく、レモン汁の酸味を加えることで重くなりがちなソースを軽やかにするためとのことなどが伝えられました。

セミナーの最後には「クラブ アトラス」メンバーシェフより、お店の近況や、新しく加わったクラブアトラスのメンバーのご紹介。また、この日発売になったクラブアトラスのDVDなどの活動についてのお話しや、同じ業界で働く参加者の皆さまへのメッセージを発信していただきました。

※(写真)左から順に『ルヴェソンヴェール』武田明憲氏、『ルメルシマン・オカモト』岡本英樹シェフ、『レストランリューズ』飯塚隆太シェフ、『シェ・シミズ』清水郁夫シェフ、下野隆祥氏(メートル・カナルディエ/武蔵野調理師専門学校講師)、野口怜奈氏(メートル・カナルディエ)、『ルヴェソンヴェール』伊藤文彰シェフ、『ストラスヴァリウス』小山英勝シェフ

※「クラブ アトラス」フランス料理に携わる役職者・管理的立場を有する者が集まり、次世代へ料理技術指導、情報共有を行いフランス料理を継承していくことを目的とする会(会長:「ラフィナージュ」オーナーシェフ 高良 康之氏)
https://club-atlas.jp/

※「カナルディエ協会」についてはホームページ(英語・フランス語のみ)をご参照ください。https://www.ordredescanardiers.fr/en
  • ▲調理にあたる清水シェフ。鴨をオーブンでレアに焼き上げ、サービスに渡します。ソースはルーアン風フォンに鴨の心臓とレバーを加えて準備。隣のサービスの進み具合を見ながら調理を進めます。もも肉はシェフにより厨房で火入れを行い、マスタードとパン粉を付けてこんがり焼き、ヴィネガーの効いたさっぱりしたサラダと共に盛り付けられる。一皿目の胸肉のサービスの後に厨房から二皿目としてお客さまに出される。
    ▲調理にあたる清水シェフ。鴨をオーブンでレアに焼き上げ、サービスに渡します。ソースはルーアン風フォンに鴨の心臓とレバーを加えて準備。隣のサービスの進み具合を見ながら調理を進めます。もも肉はシェフにより厨房で火入れを行い、マスタードとパン粉を付けてこんがり焼き、ヴィネガーの効いたさっぱりしたサラダと共に盛り付けられる。一皿目の胸肉のサービスの後に厨房から二皿目としてお客さまに出される。
  • ▲サービスパーソンによって仕上げられる胸肉の薄切りとソースの仕上げと盛り付けたものが一皿目として完成。続いて厨房から始めに切り出したもも肉にマスタードとパン粉を付けて火入れし、サラダを添えた一皿が二皿目として出される。
    ▲サービスパーソンによって仕上げられる胸肉の薄切りとソースの仕上げと盛り付けたものが一皿目として完成。続いて厨房から始めに切り出したもも肉にマスタードとパン粉を付けて火入れし、サラダを添えた一皿が二皿目として出される。
  • ▲お客さまの前で鴨の胸肉を薄くスライスし、ソースを仕上げて盛り付ける。ソースの味は仕上げる前にシェフが準備したフォンの味見をしておき、ポルトやコニャック、バター、レモン汁、コショウなどを加えて火にかけながら使い仕上げます。その間、別プレートに切り分けた肉が冷めないように火加減を調整しながら保温するなど、技術が求められる。
    ▲お客さまの前で鴨の胸肉を薄くスライスし、ソースを仕上げて盛り付ける。ソースの味は仕上げる前にシェフが準備したフォンの味見をしておき、ポルトやコニャック、バター、レモン汁、コショウなどを加えて火にかけながら使い仕上げます。その間、別プレートに切り分けた肉が冷めないように火加減を調整しながら保温するなど、技術が求められる。
「シェ・シミズ」オーナーシェフ  クラブアトラス 理事 清水 郁夫氏
1957年、京都府生まれ。

1980年代に渡仏し、名店「ル・グラン・ヴェフェール」で研鑽。
帰国後、国内のフランス料理の名店にて料理長として腕を振るう。

1990年よりフランス料理文化センターの講師を務める。

2000年ブルーノート東京の総料理長に着任。その後、数々のフレンチレストランのメニューを監修。

2018年6月6日、奥沢に自分の名前をつけたお店をオープン。